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Ryzen 9 9950Xの性能は電力設定でどう変化する? まさか壊れたりしないよな

2024年09月14日 10時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

提供: 日本AMD

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TDPを下げると急激にクロックが下がる
TDP 120Wあたりが良いバランス

 ではHandbrakeにおいてH.264のエンコード処理中、システム全体およびCPUの消費電力がいかほどのものなのかをHWBusters「Powenetics v2」を利用して観測したのが次のグラフだ。

 システム全体の消費電力はATXメインパワー/ EPS12V/ PCIe 8ピン/ PCIe x16スロットに流れる電力の実測値であり、CPUの消費電力とあるものはそこからEPS12Vケーブルに流れる電力の実測値にフォーカスしたものだ。

 さらにグラフ中の高負荷時(つまりエンコード時)平均値・99パーセンタイル点(99%ileと表記)・最大値をそれぞれ比較している。また、アイドル時は文字通りアイドル状態だが3分間計測した平均値だけを見ている。

システム全体の消費電力

CPUの消費電力

 まず、アイドル時の消費電力はRyzen 9 9950XのTDPを65Wまで下げてもほとんど変動しない。しかし高負荷時の消費電力はTDP設定を下げると劇的に下がる。定格(170W-PPT 200W)時はシステム全体で340W、CPUだけで見ても225Wなのに対し、TDP 120Wに下げるだけでシステム全体で36W、CPU単体で49Wの消費電力低下が認められた(いずれも平均値で比較)。

 TDPを105W、65Wと下げれば消費電力はさらに下がる。TDP 65W設定時におけるCPUの消費電力は平均89Wとなっているが、これは同じTDP 65WのRyzen 7 9700Xと同じ消費電力である。

 そしてRyzen 9 7950Xと同じセッティング(200W-PPT 230W)に引き上げた9950Xは定格時よりも消費電力は上昇。この場合消費電力の増分はシステム全体で36W、CPU単体では21Wと、PPTの上げ幅に近いものが得られた。

 ただPPT 230WにしたRyzen 9 9950Xと実際の7950Xを比較すると、9950Xの消費電力は50W近く上回ってしまうのが気になる。Zen 5世代はワットパフォーマンスに優れているはずなのでは……?

 そこでHandbrakeのエンコード(Super HQ 1080p30 Surround)処理のフレームレートをCPUの消費電力(平均値)で割り10倍したもの、つまり10Wあたりのフレームレートを比較してみよう。

Handbrakeにおける10Wあたりのフレームレート

 消費電力が増えたとしても、それ以上の性能上昇があれば問題ない。今回の検証ではRyzen 7 7950Xは6.29fps/10Wなのに対し、Ryzen 9 9950Xは定格で6.62fps/10W、PPTを230Wに盛ると6.54fps/10Wとなり、どちらもRyzen 9 7950Xのワットパフォーマンスをわずかではあるが越えてきた。

 しかし、Ryzen 9 9950XはTDP 105Wより下の設定ではワットパフォーマンスが目に見えて低下することもわかる。今回試した設定ではTDP 120Wあたりが消費電力とパフォーマンスのバランスが良いと言えるだろう。

 では、このエンコード処理中にCPUがどういった挙動をしているのか? 「HWiNFO Pro」を利用しCPUクロック・温度(Tctl/ Tdie)・CPUのPPTの推移を追跡したのが下のグラフだ。

CPUクロック(全コアの平均値)の推移

 TDP変動の影響はクロックにも現れる。定格時(170W-PPT 200W)は4.8GHz付近を維持しているが、TDP 120Wなら4.5GHzに低下。さらにTDP 105Wならば3.9GHz、65Wなら3.3GHzと急激にクロックが下がる。CINEBENCHのスコアーやHandbrakeの処理時間において低TDP設定時のパフォーマンスが伸びない理由はこれだ。

 そしてTDP 170WでPPTを230Wにした場合だが、クロックは定格時よりも上がるものの、定格時よりも100MHz程度しか上がらない。むしろRyzen 9 7950Xの方がクロックにおいて上回っている。しかしクロックが高くても処理時間においてRyzen 9 9950Xの方が上なのだから、Zen 5の持ち味はしっかり活かせているといったところだ。

CPU温度 (Tctl/ Tdie)の推移

 次はCPU温度だが、Ryzen 9 7950Xや9950XのPPT 230W設定では、処理開始から10秒も待たずにRyzenの温度限界(95度)まで上昇する。しかしRyzen 9 9950Xの定格設定(PPT 200W)では温度限界まで到達することはなく、90度あたりで頭打ちになる。

 Ryzen 9 9950Xのみ、PPTがTDPの1.35倍設定になっていない理由については明かされていないが、このグラフを見る限り高負荷をかけた際に温度が上がりすぎるのを緩和したいという思惑が透けて見える。

 PPT 230Wにしてもクロックも大して上昇せず、パフォーマンスも誤差程度しか上昇しないなら、スペックを安全側に振った方が安心だ、と判断したのではないだろうか?

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