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JR貨物、輪軸作業の不適切処理で法令違反 国交省が改善指示

2024年10月31日 14時40分更新

文● @sumire_kon

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JR貨物のコンテナ列車

 国土交通省(国交省)は10月30日、日本貨物鉄道(JR貨物)の輪軸圧入作業における不適切な処理について、鉄道事業法に基づく保安監査の結果を公表し、改善措置について指示したことを発表した。

省令に抵触する内容も

 本件は7月24日に新山口駅構内で発生したJR貨物の列車脱線事故の調査過程で、作業記録の書き換えなどが発覚したことを受けて実施されたもの。国交省によると、今回の保安監査では以下の問題点が確認されている。

1.規程類の不備

・圧入力値に関する規定や、規定数値を逸脱した際の取り扱いに関する規定が存在せず、職場内で口頭で引き継がれている事業所が存在した
・規定類が用意されていた事業所も、内容は各事業所が独自に定めており、本社が関与した体系的な規定となっていなかった

2.現場における圧入作業の実態

・圧入作業の内容は、職場内で口頭で漫然と踏襲されていた。あるいは規程類に定められた車輪の圧入力値を逸脱した輪軸を使用していた
・規定等から逸脱した輪軸をそのまま使用する運用が、長く職場内で口頭で漫然と踏襲されていた
・工程、コスト、手間を惜しむ観点から、規程で定められた再圧入等の作業を怠っていた

3.従業員の知識と教育の不足

・圧入力値の下限を下回ると問題であるが、上限を上回っても問題はないという誤った認識が、現場の従業員に存在した
・輪軸組立作業の知識に関する教育が体系的になされていなかった
・規定等を逸脱した状態で使用した場合の安全上の問題について正しく理解していなかった

4.作業記録の不適切な取り扱い

・作業記録の書き換えが可能な状態となっており、実際に書き換えを実施した事業所があった
・圧入力値が規定値を逸脱した場合、事業所の管理的立場にいる者からの再圧入の指示を避けるため、記録を書き換えていた
・車輪内面間距離を管理していることから、圧入力値の上限を超えても問題ないとの認識のもと、上限を超えて計測された数値を上限値に書き換えていた
・一連の誤った認識や作業記録を書き換える行為は、職場内で口頭で漫然と踏襲されていた

5.管理者側の問題

・事業所の管理的立場にいる者が、輪軸の使用の可否に係る判断に必要な確認をしていなかった
・事業所の管理的立場にいる者は、輪軸組立作業に関わったことはなく、規程類に違反する作業や作業記録の書き換えに気づかなかった

 国交省は上記の問題行為等について、「鉄道に関する技術上の基準を定める省令」の第10条第1項および第87条第4項に抵触すると判断。JR貨物に対し、安全確保のため次の措置を講じるよう指示した。

A.規程類の整備

・輪軸組立作業に関して、規程類を社内で体系的に整備すること
・規程類を適切に管理できる体制に改善すること

B.教育体制の改善

・輪軸組立作業に関して、体系的、計画的に教育を実施すること
・コンプライアンスに関して、体系的、計画的に教育を実施すること

C.作業記録の書き換え防止

・作業記録の書き換えが容易にできない仕組みを確立すること
・作業記録の重要性を周知するとともに、圧入作業に関する作業記録の管理体制を改善すること
・内部監査等の仕組みを検証し、不適切な取扱いが見過ごされない体制を整備すること

D.安全管理体制の点検と見直し

・同様の問題が別の作業や部門でもないか点検し、必要な見直しをすること

 一連の指示について同省は、A〜Dの措置を講じるか、講じるための計画を策定し、A〜Cは2025年1月31日、Dは2025年3月31日までに報告するようJR貨物に求めている。

 輪軸組立の不正行為を巡っては、9月以降、JR貨物以外の事業者でも不正が発覚。大手を含む7社が国交省による保安監査を受けている。委託先整備工場の不正に巻き込まれたケースも含めれば、影響範囲は全国50事業者におよび、安全神話を揺るがす大問題と言って差し支えない状態だ。

 不正を起こした各事業者が信頼を回復するには、単に「現場で何が起きたか」を調べるだけでなく、「なぜ不正が起こったのか」という根本的な原因にも臆せず踏み込み、改善する決意と行動が求められる。

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