アップルのAI、「Apple Intelligence」がiPhoneやMacを変える! 「WWDC24」特集 第20回
アップルは「AIスマホ」でどこまで競えるのか? 今後グーグルとの勝敗は(石川 温)
2024年06月14日 07時00分更新
徹底的に「Apple Intelligenceの活用事例」をアピールしたアップル
筆者は今週、アップルのWWDC、先月はグーグルのGoogle I/Oを取材している。どちらも「生成AIに本気」なのが丸出しなのだが、スタンスというか方向性が全く違うのがおもしろい。
グーグルも長年、AIに取り組んできたが、2年ぐらい前に彗星のごとく現れたOpenAIに、生成AIのパイオニアというポジションを奪われたしまった感がある。
昨年のGoogle I/OではなんとかOpenAIに負けていないというアピールをしていたが、社内の方向性もバラバラでとっちらかった基調講演となっていた。
しかし、今年の基調講演はBardからGeminiに一新した生成AIシリーズを訴求。「Flash」や「nano」といったシリーズ展開をアピールしつつ、それぞれの大規模言語モデルがいかに性能が高いかを訴求していたのであった。
Geminiシリーズが中心にあったため、「AndroidでAIをどうしたいのか」という説明はとても少なかった。Pixelに「Gemini nano」を載せるという発表はあったが、具体的にどんなことができるかという説明はほとんどなく、「音声電話で詐欺行為をされそうになったら通知が受けられる」といった程度のものであった。
おそらく、Gemini nanoを使ってどんな便利なことがあるのかというのは、これから小出しにしていくのだろう。
一方、今回のアップルは徹底的に「Apple Intelligenceで何ができるか」という発表に終始していた。LLMに手を出していないため、スペックなどは一切公表していない。
Apple Intelligenceはオンデバイスで処理しつつ、処理能力が足りないときは自社のクラウドにデータを上げるのだが、実際、どのタイミングや処理でオンデバイスとクラウドを使い分けるのかといった条件なども非公表だ。アップルいわく「ユーザー体験が優れているほうを選んでいるが、どちらを使っているかをユーザーが意識することはないようにしている」というほどだ。
実際のところ、どの機能も「どこかで見たことあるな」という気がしないでもない。
メールの文書を校正したり、自分好みの絵文字を作ってくれたり、手書きのスケッチからきれいなイラストに清書してくれる、写真の背景から不要な被写体を消すといったAIはアドビやグーグルもアプリやサービスとして提供している。
ただ、すべてのAI機能をOSというカタチにまとめ、ユーザーがAIを意識しないで楽しく使いこなせるという点に終始しているのはアップルならではだ。
まずはGeminiシリーズというLLMを作り上げ、Pixelに落とし込んでいこうとするグーグル。一方で、LLMはOpenAIや(将来的には)グーグルに任せつつ、もしかすると自社でも用意するが、まずはiPhoneやMac、iPadといった自社デバイスのなかにあるApple Intelligenceで、ユーザー体験の向上に徹底的にこだわったアップル。
2つのプラットフォーマーは、出発点と方向性は違えど、今後は「AIスマホ」で戦っていくのは間違いないわけで、果たして、数年後、iPhoneとAndroid、どちらのスマホがユーザーにとって使いやすいAIスマホになっているのか。いまから競争が楽しみでならない。
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