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アップルのAI、「Apple Intelligence」がiPhoneやMacを変える! 「WWDC24」特集 第19回

アップルWWDCで明かされたのは「パーソナルインテリジェンス」への挑戦だった(西田宗千佳)

2024年06月13日 07時00分更新

文● 西田 宗千佳 編集●飯島 恵里子/ASCII

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特定のデバイス内だけで処理し、プライバシー重視を貫く

独自開発でプライバシーを重視

 「アプリをまたいだ履歴と文脈の理解」と「アプリ内のデータに関する深い理解」を実現するには、アプリ同士で文脈を引き継いで動作する方法を用意しつつ、生成AIによってデバイス内のインデックスを作る必要がある。

 要はそれをやるのがApple Intelligenceということになる訳だが、アプリやメッセージの履歴にしろ、写真・動画のインデックスにしろ、その人のプライバシーがまるごと詰まった情報と言える。

 それをクラウドで、事業者に預けて処理するのは非常にリスクが高い。誰にも知られたくないことは、デバイスの中だけで処理されるのが望ましい。

 だからオンデバイスAIが注目されている訳だ。

 一方でアップルはもうずっとプライバシー重視を標榜し、2019年には以下のような広告をラスベガスに掲載したこともある。

 「iPhoneの中で起きたことはiPhoneの中にしかない」

アップルが2019年1月。ラスベガスに掲示した広告。Googleを意識したプライバシー姿勢を強調するキャンペーンだった

 多分にグーグルを意識したものではあるのだが、この考え方はApple Intelligenceでも引き継がれている。

 AIの使う情報・インデックス化はデバイスの中で実行され、デバイスの外には出ない。iCloudで同期されることもない。ただ、処理負荷がデバイス内で追いつかない場合などには、匿名化した情報を「短期的に、そのデバイスのリクエストのためにプライベートエリア化したクラウド」で処理する。そして、速やかに削除し蓄積しない。

データを蓄積しない・リクエストに応じて処理する・プライバシーを守るといった方針をクラウド処理でも守る

 こうすることで、オンデバイスAIのメリットを活かしながら、それ以上のパワーでの処理もして実用性を高める仕組みになっているのだ。

 アップルが使う生成AIは、数年前から自社開発した「AXLearnフレームワーク」(2023年にオープンソースとして公開)で構築されたもので、文字などはウェブ上のコンテンツを使ってトレーニングされている。その上で、画像生成などでは「ライセンスを得たコンテンツ」を使って追加のトレーニングを行ったとされる。

 アップルは「他社に対してパフォーマンスでも優位」というレポートを出しているが、その検証も今後必要となるだろう。「プライバシー+独自開発」を軸にすえたAIがどれだけ他社との違いを生み出せるのか、英語版でのテストが始まる秋が楽しみだ。

 

筆者紹介――西田 宗千佳
 1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。取材・解説記事を中心に、主要新聞・ウェブ媒体などに寄稿する他、書籍も多数執筆。テレビ番組の監修なども手がける。主な著書に「生成AIの核心:「新しい知」といかに向き合うか」(NHK出版)、「メタバース×ビジネス革命 物質と時間から解放された世界での生存戦略」(SBクリエイティブ)、「ネットフリックスの時代」(講談社)、「ソニー復興の劇薬」(KADOKAWA)などがある。

 

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