アップルのAI、「Apple Intelligence」がiPhoneやMacを変える! 「WWDC24」特集 第19回
アップルWWDCで明かされたのは「パーソナルインテリジェンス」への挑戦だった(西田宗千佳)
2024年06月13日 07時00分更新
パーソナルインテリジェントへ「4度目の挑戦」
その中でアップルは明確に「利用者によりそう」ことを目指した。それを明確に示している言葉もある。
アップルのティム・クックCEOは、基調講演の最後にApple Intelligenceを「パーソナルインテリジェンス」と呼んだ。「Apple Intelligence=AI」というのは名前として洒落ているが、本質的に目指そうとしているのは、個人のための知的な存在ということなのだろう。
「パーソナルインテリジェンス」的な世界は、パーソナルコンピュータの発明以来ずっと夢見られてきたことだ。アップルに関していうなら、1987年に提唱された「ナレッジナビゲーター」がそうだし、現在の音声アシスタントである「Siri」もそうだろう。Macintoshが目ざしていたもの自体も、結局のところ「自分の作業を助けてくれる存在」ということになる。
ただそうした試みは、常に技術の限界という壁に阻まれてきた。PC/Macは道具にはなったが、人間の相棒ではないし、ナレッジナビゲーターは実現しなかった。Siriもずいぶん賢くはなったが、現状では「声で動かすリモコン」の域を脱していない。
今度はパーソナルインテリジェンスとして、生成AIを軸として再度、同じテーマに挑もうとしている。
ただ過去と違うのは、そのための機器を作る訳ではなく、「自分の周りにある、あらゆるアップル製品がそれぞれパーソナルインテリジェンスになる」というところだ。
「ペンで書いて数式処理」は生成AIを使っていない
そこでおもしろい要素がある。iPadの次期OSであるiPadOS 18には、「Smart Script」という機能がある。
これはペンで手書きした文字のくせを把握して「自分のくせ文字」を学習する機能だ。そうすると、タイプした時でもそのくせ文字を出せるし、テキストを修正する時の感覚で文字を消したり追記したりできる。
さらに新しく搭載された「計算機」アプリは、手書きで数式などを書いていくとSmart Scriptで整理し、内容を計算し、グラフ化までしてくれる。一部の数字や数式を書き換えた場合、その内容に合わせて再計算とグラフの書き換えもする。
まるでノートがインテリジェントになったようで、いかにも「Apple Intelligence……」と感じそうだ。
だがこの機能はApple Intelligenceではなく、OSの中にある一般的なAIで動いている。だから、「Mシリーズ搭載のiPad」でなくても動作する。
Apple Intelligenceでなくても便利な機能だが、明確な違いとして「計算はしてくれるがその計算式や数字を書くのは自分だ」という点がある。技術のコアは手書き文字認識であり、その先で計算などを自動化しているだけなのだ。
生成AIに依頼して同じようなことをする場合には、一般的には「質問を認識し、それがどんな問題かを考え、説明を含めた回答を作る」というプロセスになる。要は「便利なノート」と「質問に答えてくれる機械」というベクトルの違いが存在するわけだ。
アップルは道具としての前者を用意しつつ、Apple Intelligenceで後者も作ろうとしている。
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