セキュアにIoTデバイスを利用するための「JC-STARマーク」も適合予定
IoT実績多数のセンチュリー・システムズ ゲートウェイでは「SORACOMブート」可能
企業向けVPNルーターで有名なセンチュリー・システムズだが、IoT対応の機器も豊富にラインナップしている。開発やカスタマイズが可能なのも自社製品ならではの強み。高機能IoT/M2Mエッジゲートウェイ「FutureNet MAシリーズ」ではソラコムにも対応し、キッティング作業を自動化する「SORACOMブート」という機能も利用できる。
ネットワーク機器の自社開発やカスタマイズまで手がける
東京都武蔵野市に本社を置くセンチュリー・システムズは、エンタープライズや組み込み、IoT/M2Mシステムのネットワーク分野を中心に、ソフトウェアとハードウェアの開発を行なう。今では国内でネットワーク機器を自社開発しているメーカーも珍しいが、カスタマイズやOEM提供まで行なえるというのは強みと言える。
同社のネットワーク機器ブランド「FutureNetシリーズ」の主力製品は、VPN機能を搭載した高性能ルーター「FutureNet NXRシリーズ」だ。センター向け、拠点向けの大きく2つの用途に向けて、10GbEモデル、5GやLTE搭載モデル、仮想ルーターモデルなど豊富なラインナップを揃えている。最近は、クラウドとコンサルティングまで含めたネットワーク運用管理サービス「WarpLink」も提供している。
一方、IoTやM2Mシステムのハードウェアやソフトウェア開発も以前から展開している。IoTゲートウェイ「FutureNet MAシリーズ」はセンサーからデータを取得しつつ、加工・変換、クラウドへの送信までこなす。その他、シンプルなM2Mルーター「FutureNet ASシリーズ」、シリアル・IP変換、アナログ入力の拡張や、接続距離延長などを実現する各種プロトコル変換器まで揃えており、さまざまなIoTのニーズに応える。
自治体やインフラの監視システムで実績多数
公開されているIoT事例は、自治体やインフラのネットワークが多い。たとえば、セフテックの高速道路での逆走検知システムでは道路に設置されたスピードセンサーから逆走(マイナス速度)を検知し、管制センターに通知し、現地のLEDで注意喚起を行なう。複数の計測断面から逆走する物体を判定するため、飛ばされてきたゴミ袋などが逆走と誤検知されないように工夫されているという。
また、日本ソフト開発が展開している遠隔監視システム「SOFINET CLOUD」では、マンホールポンプや処理場など水環境インフラ施設に設置された機器をPLC経由で監視し、MAシリーズでデータ送信している。ベトナムで展開しているシステムでは、現地に設置されたIoTゲートウェイが浄水貯留槽の電源や設備状態のみならず、ph値などの水質までチェックし、クラウドに送信。日本国内から現地の水処理施設の稼働状態を見ることができるため、低コストでの監視活動を実現したという。
サイバーリンクスは同社のMAシリーズを用いた河川監視システムを構築している。水位と冠水状況、監視カメラの画像を定期的に送信され、しきい値を超えた場合は送信間隔を短縮するという。太陽光パネルの給電で運用可能なシステムになっており、電源取得が厳しい河川での設置も可能。IoTゲートウェイ、PoEインジェクター、ソーラーパネル、バッテリー一体型のボックスに搭載されているという。
「SORACOMブート」でネットワーク経由での設定を自動化
同社のネットワーク機器でのモバイル通信は、基本的にマルチキャリア対応で、ソラコムにも対応する。同社のルーターがソラコム認定デバイスになっているため、用途に応じてさまざまな製品が選べる。ソラコムIoTストアではFutureNet MA-S120/GLAとセルラーアンテナ、SORACOM 特定地域向け IoT SIMカードplan-K2(データ通信のみ)などを同梱した「FutureNet MA-S120/GLA スターターキット」も販売している。
このうちFutureNet MAシリーズなどで利用できるのが、SORACOMとの連携でキッティングを楽にする「SORACOMブート」の機能だ(関連記事:時間や手間のかかる「キッティング作業」を簡略化、FutureNet MA-S120の “SORACOM ブート機能” 紹介)。SORACOMブートは専用のファームウェアを用いることで、キッティングを自動化する機能になる。SORACOM Air SIMでPPP接続を行ない、SORACOMメタデータサービスから動作設定を取得。SORACOM Harvest Filesからファームウェアやオーバーレイ保存ファイルをダウンロードすることで、ネットワーク経由で設定を自動化できる。ソラコムのクラウドサービスと同社のハードウェアでの連携は、今後も期待したいところだ。
現在、同社が特に注力しているのが、セキュリティと評価制度への対応だ。IoTに特化した「WarpLink ISC-Next」では、IoTレピュテーション、ファイアウォール、セキュアなリモートアクセス、端末管理機能(死活監視・ファームウェア管理)などの機能をを組み合わせることでIoT機器のセキュリティを実現する。
また、2024年11月にはIoT製品向けのセキュリティ要件適合評価およびラベリング制度である「JC-STARマーク」への適合予定を発表した。独立行政法人情報処理推進機構(IPA)のJC-STARマークは2025年3月に最低限のセキュリティ要件を満たす★1の基準が導入される予定だが、センチュリーシステムズもFutureNet NXRシリーズ、ASシリーズ、MAシリーズでこの★1のセキュリティ基準に適合させるという。