JBUG東京#23開催、筆者も“初参加組”として現場で考えてみましたレポート
Backlogコミュニティ・JBUGは悩んでいるユーザーに優しかった
2024年8月9日の夜、プロジェクト管理ツールBacklogのユーザーコミュニティであるJBUG(ジェイバグ、Japan Backlog User Group)東京地区の勉強会、JBUG東京#23が、東京都港区のFIXER本社で開催されました。
会場には70~80名ほどの参加者(※筆者調べ)が集まりましたが、司会を務めたJBUGコミュニティマネージャーの藤本眞子さんによると、今回は「JBUGに初めて参加する」参加者が63%を占めたとのこと。4月に開催された前回のJBUGレポート記事でも「3分の2が初参加」となっています。
すでに(東京だけで)20回以上開催されているコミュニティイベントなのに、「初参加」が6割超を占めるというのは、それだけコミュニティが拡大し続けているという意味であり、なかなかすごいことなのではないでしょうか? 筆者自身も“初参加組”として、そんなことを考えながら聴講していました。
勉強会が終わり、あらためて振り返って見ると、初めての参加者にも「敷居が低い」「優しい」と感じられる理由がいくつかあると思いました。この記事ではその理由を、イベント内容のレポートと合わせてお届けしたいとます。
「ツールの話」ではない、「人間と組織、ルールの話」なのだ
まず気づいたのは、Backlogという「ツールそのものの話」が少ないことです。
そもそもBacklogというツール自体が「誰でも使える(ITエンジニアじゃなくても使える)」ことを志向したプロジェクト管理ツールです。使いこなすために“高度な知見”が求められるわけではないので、自然とそういう内容は少なくなります。そのため、筆者のような初心者ユーザーでも取り残されることなく、話題にもスムーズについていけました。もっともこれは、この夜のテーマが「チームで活用するためのBacklog運用ルール」だったことも関係するのかもしれませんが。
ツールそのものの話に代わって多く議論に上ったのが、タスク/プロジェクト管理をスムーズに運用していくための「人間や組織」、さらに「ルール」の話です。
たとえば、デジタルキューブの恩田淳子さんは「タスク管理の壁」というテーマで、およそ15年前からBacklogを利用してきた同社の知見に基づき、組織内でのタスク管理の浸透と定着のノウハウを話しました。
デジタルキューブでは、全国に住む約30名の社員がフルリモートワークで働いており、全部門で発生するあらゆるタスク/プロジェクトはクラウド上のBacklogで管理しています。社外の顧客やパートナーとの間でもBacklogを活用してやり取りしており、社内では「Backlogにない仕事は仕事として存在しない」とまで言われているそうです。
組織がタスク管理ツールを導入しても、「○○さんは何度言ってもタスク管理をしてくれない」「○○部はBacklogを使ってくれない」といった問題にはばまれ、浸透や定着が進まない問題はよくあります。これについて恩田さんは「特定個人の問題ではなく組織の問題ととらえるべき」と指摘したうえで、実際にはどのフェーズの“壁”で止まってしまっているかによって、取るべき対応も違うことを説明しました。
たとえば、そもそも「タスク管理を理解していない」場合には「その人や組織にどんなメリットがあるのか、なぜ必要かを伝える」こと、また「プロジェクト完了まで進捗管理ができない」場合には「お互いに進捗管理をする仕組みを作る」「行動評価項目にする」といった具合です。
ヌーラボから初登壇した原田泰裕さんも、多くの組織が抱えるタスク管理の課題は「タスクが起票できない」「タスクの粒度が揃わない」「優先順位が決められない」といった、人や組織、ルールの問題だと指摘します。
そうした問題を解決するために、原田さんは「バックログスイーパー」という役割のメンバーを置くことを提案しました。「組織やチームのタスクを常にキレイにして、仕事を前に進めるサポート役」と定義されるバックログスイーパーは、起票漏れのタスクがないか、起票されたタスクが遅延していないか、タスクがきちんと完了しているかを監視し、組織やチームのパフォーマンスを最大化する役割を担います。
原田さんは「タスク管理は、実は特殊な能力を要求される仕事」だと説明したうえで、「バックログスイーパーが評価される時代にしましょう」と呼びかけました。
「組織の課題」という観点では、たとえば予算獲得の課題などもあります。SaaSツールに関して、これから利用するユーザー数が読めない、だからいくら予算がかかるかわからない、といった課題はありがちなものです。
この夜の会場を提供したFIXERの佐藤雅也さんは、FIXERが展開する自治体向け情報プラットフォームサービス「cloud.configスマートシティ」において、システムにBacklogを組み込んで活用している事例を紹介しました。
このサービスは、LINEを使って自治体と住民を結ぶ情報プラットフォームを提供します。導入した四日市市では、市民からの「道路の損傷」「公園遊具の損傷」などの報告をLINEで受け付けるサービスを行っています。
このとき、LINEで投稿された市民からの報告(場所の情報や現場写真も含む)は、自動転送メールを介してBacklogの「課題」として自動登録され、タスク管理の対象となります。このBacklogを共有し、市の担当者が社外の事業者(たとえば道路の修繕工事の事業者など)を指定することで、情報連携や進捗管理がスムーズに行えるというわけです。
佐藤さんは、Backlogのメリットとして「利用者が増えても料金が一定であり予算化しやすいこと」「市庁内だけでなく、外部の事業者とも情報共有できること」「インタフェースがやさしく、誰でも使いやすいこと」などを挙げました。
ちなみにFIXERでは、技術コミュニティなどのイベントに対して、この会場を無料貸し出ししています。佐藤さんは「FIXER Webサイトの問い合わせフォームから気軽に連絡してほしい」とアピールしました。
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