本記事はソラコムが提供する「SORACOM公式ブログ」に掲載された「大成建設、施工管理DXへの挑戦 – ソラカメ最新事例」を再編集したものです。
クラウド型カメラサービス「ソラカメ」は、IoTの「目」として様々な現場に置かれることで、防犯カメラとは異なり、離れた現場の映像を確認することで現場の解像度を上げ、巡回業務の移動時間を削減する、現場のオペレーションをラクにするサービスとしてありたいと考えています。
そして今年7月17日に開催したSORACOM Discovery 2024では、セッション「”現場の目”で価値を創る、クラウド型カメラ活用最新事例」を実施しました。ソラカメ活用の最新事例として、大成建設株式会社 建築本部生産技術イノベーション部長 松﨑 重一氏の登壇内容をご紹介します。
30年の現場経験と新たなチャレンジ
入社以来30年間、施工管理の現場で多くのプロジェクトに携わってきました。これまで、埼玉スーパーアリーナや渋谷ヒカリエといった大規模プロジェクトに参加し、直近では新国立競技場のプロジェクトにも関わりました。現在は本社で生産技術イノベーション部長を務めており、社内でのDX(デジタルトランスフォーメーション)推進にも取り組んでいます。
近年、DXの必要性が高まっているものの、現実的にはその進行が思うように進んでいないのが現状です。私たちは、生産側から地道にアプローチを続け、改革を進めています。
先端ICT推進室での取り組み
先端ICT推進室では、各種ロボットの開発やソラカメを活用した展開を担当しています。具体的には、自律搬送ロボット(AGV)や四足歩行ロボットのペイロード、自律清掃型ロボットの開発、そして現場のWi-Fi環境構築(T-BasisX®️)の開発・展開を行っています。特に、自律清掃型ロボットは、ハードウェアとソフトウェアの両方を自社開発し、ソラカメを装備させています。
開発の背景と課題
これらの開発に至った背景には、現場での通信環境に関する課題がありました。2019年からセルラー通信搭載カメラを各作業所に配置していたので、遠隔から現場を確認できるカメラの有用性は理解していました。ただ、導入コストの高さや電波が届かない高層階や地下、地域特性の課題が残り、各作業所でも数台の導入に留まっていました。
そこで、2021年には現場のWi-Fi構築ソリューション「T-BasisX®」をリリースし、クラウドカメラシステムの検討を開始しました。2022年にはソラコムとの協業により、クラウド型カメラサービス「ソラカメ」を活用した建設業向けの新たなソリューションを開発し、昨年のPoC(概念実証)を経て、建設現場での実用化を進めています。
ソラカメ対応カメラは安価ながら、性能は私たちにとって十分でした。また、安価なことはこれまでの経緯からしても大変な魅力でした。ただ管理コンソール、ウェブアプリケーションについては、建設現場での活用のためには改良が必要だと判断し、ソラコムと施工管理に使いやすいものを共同開発しました。
施工管理に使いやすいウェブアプリケーションに加えて、Wi-Fi環境下で安価なクラウドカメラが使えるようになれば、非常に多くのカメラを現場に導入できるだろうという目論見でした。下図にあるように、現場の通信インフラとしてメッシュWi-Fiによるネットワーク「T-Basis X®️」、クラウド型カメラサービス「ソラカメ」、その上に「T-searchXシリーズ Build EYE」があるというコンセプトです。
ソラカメのAPI機能を組み込んだBuild EYE
大量にカメラを導入しても、見たい映像にすぐにアクセスできることが施工管理上では重要です。現場の今を俯瞰できるようにサムネイル一覧の表示を行いました。
映像を見たい担当は、それぞれ見たい映像が異なります。ログインするアカウントに応じて必要な情報だけ表示する、お気に入り登録機能も入れました。カメラ名称やエリア名、タグといった様々な軸で検索できる機能も搭載しています。自分が見たいライブ映像、ストリーミング視聴も同時に4台まで、ずっと監視できるような選択が可能で、カメラの向きも遠隔から調整できます。
ソラカメは安価でありながらAPIを標準提供しています。静止画取得、録画再生、ライブ映像再生、ATOM Cam Swingの首振り制御まで全てAPIがあるため、Build EYEに簡易に組み込むことが可能でした。
現場では「ながら作業」になるため、例えば電源切断時などには必要な通知を受け取れるプッシュ通知も実装しました。長期に渡るプロジェクトでも事故や盗難といったインシデントを撮り逃さないように、録画保存機能の拡張性も持たせています。
期待される効果
新たなソリューション「Build EYE」では、現場での遠隔管理が可能になることで、施工管理業務の効率化が期待されています。特に、高層階など移動の負担の大きな現場確認やインシデント発生時の記録・証明、不正の抑止といった用途に効果が見込まれています。また、導入コストの大幅な削減により、小規模な現場など幅広い現場での普及が可能となります。外部センサーと連携させ、情報を組み合わせることや画像分析AIを活用した新サービス開発の促進も期待されます。
今後の課題と展望
建設現場は作業が進めば状況が刻々と変わります。この変化に対応するためには、さらに手法の構築が必要です。現在、現場での運用を検討しており、具体的な展開手法は今秋に公開する予定です。また、UIの改善や維持メンテナンス体制の構築、各種センサーやAIとの連携も課題として取り組んでいます。
私たちは、DXを通じて建設現場の管理における生産性向上と省人化を目指していますが、そのためには生産体制そのものの変革が求められるかもしれません。建設業界全体のデジタル化が進んでいない現状を打破し、未来への準備を進めるためにも、技術と現場に精通した人材育成とソラコムのような総合力のある企業との協力体制を強化していきます。
今後も、建設業界のデジタル化と現場の効率化に向けた取り組みを続け、より良い未来のための技術革新に挑戦していきます。
最後に
SORACOM Discovery2024の資料は、カンファレンスのサイトで公開されています。他のセッションの資料もぜひご覧ください。
― ソラコム 藤林 (miyuki)
投稿 大成建設、施工管理DXへの挑戦 – ソラカメ最新事例 は SORACOM公式ブログ に最初に表示されました。
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