最新パーツ性能チェック 第448回
Ryzen 9000シリーズの成長を見守る
TDP 105W動作にするとRyzen 7 9700X/Ryzen 5 9600Xはどの程度化ける? レッドゾーン寸前を攻める絶妙な設定だが、ゲームでの効果は期待薄
2024年09月03日 13時00分更新
同じ105W設定でも伸びが異なる
ではCINEBENCH 2024のスコアー比べから始めよう。10分間のプレヒートを経てからスコアーを算出するモードで計測している。
Ryzen 7 9700XのTDP 65W設定では、マルチスレッド性能においてTDP 105Wの7700Xより上回ったものの、さほどスコアーが伸びているという感じはしない。だがTDP 105W設定にすることでマルチスレッド性能は10%弱上昇。TDP 120W設定では105W設定とほぼ変わらないので、105W設定の付近に熱や電力的な制限がかかっていると推測できる。
Ryzen 5 9600XについてもTDP 105Wにすることでマルチスレッド性能が伸びたが、Ryzen 7 7700Xほどの伸びはみられない。AMDが以前出していた資料においても、Ryzen 7 9700XはTDPを引き上げることによる恩恵が大きいしていたが、今回の検証でそれが裏付けられた形だ。
Zen 5のTDP 105Wは神がかり的バランスか?
次に「Handbrake」による動画のエンコード時間の検証だ。ソース動画は4K@60fps、再生時間は約3分。これをHandbrakeプリセットの“Super HQ 1080p30 Surround”および“Super HQ 2160p60 4K HEVC Surround”を利用してエンコードする時間を計測した。
ここでもTDP 65WをTDP 105Wにすると大幅に処理時間が短くなるが、TDP 120Wにしても105Wの時とほとんど処理時間が変わらないどころか、微妙に遅くなることもある、といった感じのデータが得られた。
このHandbrakeでH.264エンコード処理をしている最中にいったいどの程度の電力が消費されているかをHWBusters「Powenetics v2」を利用して観測したのが次のグラフだ。システム全体の消費電力とあるのはATXメインパワー/ EPS12V/ PCIe 8ピン/ PCIe x16スロットに流れる電力の実測値であり、CPUの消費電力とあるものはそこからEPS12Vケーブルに流れる電力の実測値にフォーカスしたものだ。
さらにグラフ中の高負荷時(つまりエンコード時)平均値・99パーセンタイル点(99%ileと表記)・最大値をそれぞれ比較している。また、アイドル時は文字通りアイドル状態だが3分間計測した平均値だけを見ている。
TDPを105Wや120W設定にすることでRyzen 7 9700XおよびRyzen 5 9600Xの消費電力は大きく跳ね上がる。CPU単体の消費電力に注目すると、コア数の多いRyzen 7 9700XではTDPを65W→105W設定に変更することで60W程度、Ryzen 5 9600Xは40W程度増加した。
TDP 105W設定と120W設定で消費電力がほとんど変化しないのは、CINEBENCHのスコアーやHandbrakeのエンコード速度がほとんど変化しないのと同じで、なんらかの理由でパワー制限がかかったから、ということになる。
もう一つ注目したいのは前世代Ryzenの消費電力との差だ。Ryzen 7 9700XのTDP 105W設定時とRyzen 7 7700Xが消費した電力を比較すると、同じ105W設定で運用しているにも関わらずRyzen 7 9700Xの方が20W以上消費電力が高くなる。Ryzen 5 9600Xと7600Xの関係も同様に20W程度高くなった。
低いTDPでも高性能というのがZen 5アーキテクチャーの最大の強みであることは以前の検証から明らかになっているが、逆にTDPを引き上げると突然燃費が悪くなってしまうのだろうか?
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