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富士通と横浜国立大学の共同研究、高解像度モデルを大規模並列処理に最適化

“適中率わずか数%”の竜巻予測にブレイクスルー 台風に伴う竜巻を「富岳」で再現

2025年02月13日 10時15分更新

文● 福澤陽介/TECH.ASCII.jp

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 日本を襲う自然災害の中でも、頻繁かつ突発的に発生するのが“竜巻”である。例えば、1999年9月に愛知県豊橋市で国内最大規模の竜巻が発生、400名を超える負傷者が出ている。

 この被害現場に立ち会った、横浜国立大学の台風科学技術研究センター 副センター長である坪木和久氏は、「当時、シミュレーションモデルを開発しており、そのモデルでいつかは竜巻予測をしたいと思った。四半世紀を経てそれが実現した」と語る。

横浜国立大学 総合学術高等研究院 教授 台風科学技術研究センター 副センター長 坪木和久氏

 富士通と横浜国立大学は、2025年2月12日、スーパーコンピュータ「富岳」を用いて、台風に伴う竜巻を予測する気象シミュレーションに、世界で初めて成功したことを発表した。富士通の大規模並列処理技術と横浜国立大学の気象シミュレーター「Cloud Resolving Storm Simulator(CReSS)」を組み合わせることで実現している。これは、これまで数%程度であった竜巻注意情報の適中率を大きく変える可能性を秘めた成果となっている。

竜巻予測の難しさとブレイクスルーに必要だったもの

 竜巻とは「積乱雲の下で発生する非常に強い渦を持った突風現象」である。特殊なスーパーセルという積乱雲に伴うものと、それ以外の積乱雲から発生するものに分かれ、前者のスーパーセルが激しい竜巻をもたらす。竜巻(トルネード)というと米国というイメージがあるが、単位面積あたりに換算すると日本の竜巻の数は米国とほぼ同じであり、大気擾乱(大気が乱れることで生じる現象)の中でも破壊力が高いのが特徴だ。

スーパーセル積乱雲に伴う竜巻

 一方で、竜巻は観測できないほど小規模な現象であり、どこでも、どの季節でも、どの時間でも、忽然と発生しうるものである。そのため、シミュレーションが困難で、これまでも数値モデルによる予測が行われてこなかった。

 気象レーダーなどを用いた「竜巻注意情報」も2008年から運用されているが、その精度は低く、2024年までの適中率は「1%から6%」にとどまるという。また、予測の有効期間も1時間程度と短い。「適中率が改善されないままで良いはずがない。この問題を解決するブレイクスルーとして、台風に伴う竜巻について数値モデルを用いた予測を実現した」(坪木氏)。

竜巻注意情報の精度の推移

 今回の研究では、これまで困難であった、台風に伴い発生する竜巻の予想を可能にする気象シミュレーションに成功している。日本で発生する竜巻のうち、台風に伴って発生するのは約2割であるものの、特に危険なスーパーセル型の竜巻に備えられる。

 これを実現したのが、雲スケール(水平方向で50m~2000mの範囲)からメソスケール(水平方向で2km~2000kmの範囲)の高精度なシミュレーションが可能な、気象シミュレーター「CReSS」だ。このシミュレーターで、スーパーセルの形成や発達を正確に再現できるが、複雑な物理方式をあつかうため、膨大な計算時間が課題となっていた。

 それを、富士通のスーパーコンピューター「富岳」を用いることで解決、リードタイムを持って竜巻をリアルタイム予測することに成功している。

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