調理師歴40年、大病を経たアラ還のライフシフト

「メグモグキッチン」主宰:田中めぐみさん/忙しい家庭を支える、予約殺到の出張家庭料理シェフに転身!

文●村田明音

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予約が取れない日も多いという人気の出張家庭料理シェフサービス「メグモグキッチン」。主宰の田中めぐみさんは、調理師歴40年、主婦歴13年のキャリアを持つ。そんな“大ベテラン”がアラ還で起業を志したきっかけや、事業を始めてぶつかった壁、今後の展望などについて、話を聞いてみた。
 

作り置きを調理するために改装した自宅キッチン

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人気を博している“出張家庭料理シェフ”サービスとは?

愛知県豊明市で「メグモグキッチン」を主宰している田中めぐみさん。調理師歴40年、主婦歴13年を経て彼女がたどり着いた“出張家庭料理シェフ”とは、どのような仕事なのだろうか。

「出張家庭料理シェフというのは家庭料理代行で、家事代行サービスの一つです。私の場合は、作り置きの家庭料理をメインにしています。お客様のご自宅にお邪魔して、冷蔵庫の中の食材を使ってその場で料理を作ります。お客様のリクエストに応えながら、3時間で約12品を調理し、タッパーに詰めて保存できるようにします 。
(3時間・12品以上13,500円~※家族の人数により品数に増減あり)」

田中さんに依頼するのは「仕事が忙しくて、料理を作る時間がない」という、働きながら子育てをしているお母さんやお父さんが多い。「お客様の中には、私が料理をしている時間に隣で仕事をする方もいれば、家族でカラオケに出かける方もいます」と話す。

「人にはそれぞれ得意なことや使命があると思っています。私はそれが料理というだけ。私が自分の得意なこととして料理をするので、その間にお客様はその人にしかできないことをしてほしいと思っています」

手際よく作ることができるのは、外食企業で接客しながら複数品を同時進行で調理してきた経験の賜物だ。

特別な技法や調味料を使わず、家庭料理を提供することを心がけているそう。

スーパーでの買い物代行もオプション(+1,500円)で付けられる。

そんな忙しい家庭になくてはならない存在となっている田中めぐみさんは、現在61歳。「メグモグキッチン」を開業したのは58歳のときだ。19歳で調理師免許を取得して以降、社会福祉施設や飲食チェーン、ホテルなどさまざま外食企業でキャリアを積んできた。
なぜ、起業するに至ったのだろうか。

「約40年にわたり仕事に身を捧げてきましたが、自分の時間も豊かにしたいと思ったことが最初のきっかけです。当時は会社員として調理の仕事をしていたため、まずは兼業しやすい不動産投資を始めて“大家さん”になりました。そんななか、乳がんが発覚。『今までと同じことをしていてはいけない』と、神様から言われている気がして、自分で時間や収入をコントロールしづらい会社員として時間を使うことをやめて、得意な料理で起業すると決意したのです。治療中は、仕事から離れて自分を振り返ることができました。そこで、『40年も調理の仕事を続けている原点って何だろう?』と考えたとき、高校生の頃に感じた『忙しい母のために料理を作って、役に立ちたい!喜んで貰いたい!』という想いがあることに気が付きました」

そして、退院後に起業のプランを考えているとき、ある人に「料理が得意なら、人のお家に行って料理を作る仕事はどう?」とアイデアをもらったという。
「出張シェフというとパーティーで料理を作るイメージがあるかもしれませんが、私は家庭料理を専門にしました。非日常の華やかな外食よりも、毎日食べる食事のほうが大切。当時の母のような、今忙しくて困っているお母さんのために家庭料理を作って差し上げたいと思ったのです。それが出張家庭料理シェフとして、私が掲げている理念です。起業から今まで、ブレることなく事業をできているのは、治療中にじっくり自分と向き合うことができたおかげだと思います」


ライフシフトのきっかけとなった、乳がんの闘病中の様子。

コロナ禍には、外国人向けにオンラインの料理講師をしていたことも。

主婦歴13年の田中さん。「旦那ちゃんとの晩酌は欠かせません」と話す。

出張家庭料理シェフのサービスは口コミで広がり、新規で予約を取れない状況が続くようになった。 起業して1年で会社員時代の給料の1.5倍に達したが、経費もかさむため「もっと売上を伸ばさなくては」とも感じたという。「起業当初は苦労が多く、『こんなに頑張ったのにこれだけ?』と思ってしまうこともありました。毎月当たり前のように給料が振り込まれ、しかもそれが事業でいう純利益として手元に残る会社員という立場のありがたみも痛感しましたね」

2年目には3倍ほどの売上を達成。その後も目標通りに売上は増加している。

「経営者としては、受けられる予約数には限度がある、つまり売上にも上限があると痛感しました。売上を増やそうとするなら、仕事をたくさん詰め込むしかないのです。しかし、予約をすべてこなそうと仕事を詰めすぎて万が一倒れてしまったら? 頼りにしてくれていたお客様を困らせてしまいますし、事業も中断せざるを得なくなります。自分が体力的に無理をすることなく、より多くのお客様に料理を届け事業を継続させるために、価格改定をしたり、作り置き料理の宅配サービスを始めました。スタッフを雇えるようになったことで、少しずつ調理を教えられるようになりました。ゆくゆくは事業を受け継いでくれる人ができればとも考えています」

出張家庭料理シェフは元手がなくても始められる事業。起業を支援する制度も多彩

ところで、出張家庭料理シェフという仕事は、調理師のキャリアがあればすぐに始められるのだろうか。必要な資金や認可などについて尋ねてみた。

「出張料理シェフとして必要なものは、髪の毛をしまう帽子とエプロンくらいでしょうか。あとは、調理師の経験があれば、からだ一つでお客様の自宅に伺うだけなので、始めるのに元手はかからない事業です。出張して食事を作るだけなら資格や許可は必須ではありません。出張シェフの登録サイトを使えば、集客にも困らないと思います。

一方で、作り置きの宅配料理を作るためには保健所の許可が必要になります。私の場合、認可を取るためのキッチン改装と設備導入の費用として、約550万円かかりました。資金は、創業融資として金融機関から借りました。月に約5万円の返済があることが『絶対に成功させなくては』という良い原動力になっています。

さらに、今後は事業再構築補助金や小規模事業者持続化補助金を活用して瞬間冷凍機を導入し、冷凍での宅配も始める予定です。創業融資や補助金など、起業を支援してくれる制度をどんどん活用して資金面でのハードルを下げるとチャレンジしやすくなりますよ。」

作り置き宅配料理は、キッチンで作ったものをクール便で配送している。

肉料理4品、魚料理3品、野菜料理(温・冷)5品、季節のキッシュ1個の計13品が1セット。


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