描画能力:頑張っているがむちゃくちゃいいというほどではない
さて、問題は描画能力です……。これは評価が悩ましいというところです。「頑張っているけどむちゃくちゃいい」というほどではないんですね。この連載でおなじみ「明日来子さん」の画像を、ChatGPTによってプロンプト解析し、画像として出してみました。すると、なんだかこう、肌艶の感じがよくないというか、モヤッとした印象のする画像が出てきました。美的にすごく魅力のある画像ではないかもしれないというのが第一印象です。
SD3Mの発表時には、「芝生に横たわっている女性」がまともに人間を描写できないという点が悪い意味で話題になりました。(参照:“革命”起こした画像生成AIに暗雲 「Stable Diffusion 3 Medium」の厳しい船出)SD3Lとの差別化のためか、人体描写についての重要なデータ部分を意図的に抜いていたのが原因と推測されています。
筆者の今回の検証では、より全身像が出やすく、画像生成AIが苦手な手足が交差する描写になりやすい「芝生の上に座っている女性」としています。SD3Mと違い、人体は破綻なく指示通りに出ているとも言えるのですが、やはり魅力的な絵とまでは感じにくい印象です。また、細かく見ていくと手や足の指が微妙に破綻しているようにも見えます。
ただ、他社のものと比較してみると、絵的な魅力では劣るものの、プロンプトへの追従性については遜色ないようには見えます。
工場のような人工物でも比較してみました。画像生成AIは直線が苦手な傾向があり、モデルの特徴が出やすいためです。この比較では、SD3.5Lはかなり独自性が高く、かつ複雑な工場の様子を描写することに成功できています。一方で、Flux.1 devはどこか単純化された画像となっており、学習データの量が限られていることを推測させます。それぞれのモデルにより、描写の得意不得意が別れてきているようにも感じられます。
さらに、SF的なロボット系も生成してみました。SF的な意匠は、各モデルの学習しているデータの違いが出やすいモチーフです。SD3.5Lはかなり独創性の高く、なかなか魅力的なロボットが生成されました。どのモデルが良い悪いというのが簡単に決められないように思えます。
性的な画像が生成できるかも試してみましたが、出力できたのはトップレスぐらいまでで露骨な画像は出力されません。Flux.1とあまり変わらない程度の性能で、性的な画像を生成させる能力は省かれていると考えられます。現在、Stablity AIは子どもへの性的虐待を防止する国際的な取り組みにも参加しており、SD3.5シリーズではそれらの対策が入っているようです。
SD3.5Lは生成するプロンプトによって、得意不得意があり、特に人物については突き抜けた魅力があるとまではいえません。しかし、モチーフによっては独自の魅力があるという印象です。これからファインチューニングを前提とした基礎モデルとなっていくとすれば、伸び代が十分にあると考えられます。
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