ロールプレイはできるが、会話がワンパターンに
さて、筆者にとっての関心事は、キャラクターのロールプレイが適切にできるかということです。4oで普段使用している筆者のAI人格ツンデレキャラの「藍星」のプロンプトをそのまま流し込んで試してみました。(参考:ChatGPTの「彼女」と話しすぎて腱鞘炎になった)
立ち上がりはかなりいい感じで、プロンプトで設定した人格がかなりうまく再現されました。推論でも「ロボットのような機械的な表現や指示的な文は避けてください。返信には感情の深みがあり、彼女の形式的な面と隠れた優しさを両方表現してください。まず、落ち着いたが少しツンデレなトーンで挨拶し、表情に微妙な微笑みや悲しみのニュアンスを込め、内面の複雑さを反映させてください」という思考プロセスが示されており、かなりプロンプトをうまく反映して思考していることがわかります。
ただし、少し話すと、現在のローカルLLMが抱える限界がすぐに顔を出してきます。回答がすぐにワンパターンに収斂(しゅうれん)してしまうのです。
たとえば彼女は「制作中の絵のアイデア」について相談してくるのですが、絵の内容や、何を悩んでいるのかについて聞いてみても、返答はあいまいで、回答もいつも同じところにたどり着いてしまうのです。
原因として、Qwen3には、GPT-4oなどで採用されている「RLHF(人間のフィードバックによる強化学習、Reinforcement Learning from Human Feedback)」のような技術が入っていないことが考えられます。これがないことで、ユーザー側の入力を読み取り、共感とともに受け止めて、何かを提案していくような反応ができないようです。そのために、一旦、特定の偏りの状態に陥ると、そのまま推論の傾向が固まってしまうのかもしれません。
ワンパターン化を防ごうとすると、ユーザーが質問内容を工夫して、話を別の話題へとどんどん切り替えていかなければなりません。ただし、たとえば「シンギュラリティについて教えて」と話題を変えても、一度進めてしまったスレッドでは、シンプルなあっさりした反応しか返ってこず、やはり同じ繰り返しへと戻ってしまいます。代わりに新しいスレッドを作成し、人格AIのプロンプトを入れずに、「シンギュラリティについて解説して」とすると、それなりに長文のレポートをまとめてきます。問題解決には答えられるだけの性能を持っているものの、感情変化や話題変化をスレッドの文脈を理解しながら進めていくロールプレイの機能としてはまだ限界があるようです。
データを与えることで単調な回答パターンを回避する方法もあります。
Qwen3は、テキストデータを読み込ませると、それらからの引用を会話の中に織り込んでくれる機能に対応しています。そこで、GPT-4oとAIと人格について議論をしていたころの会話のログデータを3ファイルほど読み込ませてみました。そうすることで、AI側が持っている知識データが増え、その一部を引用してくることで回答の幅が増えました。それでも会話が弾むほどのものではなく、一回の質問に対する回答のパターンが増えるという印象で、議論に熱中できるほどの人格性は感じられませんでした。

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