このページの本文へ

「十分に進化したテクノロジーは魔法と見分けがつかなくなる」AIと人間の関係はどうあるべきか?18世紀のチェス指し人形の数奇な運命の話

2024年11月26日 07時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

18世紀の自動人形はAIの始祖か?

 イギリスの気鋭ライターであるトム・スタンデージの「なぞのチェス指し人形『ターク』」(ハヤカワ文庫NF)は、18世紀のウィーンに現れた自動人形(オートマトン)の数奇な運命を描いたノンフィクションだ。トルコ人を意味する「ターク」は、オーストリアの官僚によって作られた中東風の衣装に身を包み、巧みにチェスを指す。チャンピオンすら負かす腕前を持つ「彼」は、欧米各国で興行を成功させ、時の為政者であるマリア・テレジアやナポレオンのほか、ベンジャミン・フランクリン、エドガー・アラン・ポーなどを驚かせる。

 果たして「彼」は純粋な機械なのか、果たしてイリュージョンなのか。あまりにも精巧なタークの正体は開発者以外、誰にもわからない。「発明」「偽物」などさまざまな憶測を呼びつつ、タークは持ち主を変えながら数奇な運命をたどることになる。そして20世紀に持ち越されたチェスとコンピューターの関係は、アラン・チューリングをはじめとする先人たちの試行錯誤を経て、IBMのディープブルーと人間は頂上決戦へ……。数多くの文献とタークマニアの情報、資料から構成された力作で、圧倒的な読み応えがあった。

 本文にも引用された「十分に進化したテクノロジーは魔法と見分けがつかなくなる」(アーサー・C・クラーク)の言葉の通り、人間の手作業が次々と機械化されていた産業革命の18世紀、多くの人はタークがテクノロジーか、魔法か、見分けが付かなかった。そして、これは「人間でしかできないと思っていたこと」を次々とやり遂げてしまう生成AIブームにいる今の私たちも同じ。AIと人間との関係はどうあるべきか? 200年以上前の歴史から多くのヒントが得られるはずだ。

文:大谷イビサ

ASCII.jpのクラウド・IT担当で、TECH.ASCII.jpの編集長。「インターネットASCII」や「アスキーNT」「NETWORK magazine」などの編集を担当し、2011年から現職。「ITだってエンタテインメント」をキーワードに、楽しく、ユーザー目線に立った情報発信を心がけている。2017年からは「ASCII TeamLeaders」を立ち上げ、SaaSの活用と働き方の理想像を追い続けている。

カテゴリートップへ

本記事はアフィリエイトプログラムによる収益を得ている場合があります

アクセスランキング

  1. 1位

    TECH

    フォーティネットの「SSL-VPN廃止」 IPsec移行と脱VPN、それぞれの注意点を総ざらい

  2. 2位

    ソフトウェア・仮想化

    「SaaSの死」の影響は感じない ― グローバル以上に好調な日本市場、ServiceNow鈴木社長が語る

  3. 3位

    ネットワーク

    ネットワークとセキュリティの統合に強み 通信事業者系ZTNA/SASEサービス3選

  4. 4位

    TECH

    「蟻の一穴」となるリモートアクセスVPNの脆弱性 ZTNA/SASEはなぜ必要か?

  5. 5位

    デジタル

    海外駐在員の負担を軽減し、ワンチームへ kintoneは言語と文化の壁を越える「翻訳の魔法」

  6. 6位

    ビジネス

    医療費5兆円抑制につながる“国産ヘルスケア基盤”構築へ SMBC×富士通×ソフトバンクが業務連携

  7. 7位

    エンタープライズ

    基盤も古いし、コードも酷い! そんなクエストにGitHub Copilotで試行錯誤しまくった「みんな」こそ最高

  8. 8位

    サーバー・ストレージ

    「30%ではなく“30倍”の生産性向上へ」 AIエージェント時代に求められるIT基盤、マイケル・デル氏が語る

  9. 9位

    ビジネス・開発

    いますぐ捨てたいITサービスは? AI推しにそろそろ飽きてません? 情シスさんのホンネを「ゆるっとナイト」で聞いた

  10. 10位

    ITトピック

    AIセキュリティで必要な6つの対策/20代の半数が「検索エンジンを使わない」/生成AIツールはエンジニアの「業務インフラ」へ、ほか

集計期間:
2026年05月19日~2026年05月25日
  • 角川アスキー総合研究所