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新清士の「メタバース・プレゼンス」 第95回

月3万円で使えるOpenAIの「Deep Research」 驚異的だが、情報格差が広がる不安も感じた

2025年02月17日 07時00分更新

文● 新清士

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「8番出口」「パルワールド」ヒットの理由も探ってもらった

 それでは最近、大きく成功した他社タイトルはどうだったのかといったことも分析にかけてみました。2023年11月に発売され大ヒットしたKOTAKE CREATEの「8番出口」は、実況の配信との相性の良さから初動の話題作りを生み、その配信がさらに話題を呼ぶ、さらには、SNS上でネットミーム化していくというプロセスがたどったことが紹介されます。さらに、470円の低価格かつゲームそのもののユーザーフレンドリー性も敷居が低かったことが、その後のユーザーの爆発的な拡大につながったなどと、成功の経緯が書かれていました。そして、バズを生んだ要素として、「身近で不思議なテーマ設定、実況映えするゲーム性、ユーザー主導の二次創作、低価格と手軽さによるすそ野拡大」をあげていました。つまり、SNSのバズによって大きく成功したゲームであることは間違いないと言えるのです。

Steamの「8番出口」

「8番出口」の成功要因についてDeep Reserchに検討させた結果

 もう一つ、全世界で大ヒットしたポケットペアの「パルワールド」についてもDeep Reserchに聞いてみました。パルワールドについては、以前から不思議だったのがユーザーのうち、日本ユーザーは2.5%しかいないにもかかわらず、中国ユーザーは36%もいるという2024年1月にGameDeveloperCoが公表した情報でした。日本のユーザーは2.5%程度にとどまっておりです。なぜ中国で人気を獲得したのかという情報は、日本語ではほとんどないとも言ってもよい状態でした。中国市場でのヒットはインディゲームの世界的なヒットには、重要な要素と考えられてもおり、その理由を重点的に調べてもらうように指示しました。

 そして、Deep Reserchがまとめてきたレポートでは、次のように説明しています。中国ではポケモンの展開は遅れており、浸透していないにも関わらず、クラフトゲームとモンスター収集要素の組み合わせが中国ユーザーの心をつかんだとしています。また、登場するモンスターのパルを酷使する内容が、中国ではブラックユーモア的に社会的な共感を呼んだこと、そして、Steamで最初の人気を得た後に、ゲーム実況者が配信を始めたことで人気が広がり、さらに公式の窓口を作ったことで広がっていったことが紹介されています。情報ソースは日本語のものもありますが、中国語、英語のものも使用しており、筆者が過去に見たことのない情報も多数含まれていました。

「パルワールド」についてDeep Reserchに聞いた結果の一部の抜粋

 これらの質問を繰り返すことによって、ゲーム内容とSNSとをうまくリンクさせてプロモーション展開をするのが重要ということが見えてきます。では、それを筆者の小さなインディゲーム会社で展開できるのかを、さらに突き詰めて質問をしていきました。

 特に、SNSでのプロモーションを展開する上で何が重要なのかをDeep Researchに考えさせました。いくつもヒントがあったのですが、「投稿頻度とエンゲージメント向上策」という項目では「投稿頻度の目安、時間帯と曜日、一貫性とクオリティ、ユーザーとの対話、参加型施策」というような細目を提案し、それぞれについてどういうことを意識して展開するべきかをかなり具体的に説明してくれていました。また、SNSごとの特徴といったものもチャートにしてまとめてくれました。

Deep Researchがまとめたゲーム用プロモーションの観点から見たSNS分析の一部

 筆者は自分が様々に持っていた知識や情報を、Deep Researchを通じて得た情報から、作戦としてまとめ、SNSへのプロモーション展開を始めました。もちろん、Deep Researchがまとめたアクションプランの結果はそのまま使えるものではないことが多く、実際に作業をする人間が応用するよう、現実的にカスタマイズさせる必要があります。しかし、適切な情報を持たずに自分たちの仮説もなく、作戦を立てて実行したときよりもかなり詳しい情報を得たうえで展開を始められたと感じています。これほど精度の高い情報を、短時間で収集する方法は過去に存在しませんでした。

 もちろん、実際に展開を開始してまだ2週間に過ぎず、最終的な販売結果の成功につながるのかは現時点ではわかりません。しかし、業務に使えるかどうかというと、「使える」という現時点での結論になります。

△筆者の会社 AI Frog Interactiveが運用している公式Xのアカウント

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