第1回 連載:「おしゃべりな機械」たちの世界へようこそ!

身の回りにあふれる「おしゃべりな機械」とは?

kinneko イラスト● ella why 編集● ASCII

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 今回から始まるこの連載では、「おしゃべりな機械」たちの可能性と、その恩恵を最大限に享受するための知識を提供していきます。皆さんもぜひ、この連載を通じて、未来の技術がどのように日常生活を変え、より豊かな生活をもたらすのか、そのためにはどのような課題があるのかを一緒に探っていきましょう。

 先日、早朝に金沢駅へ車で向かっていました。とある交差点にあるお店で、周囲はだいぶ明るくなっているのに、お店の看板照明が点けっぱなしになっていました。おそらく、センサーの不具合で電灯が点灯しっぱなしになってしまっているのでしょう。

 こういう照明機器は、外の明るさをセンサーで調べて、明るくなったら電源を切り、暗くなると自動的に電源を入れる装置がついています。「明るくなったな。そろそろ電源を切ろうか」とか、「暗くなったので、電源つけないといけないな」と、まるで独り言をつぶやくかのように動作しています。単純な判断で自律的に動いている機械です。

 このような機械たちも、故障してしまってはその自律性が失われてしまい、人間の期待通りに動かなくなります。お店の方が出社すると、「あれ? 明るいのに電気がついているな」と気がついて修理を依頼することになるのでしょう。もし故障に気がつかないと、昼間にも照明が点いた状態で放置されることになって、無駄に電気代がかかるとともに、照明器具の寿命も短くなってしまいます。

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 このような機械の「つぶやき」を、インターネットを通して聞くことができたらどうでしょうか? いつもと違った状態を自動的に検知して、持ち主に「なにか調子が悪いようです」と報告してくれると便利です。

 そのような新しい「おしゃべりな機械」たちは、すでに生活の中にも入り込んできています。

 ロボット掃除機は、何かに乗り上げてしまって身動きがとれなくなると、所有者のスマートフォンに「助けて!」と通知を送ってきます。

 玄関ドアに取り付けられたスマートロックは、持ち主のスマートフォンが近づくのを検知して、「お帰りなさい!」とドアの鍵を開けてくれます。

 多くの人々が利用しているスマートウォッチも、持ち主の心拍数や歩数、睡眠状態などをモニタリングし、クラウド上に情報を蓄積して異常があるときには通知を送ります。例えば、心拍数が異常に高くなったり、睡眠の質が低下すると、「だいじょうぶですか?」と健康管理のアラートを送ってくれます。

 お天気情報を表示するスマートパネルは、持ち主の住まいの近くや職場を登録しておくことで、その場所のお天気情報を取得して、出かける時に「今日はたぶん傘が必要な天気ですよ!」と知らせてくれます。

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 普通の家庭の中だけでなく、オフィスやお店、工場や建設現場などにも、インターネットにつながった「おしゃべりな機械」たちがどんどん増えてきています。

 例えば、多くの建設現場では、騒音や粉塵を人手で定期的に測定しています。しかし、それでは人手とコストがかかる上、刻々と変わる現場の環境を正確に把握することが難しいです。今では、騒音や粉塵をセンサーで自動的に監視し、そのデータをインターネットを通じてクラウドに送信することで、常に状況をモニタリングできるようになっています。異常が発生した場合には、すぐに工事の監督者に通知が届く仕組みが整っています。

 また、お店の厨房では、営業中は換気扇を常に最大で回していることが多いです。これでは電気代がかさみます。今では、センサーが厨房の室温を監視して、調理が少ない時にはファンの回転を自動的に遅くすることで、効率よく換気を行い、電気代を節約しています。

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 静かな機械たちは、どのような仕組みで「おしゃべりな機械」に変わってきているのでしょうか?

 これには、センサー、コンピューター、通信技術、クラウドコンピューティング、そしてAI(人工知能)を組み合わせた仕組みが必要です。センサーは、機械の状態や周囲の環境を常に監視し、その情報をコンピューターに送ります。コンピューターは、受け取った情報を分析し、必要な対応を判断します。通信技術を使って、その情報を持ち主のスマートフォンや管理システムに送信します。クラウドコンピューティングによってデータが蓄積・分析され、将来の改善に役立てられます。さらに、蓄積されたデータをAIが分析することで、人間では気がつかないような異常の前兆を把握し、事前に対策を講じることができるようになります。

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 この連載では、「おしゃべりな機械」たちを実現するための技術的な背景や仕組みの説明し、実際の導入事例を中心に「おしゃべりな機械」たちがどのような利便性とメリットをもたらすかといったこと、一方ではセキュリティとプライバシーの問題点についても触れていきます。また、簡単な方法で自分で「おしゃべりな機械」を組み立てる方法も紹介します。これにより、皆さんが「おしゃべりな機械」たちをより深く理解し、生活の中で活用できるようになることを目指しています。

 さらに、これからの未来を見据えて、どのような新しい「おしゃべりな機械」が登場するのか、技術の進歩によってどのような生活が実現するのかについても考察します。皆さんも一緒に、「おしゃべりな機械」たちが、どのように私たちの生活を変えていくのかを探っていきましょう。

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