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JBUG東京#23開催、筆者も“初参加組”として現場で考えてみましたレポート

Backlogコミュニティ・JBUGは悩んでいるユーザーに優しかった

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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内/外の組織が複雑にからみ合うプロジェクトの「運用ルール」は?

 タスク/プロジェクト管理は、ときには組織の内外をまたいだ複雑なかたちで発生することもあります。そんな場合の「運用ルール」についてのノウハウ共有もありました。

 経済産業省 大臣官房 DX室の小林崇文さんは、同省のオンライン行政手続サービス「Gビズフォーム」の開発や運用におけるBacklogの活用方法について紹介しました。

経済産業省 大臣官房 デジタルトランスフォーメーション室(DX室)の小林崇文さん

 Gビズフォームの開発/運用体制は大きく、全体を統轄する「CoE」と「アプリ開発チーム」に分かれており、それぞれ省内の担当部局と省外の事業者が関わります(省外の事業者も1社ではありません)。そのやり取りにBacklogを活用することで、CoEとアプリ開発チームのすべてのステークホルダーを集約したプロジェクト管理が可能になっています。

CoE(DX室)、アプリ開発チーム(所管原課=各担当部局)と、それぞれが委託する外部事業者が、Backlogで「ひとつに集まれる」

 ただし、多様なステークホルダーがいるために、各プロジェクトに対するアクセス権限設定が複雑になること、プロジェクトごとにフェーズ管理ややり取りの手法にばらつきが出かねないこと、といった問題が発生します。小林さんらDX室が担うCoEは、複数のプロジェクトに横断的に関わるため、各プロジェクトがそれぞれ異なる管理手法をとってしまうと、混乱します。

 ガバナンスを効かせるために、小林さんらは「プロジェクトへの権限付与は必ずチーム単位で行う」「プロジェクトの立ち上げ(作成)時に共通の初期セットアップを行う」といったルールを定めました。プロジェクトのセットアップについては、Power AutomateとBacklogのAPIを使って共通のカテゴリ/種別/課題を自動作成することで、設定漏れをなくす工夫もしています。

プロジェクトごとのばらつきを防ぐために、共通の初期セットアップを行っている

繰り返し発生する作業なので、Power AutomateとBacklog APIで自動化も

 ちなみにGビズフォームの運用においては、ほかの用途でもPower Automateによる自動化を取り入れているそうです。小林さんは「システムエラーを検知したら自動的にBacklogの課題を起票する」「Gitリポジトリで承認された開発ドキュメントをSharePointサイトで公開する」といった自動化に取り組んでいることを紹介しました。

Power Automateによる課題の自動起票

悩んでいるのはみんな同じ! 「登壇者が登壇者に相談する」場面も

 JBUGの「敷居の低さ」に話を戻しましょう。

 筆者がJBUGで「敷居の低さ」を感じたもうひとつの理由は、参加してみて「悩んでいるのはみんな同じ」だと分かったからです。周りが「できる人だらけ」だと、初心者としてはちょっと居心地が悪い。その反対に、周りもみんな悩んでいるなら、質問も気軽にできます。

 後半で行われたパネルディスカッション「公開お悩み相談」は、参加者から寄せられた質問に、4人のBacklog管理者が答えていくというものでした。

 4人の皆さんそれぞれの職務、利用目的はまちまちです。「営業事務への依頼管理、社員研修プロジェクトの管理」(トレケノート 西さん)、「システム開発プロジェクトの管理」(経産省 小林さん)、「人材採用の応募管理、人事評価の目標管理」(デジタルキューブ 恩田さん)、「Backlogを導入する顧客の支援施策管理、セミナー運営やマニュアル作成の管理」(ヌーラボ 原さん)といった具合で、このあたりは“Backlogっぽい”と言えるのかもしれません。

(左から)「公開お悩み相談」に答えた、トレケノートの西貞臣さん、経済産業省の小林崇文さん、デジタルキューブの恩田淳子さん、ヌーラボの原彩香さん

 「Backlogを使ってくれない部署や人への利活用促進のコツは?」という質問については、皆さん「まずは実際に触ってもらい、メリットを体感してもらう機会を作ることが大切」という意見で一致しました。具体的には「年1回の全社合宿では、実際にBacklogで課題を作り、プロジェクト管理を行う体験をしてもらう」(デジタルキューブ 恩田さん)、「スマホアプリでBacklogをこまめにチェックし、レスポンスを早くする。『メールなどほかの手段よりも早く物事が進む』ことを体感してもらう」(経済産業省 小林さん)といった取り組みをされているそうです。

 さらにヌーラボ 原さんは、プロジェクト管理と呼ぶほどではない小さな案件、たとえば“宴会の準備作業”などでも、あえてBacklogで登録管理してみるのが良いと語ります。恩田さんは、デジタルキューブでは新入社員の1on1ミーティングの準備作業から業務日報まで、幅広くBacklogを使っていると紹介しました。

 もうひとつ、「『起票』のハードル(心理的なハードル)を下げるために取り組んでいることは?」という質問に対して、複数の登壇者が挙げたのが「テンプレートをしっかりと活用すること」でした。慣れていない初心者でも起票しやすいように、テンプレートには記述すべき項目や記述サンプルなどを盛り込んでおくことで、ハードルがぐんと下がると言います。「わからない場合」の対応方法を書き込んでおくのもよいそうです。

 「入社したばかりだと、わからないことがあっても『こんなこと聞いていいのかな』と遠慮しがちです。わたしが前職で携わったプロジェクトでは、テンプレートに『書き方がわからなければ○○にメンションして質問すること』とまで書き込まれていました。なので、自分で起票したあと、Backlog上でメンションを飛ばして『これで問題ないでしょうか』と聞くことができました」(ヌーラボ 原さん)

 面白かったのが、登壇者の側からも“お悩み相談”と言いますか、質問があったことです。

 「複数のプロジェクトに参加している担当者が、各タスクの進行状況をうまく管理/把握する方法は」という会場からの質問に対して、登壇者である経済産業省 小林さんも「プロジェクトを横断的に検索する手段があれば、わたしもぜひ教えていただきたいです!」と乗っかりました。こういうイベントでは“登壇者=教える側、受講者=教わる側”という垣根が出来がちですが、そういうのもないのがいいなあと感じました。

 ちなみにこの質問への回答ですが、個人のダッシュボードやガントチャートで進捗が確認できるほか、画面上部メニューの「…」をクリックすると表示される「課題の検索」を使うと、プロジェクトをまたいだ検索が実行できます。検索後に「検索条件を保存」することもできるので活用してほしい、とのことでした。

「課題の検索」機能はプロジェクトをまたいで検索が可能。その検索条件を保存しておけば、次回からはより簡単になる

* * *

 勉強会のあとは登壇者も参加者も入り混じっての懇親会タイムとなり、飲み物を片手にそこかしこでBacklogユーザーどうしの“お悩み相談”やアドバイスが繰り広げられていました。同じ悩みを持つ者どうしだと、きっと話もはずみますよね。

最後に記念撮影。手でBacklogの「b」の字を作るのがお約束のようですよ

 なお、司会のマコリーヌさんからは、JBUGの公式情報発信サイトが6月にオープンしたこと、全国のJBUGが一堂に会する年次イベント「Backlog World 2024」が12月14日にパシフィコ横浜で開催されることなどがアナウンスされました。JBUG東京としては、10月4日に次回(#24)の「Web制作会社向け Backlog活用ナレッジ共有会 ~課題設定・管理編~」を開催予定です。

 以上、「JBUGは敷居が低いぞ!」の現地レポートでした。筆者自身、Backlog活用で具体的なノウハウを得ることができたので、また(特に敷居が低そうな回を狙って!)参加したいと思います。Backlogを使っている、あるいは興味がある皆さまもぜひどうぞ!

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