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安定して存在する1次元トポロジカル絶縁体、東北大などが発見

2024年06月11日 06時41分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東北大学、大阪大学、京都産業大学、高エネルギー加速器研究機構、量子科学技術研究開発機構の共同研究チームは、テルル(Te)からなる原子レベルで細い線(量子細線)が、1次元トポロジカル絶縁体であることを明らかにした。トポロジカル絶縁体とは、位相幾何(トポロジー)の概念を物質の電子状態の解析に取り入れることで、従来の絶縁体とは一線を画す、内側は絶縁体で表面だけ金属的な性質を示す新しい絶縁体物質を指す。

東北大学、大阪大学、京都産業大学、高エネルギー加速器研究機構、量子科学技術研究開発機構の共同研究チームは、テルル(Te)からなる原子レベルで細い線(量子細線)が、1次元トポロジカル絶縁体であることを明らかにした。トポロジカル絶縁体とは、位相幾何(トポロジー)の概念を物質の電子状態の解析に取り入れることで、従来の絶縁体とは一線を画す、内側は絶縁体で表面だけ金属的な性質を示す新しい絶縁体物質を指す。 金属、絶縁体、半導体に次ぐ固体の新しい状態であるトポロジカル絶縁体は、次世代の超低消費電力デバイスなどへの応用が期待されている。中でも、興味深い研究対象とされる量子細線の1次元トポロジカル絶縁体は、理論的には研究されているが、安定して存在する理想的な物質が見つかっておらず、計測結果などをもとにした性質の理解は進んでいない。 研究チームは今回、最近の理論研究により、量子細線1本1本が1次元トポロジカル絶縁体になることが予測されているテルルに着目した。新たに開発したガスクラスターイオンビーム(GCIB)により量子細線の清浄な断面を準備し、高輝度放射光を用いた実験により量子細線の断面の電子状態を精密に測定。理論的な計算値との比較から、この電子状態は量子細線の端に現れる電荷に由来することを明らかにし、安定して存在する固体において1次元トポロジカル絶縁体状態の存在を示した。 量子細線の端に現れる電荷は、量子コンピューターの量子ビットや高効率太陽電池、高感度光検出器、ナノトランジスタなど様々な用途が提案されている。安定して存在する1次元トポロジカル絶縁体の発見によってこれらの実現に向けた研究が加速するものと期待される。 研究論文は2024年6月5日付けで、ネイチャー(Nature)に掲載された

(中條)

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