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最新パーツ性能チェック 第463回

Ryzen 9 9950X3Dは順当進化。3D V-Cache搭載Ryzenの最強モデルだがクセありな部分はそのまま

2025年03月11日 22時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

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Ryzen 7 9800X3Dと比較する

 今回の検証ではRyzen 9 9950X3Dの比較対象に同世代のRyzen 9 9950X、Ryzen 7 9800X3D、Core Ultra 9 285Kの3CPUを準備した。Ryzen 9 9950XとCore Ultra 9 285Kはコア数においてRyzen 9 9950X3Dと同格であり、Ryzen 7 9800X3Dは3D V-Cacheが載っているもののコア数は半分(だが確実に3D V-Cacheが効く)という制約がある。

 Ryzen 9 9950X3DはRyzen 7 9800X3Dにどのような処理で差を付けることができるのか? Core Ultra 9 285Kに対してはゲーム性能において負ける要素はないが、どの程度Ryzen 9 9950X3Dが上回るのか? などを検証していきたい。

 GPUドライバーはRX 9070 XTに対応したAdrenalin 25.3.1を使用している。Resiazble BARやSecure Boot、メモリー整合性やHDRなどはひと通り有効化、ディスプレーのリフレッシュレートは144Hzに設定した。Core Ultra 9 285KのPower Limitは“Intel Default”設定としている。

検証環境(AMD)
CPU AMD「Ryzen 9 9950X3D」 (16コア/32スレッド、最大5.7GHz)
AMD「Ryzen 9 9950X」 (16コア/32スレッド、最大5.7GHz)
AMD「Ryzen 7 9800X3D」 (8コア/16スレッド、最大5.2GHz)
CPUクーラー EKWB「EK-Nucleus AIO CR360 Lux D-RGB」(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザーボード ASRock「X870E Taichi」(AMD X870E、BIOS 3.20)
メモリー Micron「CP2K16G64C38U5B」 (16GB×2、DDR5-5600で運用)
ビデオカード ASRock「AMD Radeon RX 9070 XT Taichi 16GB OC」(Radeon RX 9070 XT、16GB GDDR6)
ストレージ Micron「CT2000T700SSD3」(2TB M.2 SSD、PCIe Gen 5)
Silicon Power「SP04KGBP44US7505」(4TB M.2 SSD、PCIe Gen 4)
電源ユニット ASRock「TC-1300T」(1300W、80 PLUS TITANIUM)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(24H2)
検証環境(インテル)
CPU インテル「Core Ultra 9 285K」 (24コア/32スレッド、最大5.7GHz)
CPUクーラー EKWB「EK-Nucleus AIO CR360 Lux D-RGB」(簡易水冷、360mmラジエーター)
マザーボード ASRock「Z890 Taichi」(Intel Z890、BIOS 2.20.AS05)
メモリー Micron「CP2K16G64C38U5B」 (16GB×2、DDR5-6400)
ビデオカード ASRock「AMD Radeon RX 9070 XT Taichi 16GB OC」(Radeon RX 9070 XT、16GB GDDR6)
ストレージ Micron「CT2000T700SSD3」(2TB M.2 SSD、PCIe Gen 5)
Silicon Power「SP04KGBP44US7505」(4TB M.2 SSD、PCIe Gen 4)
電源ユニット ASRock「TC-1300T」(1300W、80 PLUS TITANIUM)
OS Microsoft「Windows 11 Pro」(24H2)

9950Xより若干馬力がある?

 まずはゲーム以外の検証からはじめよう。最初に試すのは毎度おなじみの「CINEBENCH 2024」である。

CINEBENCH 2024:スコアー

 Ryzen 9 9950X3DのマルチスレッドスコアーはRyzen 9 9950Xよりも4%程度高くなったが、シングルスレッドスコアーは同じだった。Ryzen 9 9950X3DのブーストクロックやTDPがRyzen 9 9950Xより高いわけではないためこの差はどこから来るのか判然としない(CPUクーラーの付け方も疑ったが、空振りであった)が、個体差にしてはやや大きい気がする。

 Core Ultra 9 285K(グラフ中ではU9 285K表記)はここで存在感を出しているが、この後のテストで存在感をどこまで維持し続けられるかに注目したい。

 続いて消費電力の検証に入るが、その前提となるテストの結果をみておこう。ここでは「Handbrake」を利用し、再生時間約3分のMP4動画(H.264/ 60fps)をプリセットである「Super HQ 1080p30 Surround」ならびに「Super HQ 2160p60 4K HEVC Surround」でCPUエンコードする際の時間を計測した。

Handbrake:エンコード時間

 処理時間はコア数が多いほど短くなる、というごく当たり前の結果になった。Ryzen 9 9950X3Dはここでも9950Xよりわずかに高速であり、CINEBENCH 2024で観測された性能差を裏付けている。そしてCINEBENCH 2024でトップを飾ったCore Ultra 9 285Kは、ここでは4CPU中3位という結果に終わっている。

 10分程度で終わるCINEBENCH 2024と違いこのテスト(特にH.265)は処理時間が長くかつ負荷も非常に高いためただでさえ発熱量の多いインテル製CPUにとっては非常に不利なテストなのだ。

 このHandbrakeにおけるエンコード(Super HQ 1080p30 Surround)処理中に実際にどの程度の電力が消費されているか、HWBusters「Pownetics v2」を用いて計測した。Pownetics v2は電源ユニットの出力側に挿入し、マザーやビデオカードに接続される各種ケーブルおよびPCI Express x16スロットに流れる電力を直接計測する。

 グラフには高負荷時のデータとして平均/ 99パーセンタイル点/ 最大値の3種類を記載した。また、アイドル時の消費電力は文字通りアイドル状態で3分間放置した時の平均値だけを掲載している。

システム全体の消費電力:ATXメインパワー+EPS12V×2+PCI Express x16スロット+ビデオカードの補助電源ケーブルそれぞれに流れた電力の実測値から算出したもの

ビデオカード単体の消費電力:前掲の消費電力データからEPS12V×2の消費電力に注目したもの

 Ryzen 9 9950X3Dと9950Xに注目するとシステム全体では平均値で13W差が出ているがCPUだけで見るとまったく差が出ていない。Ryzen 9 9950X3Dの方がほんの少し処理時間が短かったが、その分消費電力が上がっているだけで、両CPUは本質的にはほとんど同じといっていい。

 Core Ultra 9 285Kはエンコード時間においてRyzen 9 9950X3Dより遅いにもかかわらずCPU単体の消費電力だけで見ても70W以上多く消費している。ワットパフォーマンスという点においてインテル製CPUはRyzen 9 9950X3Dと同じ土俵に立てていないことが再確認できた。

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