バックログスイーパーの恩田さんに、タスク管理成功の秘訣を聞いた

大谷イビサ 編集●ASCII 写真●曽根田元

提供: ヌーラボ

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 タスク管理を円滑に進めるための「バックログスイーパー」の役割を担うデジタルキューブの恩田淳子さんにインタビュー。恩田さんがバックログスイーパーになるまでの前半に引き続き、後編ではBacklogを使ったタスク管理のコツについて聞いた。誰もが気になるタスク管理の粒度、オンボーディング、チャットとの使い分け、チームワークマネジメントで重要なポイントなどを聞いた。(以下、敬称略 インタビュアー ASCII編集部 大谷イビサ)

デジタルキューブ 恩田淳子さん

「カレーを作る」だけでもタスクの粒度はさまざま

大谷:タスク管理に苦手意識を抱えている人は、タスクをどの程度の粒度で作るのかがわからないということが多いと思うのですが、どうでしょうか?

恩田:タスク管理の粒度って難しいですよ。たとえば、「カレーを作る」というプロジェクトがあったら、人によってタスクの分け方、変わるんですよね。「カレーを作る」という課題で終わらせられる人もいるだろうし、「お米を炊く」で作る人もいる。

大谷:「ルーを作る」という方もいますね。

恩田:すごく忘れっぽいから「タマネギを買う」という人もいます。そもそも「なんのカレーを作るか」を決めなきゃという人もいるはず。

大谷:そこから(笑)。でもPMOって、ある程度プロジェクト管理のお作法があるので、粒度はわかりそうですが、人材開発ってあまり利用例がない気がするんですよ。

恩田:うーん。でも、基本は「完了条件が明確か」と、「人に渡せるほどよい大きさ」かなと思うんです。

だから、「●●を確認する」という課題は遠慮してもらっています。完了条件が明確じゃないので。

大谷:確かに「確認する」はタスクじゃないですね。これってどう書けばいいんですかね。

恩田:この資料を読んでレビューコメントを書くとか、なんらかのアクションと結果ですかね。

タスクって、「いつ」「誰が」「なにをやって」「どうなる」という変化が必ずあるはず。だから、結果がなにで表されるかがクリアになるとタスクになるんじゃないですかね。

大谷:なるほど。変化が起こる粒度というのは1つの判断ですね。

恩田:課題管理って、終わらないと気持ち悪いんですよ。Backlogの課題がずっと残り続けて、期限が延ばされ続けて、いわゆるゾンビタスクになったら、仕事をしている側からすると、気持ち悪いはず。ある程度のタスクを終わらせ、達成感を持って、業務を進めるタスク量が重要なんじゃないかと。

大谷:わかります。課題作る側が、いきなり8合目まで登らないと終わらないタスクに設定するのではなく、きちんと1合目、2合目と進んで達成感を感じてもらう、マイルストーンの考え方かもしれませんね。

正しい使い方をしないと、同じゴールに向かえない

大谷:次にオンボーディングについての質問です。初めてBacklogを使う人にどうやって説明するかを教えてください。

恩田:社内にしろ、社外にしろ、Backlogというツールを使う以前の話として、タスク管理をするという概念が頭に入っているのかが大事だと思っています。だから、「タスクという考え方で業務全体を管理しますよ」という話を新入社員にも、お客さまにもインストールしていました。

大谷:それは「恩田プログラム」みたいなのがあるんですか?

恩田:はい。以前、JBUGに登壇していたサービシンクという会社の代表されている名村(晋治)さんが作ったルールの焼き増しなんですけど、起票ルールや期限日設定などは伝えています。その上で、タスク管理が初めてみたいな人には、序盤は伴走します。「トピックが別れるから、課題も分けておきましょう」とか、「その課題だと完了しづらいので、ここまでで完了にしましょう」とか、「期限日が切れてますよ」とかお伝えします。

大谷:指示を受ける立場の場合、恩田さんが作った課題をこなしていく感じになると思うんですが、新人さんが自ら起票することはあるんでしょうか?

恩田:確かに新入社員の方に「課題は恩田さんが作るものだと思っていました」と言われたことあります(笑)。基本的には、ブレストやコミュニケーションの中で、「それは課題にした方がいいですね。作ってもらっていいですよ」と軽く振るのを続けていく感じですかね。そうやってメッセージを伝えていって、作れない人はあまりいないと思います。

もちろん使い方に慣れていないお客さまもいますが、それに関しては毎回コメントを入れてます。「完了したタスクにコメント入れても気づけないので、新しい課題にした方がいいですよ」とか、「担当を入れないと気づけないので、入れてくださいね」とか。基本は「同じゴールに向かうために、正しい使い方をしていきましょう」と言ってます。

大谷:Backlogについての感想や使い勝手についてはどうですか?

恩田:使いやすいです。うちの会社でわからないという人はいなかったですね。お客さまからも「思ったより使いやすいですね」という感想をいただくこともあります。

大谷:チャットと併用していると伺いましたが、どのように使い分けていますか?

恩田:もともとデジタルキューブは、ブレストレベルはチャットツールで、タスクの進行はBacklogでという思想なので、基本はそれに則っています。とはいえ、ブレストをしながら決まることってあるじゃないですか。だから、なにかが決まったなと思ったら、Backlogに移したり、課題にしてくださいというお願いはしています。

大谷:チャットからBacklogへの落とし所があるんですね。

恩田:中長期の目線を持つという感じですかね。3ヶ月後に見たときに、Backlogにあった方がいいよねというやりとりは入れておきます。

チームワークだからこそBacklogが必要

大谷:恩田さんのすごいのって、社内だけじゃなく、社外でも同じようにバックログスイーパー業務をやっていること。でも、「同じゴールに向かいましょうよ」みたいな社外向けのポジティブな説明をやはり持っているんですね。

恩田:私はお客さまとは同じチームだと思っています。同じゴールに向かうプロジェクトのメンバー。だから多少ずうずうしいけど、お客さまが上で、私たちが下というわけではなく、完全に対等だと思っています。

最初にBacklogの説明をするときに、プロジェクトの進捗に影響が出そうになったら、私の判断で勝手に閉じたり、タスクを変更しますというのは、あらかじめお伝えしています。

大谷:閉じることもあるんですね。

恩田:かなりありますね。ゾンビタスクって結局要らないので、普通のタスクと混ざるとノイズになります。必要なタスクが探せないので、気持ち悪い。本当に必要だったら、また起票してくださいってお願いします。

大谷:当人以外から見ていてわかるんですかね。

恩田:何回か見てたらわかりますね。期限を伸ばしたままズルズルしているとか、炎のアイコンが点いたままズルズルしているとか、突然期限を消すとか。

大谷:闇に葬る気満点じゃないですか(笑)。

恩田:でも、タスクを完了する勇気がないということじゃないですか。だから、「いったん閉じますね」とお話しします。閉じたら閉じたで周りの人がホッとするかもしれないです。生きるのに必要なタスクって優先度が上がってくるはずなんですが、チームで誰もなにも言わないということは、そっと閉じても誰も影響ないはずなんです。

大谷:ああ、胸が痛い(笑)。

私もタスク管理は下手だった

大谷:今回お話を聞いて、Backlogをうまく運用するためには、恩田さんみたいなバックログスイーパーが必要だなとは思うのですが、恩田さんってほかの会社でも作れるんですかね。

恩田:ある程度の資質は必要ですが、やり方とツールを学んでもらえば、作れると思います。うちでいくと、アシスタントに一時期PMOとしてのタスク管理をお願いしたのですが、PMOの仕事をドキュメント化したので、きちんと渡せましたね。

今は各部門にお願いしていますが、最近は持ち回りでバックログスイーパーを担当している部門も出てきました。普段は自分の仕事しか気にしていないですが、ほかの人の仕事を見るという癖ができるので、持ち回りはいいと思います。

大谷:タスク管理は得意という方は、なかなかいないと思うのですが、恩田さんはどうだったんですか?

恩田:私もタスク管理は下手だった自覚があります。前職では「5W1H」がない状態で会議を終わらせるみたいなことが普通にありました。でも「この仕事は誰が、いつまでにやるの?」みたいなことを聞いてくれるメンバーがいて、「なるほど、こういう意識が必要なんだ」と気づいて、自分に根付いた感じがしますね。

そういう自覚があったからこそ、なにをするかを付箋で貼って、管理しました。夏休みにやりたいこと、今年やりたいことリストみたいなやつです。でも、そうするとどうしても完了にならないタスクとかあるんですよ。先ほど話した確認する系とか、毎日やるルーティン系とか、全然チェック付かないんです。そういったタスクをどうやったらチェックが付くかを自分で振り返って、タスク管理力を鍛えたみたいなところはありますね。

大谷:なるほど。恩田さんも鍛えてこうなったんですね。ありがとうございます!

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