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Ryzen AI 300に搭載された「RDNA 3.5」「XDNA 2」がAI処理を高速化 AIが常時動く未来はそう遠くない! AMD Tech Dayレポート

2024年07月18日 13時00分更新

文● 加藤勝明(KTU) 編集●北村/ASCII

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動かなければ意味がない

 Ryzen AI 300シリーズの肝は言うまでもなくXDNA 2ベースのNPUだ。しかし動かなくては意味がない。筆者はこれまでRyzen 8000GシリーズのNPUがなんとか使えないかトライしてみたが、マトモにNPUを使ってくれるアプリはなかった(8000Gシリーズ発売時の話なので今では違っているかもしれない)。唯一Ryzenを搭載したノートPCでWindows Studio Effect(Webカメラの背景をボカすやつ)がNPUを使うことを確認できただけだ。

 まずはAMDが“こんなことができる(予定です)”というデモの紹介から始めたい。今回もStable Diffusionに関するデモや言及はたびたびあったが、筆者がおもしろいと感じたのはRAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)のデモだ。

 いわゆるAIが検索を手伝ってくれるというものだが、最初の状態では情報のインデックスが足らないため平気で嘘の情報が出る。ところがYouTubeのURLを教えると、その動画の内容を学習してインデックスを構築する。同じ質問をすれば学習を元に正しい答えを返すというものだ。

Ryzen AI 300シリーズでRAGを動かした時のデモ。このAIはAMDのXDNA 2を知らないので「AMDの新しいNPUアーキテクチャーの名前はなに?」と聞かれた場合、「RDNA」と嘘を返してしまう

知らないならコレを見て勉強しろ! とばかりにYouTubeで解説している動画のURLをAIに教え、インデックスを作成するよう指示すると……

先ほどと同じ質問をすると、キチンと正解(XDNA 2)を返す。さらにXDNA 2の特徴について質問をすると、Block FP16をサポートすることまで答えてくれる。AMDはRyzen AI 300シリーズ搭載ノートに、まずこのアプリをバンドルすべきではないのか……?

 また、ノートPCの画面にスタイラスでざっくり描いた絵をAIがリファインする(image-to-image)デモも行なわれた。登壇者がノートPCの画面に描き、さあ……となったところで動作の模様がPowerPoint出る(つまり実際に手元の機材で動いていない)……という一幕もあった。

General Sessionで登壇するVPのJason Banta氏。Ryzen AI搭載ノートPCにスタイラスでラフ絵を描き、これがAIでリファインされる! と言い始めたが……

次の瞬間「こちらをご覧あれ」とばかりに手書きのラフ絵をゴッホ風にAIが処理する「動画」をデモ。現時点においてRyzen AIのNPUはちゃんと動くとは言い難いようだ

 ただTech Day会場に設けられた展示スペースでは、NPUを使って画像生成が動いているマシンもあった。聞けばTech Dayの直前に仕上がったビルドを使っているのだという。

 Ryzen AI 300シリーズは素晴らしいハードだが、まだ世の中がNPUを使った処理に適応してはいない。もちろん、RDNA 3.5の内蔵GPUを使って処理はできるので完全に失望させられるわけではないが、まだまだAMDはがんばる必要があるだろう。

AIのための統一されたソフトウェアスタック「Unified ONNX Execution Providers」を利用することにより、AIの処理がCPU/ GPU/ NPUのいずれであっても動かせるようになる

 最後に、Ryzen AI 300シリーズを搭載したPCも少し紹介しておきたい。

ASUS「Zenbook S16」。会場内で唯一NPU上で動作する「SDXL-Turbo」が試せたデモ機。Ryzen AI 9 HX 370搭載

適当なプロンプトで試してみたところ、画像を生成させた次の瞬間、タスクマネージャー上でNPUがほぼフルロードに。生成時間は3秒程度だった

MSI「Stealth A16」。Ryzen AI 9 HX 370を搭載。会場ではWebカメラで撮影した自画像を「Amuse」で加工するのが人気だった

Stealth A16上で動いていたAmuseは残念ながらまだ内蔵GPU上でしか動かないようだった。元画像の男性をサイボーグ化しようとおもったら、性別も変わってしまった……

あとはベンチマーク祭りが待っている

 以上でAMD Tech Dayのレポートは終了だ。技術的な視点ではXDNA 2の話は興味深く、Ryzen AIのNPUが(Windows Studio Effect以外で)ちゃんと動いているところを見られたのはなによりホッとした。AMDは2025年の第1四半期まで四半期ごとに「Ryzen AI Software」を強化していくとも言っていた。Ryzen AI 300シリーズを搭載したノートPCは遠からず店頭に並ぶはずだが、AI関連は気長に待つのが吉だろう。

 だが我々自作マニアにとって気になるのは北米で7月31日発売となるRyzen 9000シリーズだ。Zen 5のClassic Complexだけで構成されたCPUが従来のRyzenに対しどの程度性能で上回るのか? 新しいCurve Shaperがどこまで使えるのか? 興味はつきない。国内販売日ならびに予想価格はまだ発表されていないが、こちらも気長に待ちたい。

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