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AIは就活の「無駄」も減らしてくれる
高橋 先ほどAIを使いこなすことで「無駄」を省けるようになる、というお話がありましたが、まさに手間をかける必要がなくなるのがAIの利点だと私も思います。
就活の学生たちにも、「エントリーシートの下準備の部分ぐらいはAIに考えてもらって、それを自分の言葉で書き直すと使えるものになるよ」とアドバイスしています。
最近の学生は本当に忙しいので「下準備段階でうまく手伝ってくれるアシスタント」としてAIを使いこなせればプラスですし、むしろ企業が求める人材とも合致しているのでは。
回答を求めるのではなく、完成品を作るための下準備にこそ有用なのだということを学生には知ってもらいたいですね。
ITジャーナリスト/成蹊大学客員教授 高橋暁子氏
SNSや情報リテラシー教育が専門。スマホやインターネット関連の事件やトラブル、ICT教育事情に詳しい。東京学芸大学卒業。東京都で小学校教諭などを経て独立、現在に至る。書籍・雑誌・Webメディアなどの記事の執筆、企業などのコンサルタント、講演、セミナー、講義、委員などを手がける。
『ソーシャルメディア中毒』(幻冬舎)、『できるゼロからはじめるLINE超入門 iPhone&Android対応』(インプレス)など著作は20冊以上。
SNSをはじめとする10代のネット利用実態とトラブル、スマホ&インターネット関連事件などをテーマとして、NHK『あさイチ』、NHK『クローズアップ 現代+』、NHK『所さん!事件ですよ』ほか、テレビ・雑誌・新聞・ラジオなどのメディア出演多数。
全国の小中高校大学、自治体、団体、企業などを対象に毎年50回ほどの講演・セミナーを実施している。令和2年より「青少年を取り巻く有害環境対策の推進」技術審査委員会技術審査専門員(文部科学省より委託)など、省庁からの依頼も多い。
現在せきゅラボにて、「親なら知っておきたい人気スマホアプリの裏側と安全設定」を連載中。
栗山 むしろ、採用担当者がAIのエントリーシートに感心して採用を決めてしまうかもしれませんね(笑)
高橋 最近では採用にもAIが使われていますから、AIがAIを判定するような状態ですね。
栗山 「こういう人材が欲しい」と指定すると、AIがその条件に沿ってエントリーシートを選んでくれると聞きます。
高橋 しかもだいぶ(チョイスが)良いとか。最終的に人とのダブルチェックをマストにすれば、そこまでマズい選び方はしないのでは。実際、企業も人手不足ですから採用の手間をショートカットできます。
ネットのコメントについてもポジティブかネガティブかを一瞬で判断することで、これまで8~9時間かかっていた作業を数分で完了できるという話題もありました。AIを適切に使うことで1日分が丸々浮くわけですから、今後は多方面で「それは人がやらなくても良いよね」という作業が見えてくるでしょう。
栗山 本当におっしゃる通りで、「仕事を取られる」というよりは、今後の労働人口減少をAIが担ってくれると考えたほうが良いでしょう。極端ですが、たとえ人口が半分になったとしても、残りの半分を機械やAIが補ってくれれば十分生産性は高く維持できるだろうと思います。
私、日本には期待しているんです。AI技術の進展がちょっとは日本で進んでくれるとうれしいのですが……。
高橋 現状、英語圏が圧倒的ですからね。一方でOpenAIさんは日本法人を立ち上げて注力されるとのこと。非常に期待しています。
栗山 為替や国際情勢の変化もあるとは思いますが、自分たち側の国に注力しようとしているようにも見えます。
高橋 だとすれば、アジアでは日本が真っ先に挙がりますね。
栗山 (アジアでは)日本が一番安全だと判断して投資を続けているのでしょう。こうした状況は若手、それこそ新卒の方々にはチャンスと言って良いと思いますので、期待を持って進んでほしいです。
マカフィー株式会社 代表取締役社長 栗山憲子氏
慶応義塾大学修士課程(MBA)卒業後、1991年カナダ大手IT企業ノーテルネットワークス(旧ノーザンテレコム)入社。以後、マーケティング・営業・技術・オペレーション・戦略企画部など、多岐にわたる部門の責任者を歴任。一方、BPR日本統括として本社直轄組織改革Projectに参画、全社Diversity活動として人材育成に携わるなど、幅広い分野を経験の後、経営企画・管理本部統括として、日本初の女性取締役就任、日本経営陣として経営参画。
その後、Dell株式会社にて日本・韓国のソリューションビジネス部門立ち上げ、トレンドマイクロ株式会社本社経営管理統括部門責任者を経て、20年以上のITキャリアからヘルスケア業界に転身。IQVIA株式会社(旧クインタイルズ・トランスナショナル・ジャパン)にて、Global Business Operation部門を日本統括として立ち上げ、組織・責任範囲をAsia Pacificにも拡大し、日本・アジアのビジネス成長・組織拡充に寄与。
2019年、マカフィー株式会社常務執行役員として再びIT業界に戻り、日本におけるセキュリティービジネスの成長をISP/Teleco、PC OEM、Retailビジネスの全エリアにて支援実現。2020年、Global Channel Marketing統括として本社組織に参画、その後Japan/APAC主要パートナー統括を務め、2022年9月よりマカフィー日本総責任者として現職に至る。