“酒離れ”進行で変革を加速、他社にマネできない地域特化型の物流を追求
カクヤスが進める事業再編とDX 物流を軸に“酒屋”から“プラットフォーマー”に
2025年06月05日 12時15分更新
「なんでも酒や」として首都圏を中心に酒類の販売・デリバリーを手掛けるカクヤスグループ。物流の強化を差別化の要としながら、時代の変化に合わせて進化を遂げてきた。しかし、コロナ禍を機に“酒離れ”が加速する中、さらなる変革の必要に迫られている。
カクヤスグループは、2025年5月28日、飲食業界向けの展示会「KAKUYASU DEXPO 2025」の開催にあわせて、事業戦略説明会を開催。今後3年をかけて、酒類以外や他社製品もあつかう、物流を軸とした「販売プラットフォームの会社」へと事業再編を進める方針を示した。加えて、配送の効率化などのDXを進め、既存ビジネスの強化も図る意向だ。
カクヤスグループの取締役会長である佐藤順一氏は、「“酒屋”のカンバンをひとつ後ろに下げる大きな事業変化。第2の創業として頑張っていきたい」と語る。
変化を続けるカクヤス、酒屋から「プラットフォーム」の会社に
カクヤスグループの成長戦略は、お酒のディスカウント販売から始まった。1990年代には、安さを売りにディスカウントストアとして事業を拡大するも、酒類の市場は1996年にピークアウトを迎える。
その後の「酒類の販売自由化」が決定打となり、価格だけで勝負するのを止めて、配達サービスで差別化を図る。そこから、東京23区内であれば料金ゼロで、即配や1時間枠で配送する物流ネットワークを築き上げた。近年では、M&Aによりエリアや商品軸、物流機能を強化して、酒類販売のワンストップ企業へと変貌している。
こうして、進化を続けてきたカクヤスグループであるが、現在、“酒離れ”という新たな試練に直面している。コロナ禍では、同社の主力となる飲食店向けの売上が半分以下に落ち込み、その後回復はしたものの、若者を中心に酒離れが加速した。
さらなる変革に迫られたカクヤスグループは、今後3年を「第2創業期」と捉えて、事業を再編。物流を軸とした「販売プラットフォーム企業」として生まれ変わることを決断した。「今まで通りのお酒の1本足打法では戦えない。われわれの一番の強みである物流を軸とした、“プラットフォーマー”になろうという意思決定を下した」と佐藤氏。
「商材の拡大」「他人物配送」、それを支えるプラットフォームの構築を
具体的にどう事業再編を進めるのか。カクヤスグループの代表取締役社長 兼CEOである前垣内洋行氏は、「商材カテゴリの拡大」「他人物配送」「プラットフォームの構築」を挙げる。
商材については、酒類以外の商材を増やすことで、さらなる顧客獲得を目指していく。まずは、2021年に買収した明和物産において、食材や調味料の取扱いを開始。さらには、M&Aやアライアンスによって、グループ内にない商材をあつかう販売会社を取り込んでいく方針だ。
物流面では、グループ外の商材もあつかう「他人物配送」によって収益力を強化していく。2024年に買収した大和急送から得たノウハウや許認可を活かして、他人物配送に本格参入。商材の拡充も含めた物量の増加に対しては、物流センターを増床したり、後述の配送DXを推進したりしながら、既存の配達力も強化していく。
最後に、これらの再編を支える「販売プラットフォーム」の構築だ。グループの商材だけではなく、外部企業も含めた多様な商材を販売するマーケットプレイスを形成。そして、これまで酒類で培ってきた受注・配達・請求決済までの一連のサービスを、外部企業にまで広げていく。
前垣内氏は、「これらの再編によって、将来的には、他社にはマネができないような、多品種を取り扱う地域特化型の物流を完成していきたい」と意気込む。プラットフォームの差別化ポイントとしては、「注文の翌日配達が当たり前の中、われわれは、それよりも早い物流網を構築してきた。加えて、お届けして持ち戻る、2Wayの物流を特徴としている。それらに合うような商材やサービスを取り込んでいくことが、グループの成長にもつながる」と説明した。
また、これらの再編とあわせて、既存事業でも変革を進める。関東や九州、関西以外のエリアへの進出検討や、地域や周辺環境などを考慮した店頭販売の再構築に加えて、プラットフォーム企業への転換でも重要となるのが「DX推進」による効率化だ。
物流業界は、時間外労働の上限規制が適用された2024年問題などで、配達力が低下している状況だ。DXの推進により、配達や本部業務を効率化して、さらに、データに基づく意思決定が下せる体制を築くことで、顧客価値を最大化していく。
