Ryzen 7 9800X3Dの総合的なパフォーマンス
次の表は、57本のゲームにおいて、Ryzen 7 9800X3Dが他のCPUに対しどの程度平均フレームレートを伸ばしたかをまとめたものだ。100%ならばRyzen 7 9800X3Dのアドバンテージなし、110%ならば平均フレームレートが10%高かった、逆に98%なら2%低かった……という意味になる。最低フレームレートに関しては考慮していないので、その点は注意されたい。
ゲーム57本、59のテスト結果を概観すると、Ryzen 7 9800X3Dが7800X3Dに対し負け~イーブン~5%未満の辛勝に終わったものは48本なのに対し、5%以上の伸びを記録したものは10本。その10本の中で平均フレームレートが10%以上伸びたものは4本に過ぎない。前回の検証のようにGPUボトルネックを可能な限り回避する設定での伸びと比較すると、全体的に伸びておらず、Core i9-14900Kとの差が5%未満というゲームも48タイトルあった。
この理由は繰り返し述べているように、描画負荷を上げることでGPU側の処理が手一杯となり、結果としてCPUの仕事が減るためである。さらに今回の検証環境ではGPUにRX 7900 XTを使用したこともGPUバウンドな状況を起こりやすくした、ともいえる。Radeon RX 7900 XTXの機材トラブルがなければ、あるいはGeForce RTX 4090のような超強力なGPUを使用すれば、Ryzen 7 9800X3Dが他のCPUに対しアドバンテージをが伸びるシーンはもう少し増えた可能性がある。ただそのあたりは将来出るであろうRyzen 9 9950X3D(仮称)の時の課題としたい。
上の表は各ゲームの最低フレームレート着目した時のRyzen 7 9800X3Dの伸び幅をまとめたものだ。平均フレームレートで差がなくても、Ryzen 7 7800X3Dに対して10%以上上回っているゲームは10本、Core i9-14900Kなら13本。5%以上10%未満ならそれぞれ18本/ 10本となる。Core i9-14900Kに対するアドバンテージよりも、Ryzen 7 7800X3Dに対して最低フレームレート引き上げ効果が高かった、という点に注目してほしい。
ワットパフォーマンスについて
最後に、各ベンチマークにおける平均フレームレートを、各CPUの消費電力で割り10倍したもの、つまり“10Wあたりのフレームレート”をワットパフォーマンスとして比較する。数値が大きいほど電力効率が高いことを意味する。
消費電力が特に大きいCore i9-14900Kがワットパフォーマンスも最低なのは当然だし、逆にRyzen勢のワットパフォーマンスは高い、というのは前回の傾向と共通している。ただ前回Ryzen 7 7800X3Dのワットパフォーマンスが9800X3Dの倍程度あったことを踏まえると、高画質設定においては9800X3Dと7800X3Dの差が大分縮まっている。それでもRyzen 7 7800X3Dのワットパフォーマンスが秀でていることに変わりはない。
GPUが律速な状況でも最低フレームレートは有利になる
以上でゲーム57本、59個のテストを用いたRyzen 7 9800X3D検証は終了だ。描画負荷を上げることでGPU側が律速になり、結果的にRyzen 7 9800X3Dのすごさが埋もれてしまった検証だった。ただ最低フレームレートに注目すると2ケタパーセントの伸びを見せるゲームも観測できた。
ゲームの画質設定をeスポーツスタイルの低遅延&高フレームレート志向で固めているなら、Ryzen 7 9800X3Dは間違いなく買いだが、高画質志向であるなら既存のCPUでも十分戦える。ただアップスケーラーで負荷を下げるとGPUバウンドな状況が回避されやすくなることは自明であるため、高画質設定で遊ぶという人にもRyzen 7 9800X3Dは十分魅力的だ。
今後投入されるであろうRyzen 9 9950X3D(仮称)がどのようなスペックを持ち、どんな付加価値を付けてくるかはわからない。ただRyzen 7 9800X3Dにもう1つ普通のCCDを追加しただけのCPUであれば、Ryzen 7 9800X3Dのほうが「誰にでも安心してオススメできるゲーム向けCPU」になるだろう。Day 1(発売直後の)ゲームでも確実に速いことや消費電力で有利だからだ。AMDはぜひこの予想をいい意味で裏切るような上位モデルを生み出してほしいものだ。
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