Anthropicは6月21日、同社のチャットAI「Claude.ai」に、ユーザーがAI「Claude」とやり取りしながら文書やコードなどのコンテンツを作成できる新機能「Artifacts」を実装した。
無料ユーザーでも利用可能
Artifactsは、AIが生成したコンテンツを会話スレッドとは別の専用ウィンドウに表示し、ユーザーがリアルタイムで編集・管理できる機能。これにより、AIと対話しながらコードや文書、デザインなど様々なものを生成できるという。
利用するには画面右上にあるアカウントのアイコンをクリックし「Feature Preview」を選択する。
または、新機能表示告知の「Try it out」をクリックでもよい。
「Artifacts」のトグルスイッチをオンにすれば利用可能になる。無料版ユーザーでも利用可能だが利用には制限がある。「Pro(月額20米ドル)」「Team(月額30米ドル)」の有償プランに加入すると大幅に制限が緩和される。
Artifactsを利用するには上記の設定だけでOK。プロンプトウィンドウに実験機能を表す「フラスコのアイコン」が表示されていれば、後はユーザーがClaudeにテキスト、コード、ウェブサイトのデザイン生成などを依頼すると自動的にArtifactsが起動する。
プロンプト:「退職のご案内」メールを書きたい
するとClaudeが自動的に判断し画面を2分割。左側に通常のチャットが、右側には生成物として「メール本文」が表示された。
従来のチャットインターフェースでは生成されたコンテンツがチャット内に埋もれてしまう問題があったが、Artifactsならコンテンツを右側で独立して管理できるのだ。
メール本文を見てみると、宛名が「[宛先]様」という表記になっている。
Artifactsは会話の文脈を保持したまま編集できるので、必要に応じてClaudeに修正や拡張を依頼できる。
プロンプト:宛先は汎用的なものにしてください
さっそく修正が反映されている。
残りの部分も埋めてしまおう。
ものの5分で汎用的な退職告知メールを作成することができた。
もちろんメールの作成くらいはChatGPTをはじめとする今どきのチャット型AIツールなら余裕でこなせるタスクだが、チャット画面と作成物を分けるだけで驚くほど使いやすくなっている。大画面モニターを利用していればなおさらだ。
もちろんコーディングもおまかせ
Artifactsが利用できるのはテキストに限らない。下記のプロンプトを投げるだけでArtifactsが自動的に起動しコーディングが始まる。
しばらく待つと、予定調整システムのプロトタイプとなるReactコンポーネント(UIを構築するためのJavaScriptライブラリ)がいきなり表示された。
プロンプト:ブラウザーで表示できる予定調整システムを作りたい
さらに、今後このシステムを充実させていくための提案や具体的な実装方法まで提案してくれる。
また、別の言語で作れるか聞いてみたところ、HTML、CSS、JavaScriptのみで実装してくれるようだ。
プロンプト:reactライブラリを使わない方向でもできる?
もちろん右側のプレビュー画面ではUIおよびコードがリアルタイムで更新されていく。
ブラウザーで表示できる「仕様書」まで作成してくれた。
キモはチャット画面と制作物の分離
ところで左側にチャット、右側にソースコードが表示されるArtifactsのレイアウトを見ると、あることに気付く。
そう、OpenAIの技術を利用してGitHubが提供しているAIコード補完ツール「Github Copilot」とそっくりなのだ。
だが、コードに特化したGithub Copilotと異なり、Artifactsでは文書(プレーンテキスト、Markdown)、コードスニペット、HTML、SVG画像、Mermaidダイアグラム、Reactコンポーネントなど多くのものを右側に表示することができる。
Artifacts機能の本質は「AIとのインタラクション」と「制作物」の分離にあると言えるだろう。このことによりユーザーはAIと対話しながら、プログラムコードに限らず様々な成果物を視覚的に確認し編集することが可能になる。
これは、AIツールが単なる対話型アシスタントから、より統合的で協働的な作業環境へと進化していることを示している。ChatGPTやマイクロソフトの「Copilot」なども同様の方向性を示しており、AIツールの進化は「対話」から「協働」へとシフトしつつある。
今後は画像生成とウェブブラウズに期待
Artifactsおよび同日に発表された最新大規模言語モデル「Claude 3.5 Sonnet」の登場で、Claude.aiはAI型チャットサービスとしてChatGPT Plusに匹敵するスペックを手に入れたように思える。
ただし、現在AnthropicはOpenAIの「DALL-E 3」のような画像生成モデルは扱っていないため、描画を依頼するとSVG(Scalable Vector Graphics)による簡易的なものになってしまう。また、外部へのWebアクセスが依然として禁じられているのも痛い。
とは言えこの2つが可能になってしまうと、いよいよOpenAIが「GPT-5」(あるいはGPT-4.5)を早く出さない限りは「Claude.ai」を選択する人も増えていくだろう。