施設や体育館をそのまま利用しコストダウンに
香川県高松市が全国の計算ハブに! ハイレゾのH200採用データセンターはなぜ低コストで利用できる?
2024年12月20日 18時30分更新
2022年にChatGPTが登場してから、AIは研究者や技術者だけでなく、一般の人までが使えるようになってきている。以降、さまざまなアプリやソフトウェアが登場し、目まぐるしく発展を遂げてきた。とくに生成AIの分野の成長は著しい。
企業や研究機関では、この生成AIの研究や技術開発がより求められるようになってくるわけだが、そこで必要になってくるものがある。それが開発用のデータセンターだ。
そんな中、ハイコスパなAIスパコンクラウドやGPUクラウドサービス「GPUSOROBAN」を手掛けるハイレゾが12月19日、香川県高松市林町に設置した「ハイレゾ香川 高松市データセンター」の開所式を開催した。
NVIDIA H200 Tensor コア GPUを408基備えるデータセンターが香川に爆誕
ハイレゾ香川 高松市データセンターでは、NVIDIAの「NVIDIA H200 Tensor コア GPU」を搭載するサーバーを設置。12月1日から稼働を開始しており、すでに利用する企業や研究機関も多いという。
加えて、現在では10台のサーバーが稼働しており、さらに年内に51台増えるとのこと。まだ空きはあるものの、かなりの問い合わせがあり、埋まりつつあるそうだ。加えて、NVIDIAの次世代のアーキテクチャ「Blackwell」を採用するB300についても、今後導入を検討しているそうだ。
今回、特別にデータセンターの中を見学させてもらったが、中に入ると冷房が効いており、12月の外のようにひんやりしていた。その中で、すでに稼働しているサーバーが轟音で稼働していた。まだ10台ではあるものの、その音は大きく、かなり高負荷な処理をしているというのが伺えた。
なお、普段はセキュリティーの観点からサーバールームには入ることはできない。サーバールームには、電子キーでのロックのほか、物理的な鍵も付いているそうだ。加えて、死角がない配置で監視カメラも設置されており、外部委託含め24時間スタッフが在中するようになっているとのことだ。
このデータセンターは、LLM(大規模言語モデル)の高速化や、マルチモーダルAIの開発、流体解析、ゲノム解析、電磁界解析等のシミュレーションなどに利用できる。ブラウザーを通じてGPUインスタンスに簡単に接続でき、インターネット環境があればすぐに利用を開始できるという使いやすさもポイントとなっている。
施設を再利用でコストカット
2025年からは体育館を利用した第2拠点も
ハイレゾのデータセンターは、コスパの高さも魅力となっている。今回のハイレゾ香川 高松市データセンターでは、従来あった「RISTかがわ」の施設をそのまま利用しており、新たに建設するといったコストをカットしている。加えて旧綾上中学校の体育館、校舎を回収してデータセンターの第2拠点にする計画も動いており、こちらは2025年8月に稼働開始予定だ。こちらは、現状は体育館の下にデータセンターを設置予定とのことだ。
ちなみに、第1拠点ではサーバールームに使用している部屋の床が、研究用に水が流れるように平らでなかったため、別途鉄骨を下に敷くことで、水平にした状態でサーバーを置いているそうだ。加えて、冷却には工業用のエアコンを採用している。
こういった施設費の節約によりコストダウンを実現。同社によると、AWSのHGX H100インスタンスと比較して、70%安い料金でH200を使用できるとしている。
とはいえ、今回設置したデータセンターはウルトラハイエンド向けとのことで、H200に加えて、CPUはインテルのXeonプロセッサーを採用。投資額は100億円で、サーバーの値段が多くの割合を占めているそうだ。
香川や国とも協力
では、「なぜ香川に?」と感じる方もいるかもしれない。まず1つは災害が少ないということが挙げられるという。加えて、ハイレゾとこのデータセンターのために設立されたハイレゾ香川は、香川県内のデータセンターへの設備にあたり「クラウドプログラムの安定供給確保のための取組に関する計画」を作成して経済産業大臣に提出。4月19日付けで認定を受けている。この認定により、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から最大で77億円の助成を受ける予定だという。
さらに、高松市データセンターの設備に関して、県及び高松市から香川県企業誘致条例及び高松市企業誘致条例に基づく助成措置対象企業にも指定されている。こういった香川県や国の協力があったからこそ、香川県高松市にデータセンターを構えることができたそうだ。
ハイレゾ 代表取締役の志倉喜幸氏は「前例がないという取り組みだったので難しかったが、県や市に認めてもらい、一丸となって成し遂げることができました。香川ではないと成し遂げられませんでした」と話していた。
開所式には、香川県知事の池田豊人氏や高松市長の大西秀人氏も参加したほか、初代デジタル大臣の平井卓也氏や、内閣府副大臣の瀬戸隆一氏からのビデオメッセージも流れた。
池田氏は「香川県を選んでいただき光栄です。今後は香川県でも人材不足をAIで補うということは確実にでてくると思います。これからは香川県が、日本の地方創世の新しいモデルとして示せるのではないかと考えています」とコメント。
大西氏は「実際にサーバール―ムを見学させてもらいましたが、計算を全速力でしているような唸りが聞こえました。ぜひフル稼働してもらって、高松の経済がワンランク発展することに繋がればいいなと考えています」と話していた。
なお、志倉氏は香川県でのこの取り組みについて、ほかの地方都市からも声がかかっていると話しており、増設も検討しているそうだ。志倉氏は「日本をアジアを世界の計算ハブにしていきたい」と話していた。
香川県高松市は、「スマートシティたかまつ」を推進している。市にはデジタル戦略室も設けられており、デジタルやITに関しての知識もしっかりあるため、今回のデータセンター設置にも賛同できたのではないかと予想される。
このハイレゾ香川 高松市データセンターにより、日本の生成AIの技術がさらに高まっていくのではないだろうか。さらに便利な世の中になるのが楽しみだ。