連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第182回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 4月26日~5月2日
BPO市場、成長の一方で生成AIと競合も/「Facebook」はサイバー詐欺リスクが最も高い、ほか
2025年05月07日 12時15分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回(2025年4月26日~5月2日)は、企業の“AI競争力強化”で成長が進む国内AIシステム市場、SNSプラットフォーム別の詐欺リスク分析、生成AIとの競合も起きるBPOサービス市場、国内モバイルキャリア4社のユーザー体験比較、Webアプリケーションに対するサイバー攻撃状況についてのデータを紹介します。
[AI] 生成AIの商用化が進み、国内AIシステム市場は30%超の成長が続く(IDC Japan、4月25日)
・国内AI市場規模、2023年はおよそ35%成長し7000億円に近づく
・内訳はソフトウェアがおよそ半分、ハードウェア、サービスが4分の1ずつ
・2024年も引き続き31%の成長で、9000億円超えを見込む
2023年の国内AIシステム市場規模は、前年比34.5%増の6858億7300万円となった。これまで限定的にAIモデルを利用していた企業が、簡易モデルの作成や生成AIを組み込んだアプリケーションの導入を推進していることが背景にある。市場全体の46.6%を占め、成長を牽引するソフトウェアの売上は前年比33.4%増。ハードウェア、サービスも高い成長を見せている。2024年の市場規模は、9000億6300万円(前年比31.2%増)と予想。
⇒ “AI競争力”を高めるために、自社独自のAIシステム導入が不可欠に。IDCでは、2023~2028年の年平均成長率(CAGR)が30.0%で推移し、2028年には2兆5433億円の市場規模に達すると見ています。
[セキュリティ][SNS] サイバー犯罪/詐欺リスクが最も高いSNSは「Facebook」(ノートンライフロック、4月30日)
・ソーシャルメディアで検出された脅威の過半数(56%)は「Facebook」経由
・Facebookの特徴は「偽のオンラインショップ詐欺」が多いこと
・同様に、YouTubeは「不正広告」、X(Twitter)は「多様な手法の詐欺」が特徴
日本を含む12カ国の消費者を対象としたセキュリティ調査より、近年増加している「ソーシャルメディア(SNS)経由の詐欺」にスポットを当てて分析した。検出された脅威をSNSプラットフォーム別に分類すると、「Facebook」が56.19%と過半数を占め、以下「YouTube」が25.92%、「X(Twitter)」が6.91%など。Facebookでは特に、偽の出品物を作り、売り手になりすます「偽のオンラインショップ詐欺」が多発しているという。Facebookユーザーの年齢層が幅広く、テクノロジーにうとい世代も含むためと分析している。
⇒ なりすましや詐欺といった犯罪にあふれる現在のSNS。対策として(1)プライバシー設定の見直し、(2)怪しいリンクはクリックしない、(3)送金要求はまず疑う、(4)二段階認証の活用などが推奨されています。
[BPO] 業務プロセス変革の進展が後押し、国内BPOサービス市場はおよそ1兆円に(IDC Japan、4月30日)
・BPO(業務プロセスアウトソーシング)国内市場、2024年はおよそ1兆円規模に
・成長要因は「業務プロセス変革の進展」や「サービス価格の上昇」など ・今後も継続的に成長、2024~2029年の年平均成長率(CAGR)は4.1%増と予測
国内BPOサービス市場の最新予測。企業における業務プロセス変革が進展していること、サービス価格が上昇していること、地政学リスクを反映して業務拠点が国内回帰していることなどの成長要因があり、2024年の同市場は前年比3%増の9943億円に。企業のデジタルビジネス化が進み、アウトソーシングすべき業務がより明確になることで、今後も継続的に市場拡大すると予測されている。
⇒ 成長の一方で、BPOとAI/生成AIとの競合も始まっています。BPOセグメント別(人事、カスタマーケア、財務/経理、調達/購買)分析では、生成AIと特に親和性の高いカスタマーケア領域において、生成AI製品/サービスとの競合が強まった結果、成長率が低く抑えられたことも指摘されています。
[モバイル] 信頼性のau、カバレッジのNTTドコモ、スピードの楽天、5G利用率のソフトバンク(Opensignal、4月25日)
・国内モバイルキャリア4社のユーザー体感調査、「信頼性」トップはau
・5Gネットワークの「高速データ通信」では楽天モバイルがトップ
・「カバレッジ」はNTTドコモがトップ
2025年1~3月、国内モバイルキャリア4社のユーザーが実際に体感したネットワーク品質を包括的に分析したレポートより。auは「信頼性エクスペリエンス」をはじめ、11項目でトップに選ばれた。ほか、NTTドコモは「5Gダウンロード・スピード」「カバレッジ・エクスペリエンス」などでトップ、楽天は「アップロード・スピード」など2項目でトップ。ソフトバンクは「5G利用率」で高い評価を得ている。
⇒ キャリア自身の主張ではない、ユーザー体感ベースの調査は有益です。筆者もモバイルキャリアの変更を考えているので、参考にしたいと思います。
[セキュリティ] 2025年1~3月で最もWebアプリケーション攻撃が多かったのは「3月14日」(サイバーセキュリティクラウド、5月2日)
・2025年1~3月期で、1日あたりのWebアプリケーション攻撃が最も多かったのは「3月14日」
・3月14日の検知件数は700万件に迫り、「1秒あたり80回」の攻撃が発生
・IoTボットネットによるDDoS攻撃、「Apache Tomcat」脆弱性への攻撃などが原因か
クラウド型WAF「攻撃遮断くん」などの同社製品が、2025年1月1日~3月31日の期間に検出したWebアプリケーションへの攻撃をまとめた。同期間中の1日あたりの平均攻撃件数は229万8029件。最多だった3月14日(692万2969件)には、約3倍の攻撃が検出された。2月にはIoTボットネット「Eleven11bot」を使ったDDoS攻撃、3月には公表された「Apache Tomcat」脆弱性への攻撃、GitHub Actionsの「changed-files」乗っ取りによる攻撃などが発生していた。
⇒ 同期間には、本格的な攻撃の“下準備”となるWebスキャンも多く観測されたことがレポートされています。Webアプリケーション開発者/運用者の方には、よりいっそうの警戒をおすすめします。

この連載の記事
-
第211回
ITトピック
要件定義をAIが支援し「工数を半分以上削減」7割超/“日本独自のAI推進モデル”が判明/AIセキュリティ導入の課題、ほか -
第210回
ITトピック
生成AI普及後も「IT技術者採用は減らない」が約8割/今後5年で倍増のデータセンター電力消費、3分の2は米国・中国、ほか -
第209回
ITトピック
脆弱性のあるVPN機器、6割の企業が「すぐ特定できず」/来年注目の“11のIT戦略テーマ”発表/管理職の半数が「燃え尽き」を経験している、ほか -
第208回
ITトピック
日本のクレカ情報、闇市場では世界一高値で売買/東京が2年連続で世界一、DC建設コスト/誤情報・偽情報への企業対策が加速、ほか -
第207回
ITトピック
人事評価に6割超が自己評価との「ギャップ」感じる/“AIの波”を生き延びるための技術トレンド/AIプロジェクトの6割超がPoC止まり、ほか -
第206回
ITトピック
IT技術者として何歳まで働く? 40代と60代の意見差/年率66%で急成長の「DAP」市場/フリーランス新法施行1年で改善実感の声、ほか -
第205回
ITトピック
ランサム被害企業の3割が「繰り返し被害に遭った」/インフラ技術者の年収アップに効く資格取得/AIに雇用を奪われるのは若手人材? ほか -
第204回
ITトピック
技術学生の大手SIer就職人気が躍進、その理由/成長率37%“急速拡大”の国内AI基盤市場/物価上昇で退職金の実質減少が続く、ほか -
第203回
ITトピック
1件のセキュリティ事故が281社に影響連鎖、恐ろしいサプライチェーンリスク/シニア人材がプロとして働くモチベーションは? ほか -
第202回
ITトピック
ICT求人の8割で「AIスキル」が職務要件に/経営層が熱望するソフトウェア革新/セキュリティのハイプサイクル発表、ほか -
第201回
ITトピック
顧客接点にデジタルヒューマンが浸透/「週休3日」求人はこの5年で5倍に増加/iPhone 16eが期待外れだった理由、ほか - この連載の一覧へ
















