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地方自治体を潤すデータセンター ブームに一抹の不安

2025年04月04日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

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新潟県湯沢町の休眠地を活用した湯沢GXデータセンター(ゲットワークス)

 過疎化が加速する地方自治体の生き残り施策として「データセンターの誘致」が認知されつつある(関連記事:伸びしろしかない成長株 新興外資系と地方の注目データセンター4選)。

 データセンターは、基本的には大きな雇用を生まないビジネスなので、一見すると地方創生の文脈にはフィットしない。14年前の石狩データセンターの開設発表会のとき、雇用効果を聞かれたさくらインターネットの田中邦裕社長は「道内から6人雇用した」と答えたが、おそらく質問した記者は肩透かしを食らったはず。事業者がオペレーションの最適化を進めたことで、今はますます人員が必要なくなっているはずだ。

 一方、自治体へのインパクトとして大きいのは、地方税の約4割を占める固定資産税だ。データセンターは建物のみならず、サーバーやラック、電力設備、冷却設備などが資産として計上される。しかも、減価償却を経ても、サーバーなどは定期的に更新されるため、固定資産税は安定収入となる。実際に「データセンター銀座」と呼ばれる千葉県印西市は、固定資産税で財政が潤っているため、国から地方交付税が交付されない自治体として認定されている。130億円をかけて2000基のGPUを整備した石狩データセンターも、石狩市の財政を大きく潤していることだろう。

 固定資産税が見込まれるデータセンターの誘致は、移住や観光の施策もうまくいかない地方自治体にとって救世主に見えるはずだ。AIブームの熱狂を受けたデータセンターブームで、投資熱も加熱している。冒頭の湯沢GXデータセンターのような柔軟性の高いコンテナ型データセンターも、今後は増えていくと見込まれている。

 ただ、過去には自治体がコミットしたものの、ニーズが見込めず、事実上破綻した地方データセンターもあった。いくらブームとは言え、データセンタービジネスは単に用地があればよいわけではなく、ネットワークと電力などのインフラ、災害に強い地盤、そしてIT市場に対する営業力がないと成り立たない。誘致を目指す自治体には、こうしたデータセンターというビジネスの特殊性を理解した専門家が必要だと思う。

文:大谷イビサ

ASCII.jpのクラウド・IT担当で、TECH.ASCII.jpの編集長。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、楽しく、ユーザー目線に立った情報発信を心がけている。2017年からは「ASCII TeamLeaders」を立ち上げ、SaaSの活用と働き方の理想像を追い続けている。

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