第2回 チームワークマネジメントがビジネスを変える

チームワークマネジメントを成功させるためのBacklog活用とその運用

デジタルキューブ恩田さん、いかにバックログスイーパーとなりしか

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ヌーラボ

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 Webサイトの受託開発やクラウドプロダクトを手がけるデジタルキューブの恩田淳子さんは、チーム内のタスクをきれいにしていく「バックログスイーパー」の役割を担っている。前半は、恩田さんのビジネスプロフィール、デジタルキューブでのBacklogの活用方法などを聞いてみる。(以下、敬称略 インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ)

デジタルキューブの恩田淳子氏

新卒で入った会社でBacklogとタスク管理になじむ

大谷:まずは恩田さんがデジタルキューブに至るまでのビジネスプロフィールを教えてもらえますか?

恩田:2009年に新卒で入社した会社がキーエンスの子会社で、最初は営業だったのですが、営業ができなすぎて編集に異動になりました。最初は広告制作とカスタマーサポートを担当し、その後にコンテンツマーケティングをやるようになったのですが、編集部で使ったのがBacklogです。全社で50人規模ですが、使っていたのは5人くらいの編集部でした。

大谷:具体的にはどんな使い方だったんですか?

恩田:編集部門で「記事を書いたので、チェックお願いします」とか、「チェック終わったので、公開お願いします」みたいな編集フローでBacklogを使っていました。そのときにBacklogの使い方はもちろん、タスク管理という概念自体も上司に教えてもらいました。

上司がかなり論理的な人で、フローを作り込んでくれたので、すんなり理解できました。広告制作だと案件ごとに課題が作られるので、課題を分割せねばみたいなことがなく、ここらへんもなじみやすかったです。

大谷:課題は恩田さんも作っていたのですか?

恩田:はい。営業さんから依頼が来たら、自分で課題作りからやっていました。めちゃくちゃどうでもいいんですけど、アイコンは当時「ひよこ」にしていました(笑)。当時は本当に「ひよこ」だったので、一人前になったら「にわとり」にしようと思っていました。

2016年からは人材サービス会社でコンテンツマーケをやっていました。就活層向けのメディアをやったこともありますし、転職潜在層向けのメディアもやりました。この時期はBacklogは使ってなかったです。大手でしたが、メール、Excel、チャットがメインで、私が所属するチームではタスク管理はなかったです。

大谷:どうでしたか?

恩田:まあ、やりづらいですよね(笑)。誰がどんな仕事を持っているかわからないし、スタックさせてしまう人もいます。「まず、棚卸ししてみようか?」とか、「どんな案件が進んでないの?」みたいな話をしてましたし、とにかくミーティングをガッツリやらないと現状がわからない。

私はマーケティング担当なので、記事がいつアップされたら、これくらい流入が来るので、コンバージョンがこれくらいみたいな話を、編集さんと共有しながらExcelで管理していましたね。

大谷:で、そのときに今のデジタルキューブさんと関係ができているんですよね。

恩田:チームメンバーの中でもわりとWebサイトのリニューアルや構築を担当することが多くて、そうなるとWeb担当者として開発会社とやりとりすることになるので、ここでデジタルキューブとの接点ができました。その後、何度もWebサイトを作ったこともあり、デジタルキューブと交流が増え、イベントや飲み会に誘っていただき、2020年に入社しています。

大谷:なんだかお二人のなれそめを聞くような話で、やや恥ずかしいというか。

恩田:でも、当時のデジタルキューブには「デザインがリクエスト通りになってない」とか普通に指摘していましたよ(笑)。ただ、デジタルキューブ代表の小賀さんからすると、「こういう人がいたら、うちの納品物の品質が上げられる」と思ったらしく、こっち側に来てくれないかな?と誘っていただきました。

バックログスイーパー=資質+ツールの使い方

大谷:改めて、デジタルキューブについて教えてください。

恩田:兵庫県神戸市を拠点にしたIT企業で、もともとはWordPressを用いた受託開発をメインに手がけていましたが、今はAWSをベースにしたホスティングや自社プロダクト事業を成長させていこうとしています。

大谷:WordPressの会社というイメージが強いですが。

恩田:確かにフルマネージドホスティングの「Amimoto」や静的Webサイトを活用するための「Shifter」はWordPress向けのプロダクトですが、IPOやM&Aを支援するためのタスク管理ツールである「FinanScope」はAWSを用いたSaaSになります。

大谷:デジタルキューブではBacklogは以前から使っていたんですか? 

恩田:私はいなかったのですが、Backlogは2011年から全部門で使っています。当時はほかにめぼしいツールがなかったのと、コミュニティで使っていたらよかったので、うちでも使いましょうという感じだったらしいです。

大谷:そんな中で、デジタルキューブに入ったんですね。

恩田:はい。小賀さんからバックログスイーパーをやってほしいとお誘いいただき、2020年に入社しました。まあ、社内では「Backlogポリス」という言い方だったんですが。

大谷:なるほど。では、小賀さんはバックログスイーパーの資質を見抜いていたんですね。

恩田:前職でデジタルキューブに開発をお願いしたときに、デジタルキューブとのやりとりでBacklogを使っていたので、使い方は見ていたんだと思います。デジタルキューブ相手に「御社のボールだと思うんですけど、期限そろそろなんで、どうなってます?」みたいなことをツッコんでいましたから。

大谷:めちゃくちゃ、スイーパー資質じゃないですか(笑)。ただ、デジタルキューブに移って立場が変わったんですね。

恩田:受託する側から受託される側になり、PMOとしてプロジェクトを回す立場になりました。案件が来たら、まずはBacklogでプロジェクトを作り、Wikiにコミュニケーションルールやプロジェクト概要を登録します。

大谷:あとはスケジュールですよね。

恩田:はい。いつまでに要件定義を行ない、いつからデザインや開発を始め、いつからお客さまの検収を行なうのかを決めて、その上でお客さまと打ち合わせを行ないます。以降、お客さまとのコミュニケーションはすべて私が担当し、タスクがスタックしそうになったら、社内やお客さま含めて、進捗がどうなっているのか確認して、納品まで持っていくということをやっていました。当時は営業企画部や管理部がなかったので、請求書の発行まで担当していました。

プロジェクトごとに社内のメンバーが違うので、カレンダーにフェーズごとに進捗管理日を登録しています。「デザイン開始日の2日後」「期限終了2日前ですよ」みたいな感じに登録して、その日になったら「どうですかー?」と担当者に聞いていました。

Backlogによる人材採用や評価、開発の仕組み

大谷:その後、恩田さんは人材系の担当に移るんですよね。

恩田:ミッションは人材開発の担当なんですけど、採用もやっています。

PMOだけではなく、案件を進めるにあたっては、チームメンバー間の相互理解や新しく入ったメンバーがすぐになじめるような仕組みが必要だなと思っていました。そこで、オンラインの新メンバー歓迎会やコロナ禍の合間をぬって対面の合宿を企画していたら、小賀さんから人材開発をやってみませんか?と言われ、現在はそちらを担当しています。

大谷:人材採用や人材開発でのBacklogの使い方を教えてください。

恩田:採用に関してはシンプルで、Aさんから応募があった時点で、Aさんの採用という課題を作り、面談の日程調整などを行なっています。書類に関しては個人情報にあたるので、「HERP」というシステムを使っています。Backlogに関しても、採用に関わる人だけに見てもらえるようにしています。

人材開発では、メンバーごとに課題を作成しておき、メンバーの月次評価をBacklogの課題に記録できるようにしています。

大谷:具体的な目標管理の流れはどんな感じなんでしょう。

恩田:弊社では目標管理にMBOの仕組みを導入しています。具体的には、まず半期ごとに全社的な目標を設定し、それを棚卸しする形で部ごとにKPIを設けます。そのKPIを達成し、かつ個人の自律的な成長につなげるために個々人の目標を設計しています。

とはいえ目標を作っただけだと、期末に蓋を開けて「達成したからA、未達成だからC」と評価者がマルバツを付けるだけの運用になりかねません。こうなるとメンバーも会社も成長しないですし、メンバーから不満が出てしまう可能性もあります。

ですので、部門長がメンバーの目標の達成を支援したり、なるべく納得感の高い評価ができるように、という意味合いから、評価者がメンバーの行動や成果を定期的にモニタリングできるようにしています。そのための記録ツールがBacklogの課題というわけです。

大谷:具体的な起票の仕方を教えてもらえますか?

恩田:たとえば、「2024年上半期の個人目標のモニタリング」という親課題を立て、子課題にメンバーごとの課題を立てて、それぞれの課題にその人のグレードや部門、育成のヒントなどを登録します。HRシステムとして使っているSmartHRの目標管理シートをベースに、あらかじめメンバーと合意した加点・減点要素や行動指標なども書いておきます。

このとき親課題は私自身の課題にしておいて、メンバーごとの課題についてはその上長の担当にしておきます。その上で、月初に、各部門の上司に各メンバーの5段階評価をお願いしています。評価を記入したら、期限を翌月に変えてもらっています。忙しくてメンバーの評価を書いてない上司もいるので、それは個別にお声がけしています。

ちなみにBacklog上で相手を評価するスターは、人材開発のKPIになったこともありました。スターを送り合うって、ほかの人の仕事を見ているということだし、他者の仕事への評価じゃないですか。こういうくせ付けをしたくて、半年間で集めたスターの数を評価指標に入れた時期があります。半年間で送り合ったスター数は15万を超えました。

大谷:すっかり習慣化したということですね。採用と人材開発って継続的だと思うんですが、両者のBacklogプロジェクトは連携しているのですか。

恩田:採用と人材開発のプロジェクトは分けていますが、活動としてはつながっています。採用活動に使っているプロジェクトは、入社まで進んだら、いったんBacklogのタスクは完了します。人材開発は別途で課題を作って進めます。新入社員研修では、仕事の進め方、フルリモートワークのカルチャー、チームで戦う意識、メンバーの多様性、アウトプットの重要性などと、いっしょにタスク管理を説明しています。

大谷:最近は経営会議もBacklogを使っていると聞きました。

恩田:この数年ですかね。経営会議って記録を残さなければならないので、2024年の経営会議を親会議、月ごとに子課題を作成して、開催日やオンライン会議のURLを登録しています。

最初はアジェンダ含めて全部をBacklogに書いていたのですが、別のユーザーが同時に更新したときに反映できないということがあったので、議事メモやログはGoogle Docsに残していおいて、Backlogにはリンクだけ入れてあります。経営会議以外の会議も基本的にはBacklogを使っていますね。

大谷:もはやデジタルキューブの活動はBacklogを探せば一通り出てくる感じですか?

恩田:権限によって見られる、見られないの違いはありますが、基本はそうですね。私にとっては「Backlogにない仕事は仕事として存在しない」という感じです。

Backlogをうまく利用するには結局チームワークの意識が重要

大谷:今はどれくらいの規模でBacklogを使っていますか?

恩田:ユーザー数は社内外で600弱。受託や保守を契約している会社やパートナーとのやりとり、社内コミュニケーションにまでなんでも使っています。

大谷:プロジェクトはどれくらいあるんですか?

恩田:200くらいあります。しかも、大きい案件、小さい案件も含めて、どんどん増えています。

大谷:そんなにあるんですか? これだけあると見きれますかね。

恩田:これを1つずつ見るのはもはや無理なので、複数のプロジェクトをまとめて管理するためのプロジェクトを作ったこともあります。Backlogって、プロジェクトをまたいで進捗やガントチャートを見ることができないので、自分が見なければならないタスクをとりあえずそのプロジェクト管理用のプロジェクトに登録して、一覧でガントチャートを作って、進捗確認しています。手動でコピーした課題には、元のURLを書いておいて、すぐに元の課題に飛べるようにしていました。

大谷:Backlogをうまく利用するためには、結局なにが必要なんでしょうか?

恩田:チームワークの意識だと思うんです。一人で仕事している限りでは、正直Backlogは要らないかもしれない。チームでやっているからこそ、見える化も、記録も、ステータスも必要だと思っています。

特にうちの会社は創業当時からフルリモートワーク。オフィスにいれば、口頭で「ちょっといいですか?」とお願いできますが、フルリモートワークだと全部テキストで伝達しなければならない。だからこそ、仕事についての説明が必要だし、仕事をお願いする相手の理解が必要です。これを実現するのが人材開発を担当する私の役割だと思っています。

大谷:デジタルキューブからすると、端的にBacklogでなにが実現できたんでしょうか?

恩田:そういう意味で、私から見たBacklogの導入効果は、「フルリモートが成り立ちますよ」ということですね。Backlogがあることで、うちのフルリモートワークが初めて実現しています。

後編に続く

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