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会社の垣根を越え、業界全体で対応を

「土下座しろ!」「謝罪に来い!」ANAとJAL、カスハラ行為にNOを表明

2024年06月28日 21時20分更新

文● 中山智 編集●ASCII

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暴言、脅威を感じさせる言動、業務スペースへの立ち入り、全てNOです

 ANA(全日空)とJAL(日本航空)は、6月28日に共同で記者発表会を開催。両社にて共同で策定した「カスタマーハラスメント(カスハラ)に対する方針」を発表した。

発表会でカスハラに対する方針を発表したANA CX推進室CS推進部 部長 宮下佳子氏(左)とJAL カスタマーエクスペリエンス本部CX推進部 部長 上辻理香氏(右)

 今回発表された方針は、利用客に安心で快適な空の旅を提供することを基本としつつ、従業員が安心して働ける環境を守ることを目的として策定。カスハラについて、「顧客が優越的な立場を利用し、不法行為や不当行為・不当要求をすることで、社員の就業環境が害されること」と定義を両社で共通化することで、会社の垣根を越え、業界全体でカスハラに対して同じ対応をしていくのが狙いだ。

カスハラに対する基本方針では、あくまで顧客に寄り添うことが優先されるが、カスハラに対しては毅然とした対応をとるとしている

 ANAでは昨年からカスハラについての調査を行っており、昨年度は約300件の報告があったとのこと。今回の発表では、カスハラの主な事例も紹介。コールセンターでは「わび状を書かせろよ!わび状」や「会社行くわ、お前も名前言えや、訴えるからな、裁判で。」と大きな声で怒鳴ったり、機内では頼んだドリンクと違うものが届いたことで、コップを乗務員に投げつけたり、空港で遅延が発生した際に「自宅まで謝罪に来い!」、「土下座しろ!」と脅されたりといった具合だ。

策定されたカスハラの定義

 これまではこうしたカスハラとみられる行為があった場合、現場レベルで対応するにしても、どこまでがカスハラなのか判断が難しかった。そこで両社はカスハラの種類について下記の9つに分類。

1.暴言、大声、侮辱、差別発言、誹謗中傷など
2.脅威を感じさせる言動
3.過剰な要求
4.暴行
5.業務に支障を及ぼす行為(長時間拘束、複数回のクレームなど)
6.業務スペースへの立ち入り
7.社員を欺く行為※明らかに事実と異なる言動をするなど
8.会社・社員の信用を棄損させる行為(SNS投稿など)
9.  セクシャルハラスメント(盗撮、わいせつ行為・発言、つきまといなど)

 実際にカスハラとはどういう行為なのかを定義づけることで現場での判断がしやすくなり、上司に対応を委ねたり、警察へ通報するといった対応がスムーズに行えるようになるとしている。

カスハラによって、良いサービスが提供できなくなる負のスパイラルが生じる

 発表会に登壇したANAのCX推進室CS推進部 部長 宮下佳子氏は近年の状況について、調査が昨年からのため数字はないものの、カスハラは「​​スタッフの体感としては増えているという声も聞かれる」と説明。さらに「実際にはきちんと報告がされておらず、そして我慢している。そういうケースも多々あると思う」と話している。

 また、同じく発表会に登壇したJALのカスタマーエクスペリエンス本部CX推進部 部長 上辻理香氏も「やはり増加傾向にあると思う。こういった対応方針が策定されるまでは、対応している自分自身がどこまでがカスタマーハラスメントなのかという線引きの部分がなかなか判断つかなかったため、恐らく潜在的に数としては上がってくるのではないか」とのこと。現状みえている航空業界のカスハラは氷山の一角というわけだ。

カスハラの数は潜在的にはまだまだ多いと語るJALの上辻氏

 さらに宮下氏は、「やはり業界全体で取り組んでいくのがいい。カスタマーハラスメントという行為自体をなくしていかなければいけない。うちの従業員は毅然と対応するけれども、別の航空会社に行ったときに、その従業員が我慢する。そんな業界ではいけない。両社でこういう共同の方針を立てたことはすごく大きい意義があり、この2社で業界をリードして、航空業界全体で取り組んでいくのがいい」と話している。

業界全体で同じ対応をしていくことが重要と、ANAの宮下氏

 近年航空業界は、特に人手不足に悩まされており、職場環境の改善は急務とみられている。また、顧客側も「強く言えば言い分がとおる」といった考えをあらためる必要がありそうだ。

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