連載:今週の「ざっくり知っておきたいIT業界データ」 第141回
IT市場トレンドやユーザー動向を「3行まとめ」で理解する 6月29日~7月5日
ランサム身代金対応を明確にルール化している企業は22%、「スマホ決済を日常的に利用」半数超え、企業のダウンタイム損害額試算、ほか
2024年07月08日 08時00分更新
本連載「ざっくり知っておきたいIT業界データ」では、過去1週間に調査会社などから発表されたIT市場予測やユーザー動向などのデータを、それぞれ3行にまとめてお伝えします。
今回(2024年6月29日~7月5日)は、国内企業のランサムウェア攻撃への備え(対策)の実態、生成AIの業務利用やセキュリティに対する意識、産業デジタルエンジニアリング市場、予期せぬダウンタイムで発生する直接/間接の損害額試算、企業向けネットワーク機器市場の動向予測についてのデータを紹介します。
[セキュリティ]ランサムウェア対策、身代金要求への対応で明確なルールがある企業は22%(ガートナージャパン、7月1日)
・ランサムウェア攻撃への備え「バックアップからの復旧体制」(36%)が最多
・身代金要求への対応をルール化している企業は22%にとどまる
・「状況を踏まえて判断」など、被害発生後に考えるとした企業が57.3%
国内組織(従業員500人以上)のセキュリティリーダーを対象に実施した調査より(調査実施は2024年3月)。ランサムウェア攻撃への備えとして最多だったのは「バックアップからの復旧体制」だが、その割合は36%。また「感染時の対応マニュアル化」も33.5%と、いずれも4割に満たなかった。また身代金要求への対応について、あらかじめ「支払わない方針でルール化」している組織は22.9%にとどまる。「状況を踏まえて判断する方針でルール化」26.4%など、被害発生後に考える姿勢の企業が過半数を占めている。
[AI][セキュリティ]生成AIの業務利用は16%、セキュリティは60%が「脅威」(IPA/情報処理推進機構、7月4日)
・生成AIを「業務で利用/許可している」16%、「予定あり」を合わせると22%
・AIのセキュリティ脅威については、60%が「重大な脅威/やや脅威」と回答
・課題は「プロンプト作成スキル」「悪意の生成AIコンテンツを含む詐欺攻撃」など
事前調査4941人、本調査1000人(AIを「業務で利用している/許可している」とした回答者)を対象に、AIの業務利用の浸透度合いやセキュリティ上の脅威などを調査した(2024年3月に実施)。生成AIを「業務で利用している/許可している」は16.2%、「予定あり」は6.3%、「していない」は77.4%だった。また、AIのセキュリティについては60.4%が「重大な脅威/やや脅威」と回答した。AI生成コンテンツの利用/評価/普及における課題としては、「悪意の生成AIコンテンツを含む詐欺攻撃による金銭被害・情報流出」(63.8%)、「プロンプト作成スキル向上」(61.5%)などが上位に挙がっている。
業務でのAI利用を「許可」している企業の割合は、「予定あり」を合わせても22.5%とまだ多くはない(出典:IPA)
導入率の高いサービス(1位「チャット/質問回答」、2位「翻訳」)の業種別利用状況(出典:IPA)
生成AIのセキュリティについては、60.4%が重大/やや脅威と回答、セキュリティ対策の重要性については74~75%が重要/やや重要と回答している(出典:IPA)
[DX][OT]国内産業デジタルエンジニアリング市場は2023年2.2兆円、2028年までCAGR13%で成長(IDC Japan、7月4日)
・デジタルエンジニアリング(産業エンジニアリング領域のDX)は2023年、2兆2952億円
・2023年から2028年まで年間平均成長率13%で成長、2028年には4兆2271億円を予測
・成長要因はICT領域のPE(製品の企画設計開発)における製品設計開発力向上など
産業エンジニアリング領域におけるDXを「デジタルエンジニアリング」と定義し、デジタルエンジニアリング向けの「ICT」と「産業領域(非ICT)」それぞれの市場規模を予測した初めての調査。対象プロセスとしては、プロダクトエンジニアリング(製品の企画設計開発、PE)とOT(物理システムや設備を動かすための制御運用技術)がある。2023年の国内同市場は2兆2952億円規模で、2028年まで年間平均成長率(CAGR)13%で成長し、4兆2271億円に達すると予測されている。成長要因としては、ICT領域のPEにおける製品設計/開発力の向上、製品開発工数短縮のためのデータ管理/データ連携、OTにおける現場作業の品質向上や業務自動化などが挙げられている。
[セキュリティ]「ダウンタイムの隠れたコスト」に注意、1回のインシデントで株価は最大9%下落(Splunk、7月1日)
・Global 2000企業のダウンタイムコストは総額年4000億ドルと推計
・ダウンタイムの原因の56%がセキュリティインシデント(フィッシング攻撃など)
・ダウンタイムにより年間4900万ドルの収益損失、その回復には75日が必要と試算
想定外で発生するダウンタイムの「直接的なコスト」と「隠れたコスト」をテーマとしたグローバル調査レポート「ダウンタイムの隠れたコスト(The Hidden Costs of Downtime)」より。直接的なコストは測定可能なコスト(収益の損失、規制違反の罰金など)、間接的なコストは影響度の測定が難しいもの(株主価値の低下など)を指す。Global 2000企業をモデルに試算したところ、ダウンタイムの直接的な損失として、年間4800万ドルの収益の損失が見込まれ、その回復には75日かかることがわかった。なお第2位は規制違反の罰金で年間平均2200万ドル、第3位はSLA違反金の1600万ドル。間接的なコストとして、1回のダウンタイムで株価が最大9%低下し、その回復に79日かかると見積もっている。
[ネットワーク]国内の企業向けネットワーク機器市場は2023年3633億円、前年比9%増(IDC Japan、7月2日)
・国内の企業向けネットワーク機器市場、2023年は前年比9%増、3633億2300万円に
・イーサネットスイッチ市場はプラス成長、ルーター市場はマイナス成長
・Wi-Fi 7は対応製品が広がる2025~2026年に浸透が進むと予測
国内の企業向けネットワーク機器(イーサネットスイッチ/ルーター/無線LAN機器)市場は、2023年、前年比9.2%増の3633億2300万円(支出額ベース)となった。製品分野別では、イーサネットスイッチ市場が拡大した一方、ルーター市場は縮減した。イーサネットスイッチでは、リフレッシュ需要や価格改定などの市場要因があった企業内LAN向けが特に好調だった。2023~2028年のCAGRは、イーサネットスイッチ市場は1.2%、企業向け無線LAN機器市場は2.3%、市場全体では0.9%と予測している。
[スマホ][生活]20・30代は「財布よりスマホ」、スマホ決済の利用率は88%に(ビッグローブ、7月4日)
・20代~60代の52%が「日常的にスマホ決済を利用」
・20代と30代は、外出時に忘れたら困るのは「財布よりもスマホ」(88%)
・データ通信量を気にしながらスマホを利用している割合は39%
20代~60代の男女1000人に、スマートフォン(スマホ)の利用状況を聞いた。「スマホ決済を日常的に利用している」人は52.5%で、「利用経験がある」人も加えると77.4%に達する。日常的に利用している人を世代別に見ると、40代が最多の59%、60代も45%いた。外出時にスマホを忘れたら「非常に困る/困る」が85.4%。20代と30代では、財布よりもスマホを忘れるほうが「非常に困る/困る」という。そのほか、「データ通信量を気にしながらスマホを利用」は39.2%、「バッテリー残量が少なくなり焦ることがある」は50%だった。

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