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サントラの巨匠がサイトウ・キネン・オーケストラを指揮したら? 『John Williams in Tokyo』を麻倉怜士が解説

2024年06月11日 13時00分更新

文● ASCII

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演奏、音質、響き、映像が揃ったパッケージ

 Blu-ray Discでは演奏そのもののデモに入る前に、デラックス版の特典映像についても言及された。ジョン・ウィリアムズ氏とステファン・ドゥネーヴ氏がそれぞれ映画音楽やその指揮について語っている。

 例えば「映画音楽とはどういうものですか?」という問いにジョン・ウィリアムズ氏は「メロディーが映画音楽の本質である」と言い、「監督によってはそのメロディーがキャラクターを示すこともある。イタリアに発するクラシックの伝統がそこにはある」とも語る。

 その一方でステファン・ドゥネーヴ氏は「映画音楽とクラシック音楽の関係」について、対局的な2つの形態があるとする。ひとつは音のパターンなどギミック的で映像があるから成立する音、一方で赤い糸が一本通ったように内部に構造を含む音楽だという。ジョン・ウィリアムズ氏の音楽はまさに後者で、まさに映画のイメージが浮かんでくるものだ。それぞれ違う言葉でありながら、どこか共通した内容になっている点が興味深い。

Blu-ray Discのデモ風景

 映像としてデモされたのは、ステファン・ドゥネーヴ氏指揮の「雅の鐘」。これは1993年に行われたボストン・ポップス・オーケストラ日本公演のために、天皇皇后両陛下(当時 皇太子同妃両殿下)の結婚式を祝福した祝典曲として作曲されたもの。日本の梵鐘(除夜の鐘)にインスピレーションを受け、当初は金管楽器とパーカッションのために作曲し、後にフルオーケストラに編曲されている。

 次にジョン・ウィリアムズ氏自身の指揮で、ヘドウィグのテーマ(映画『ハリー・ポッターと賢者の石』から)、レイダース・マーチ(映画『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』から)、帝国のマーチ(映画『スター・ウォーズ エピソード 5/帝国の逆襲』から)をデモ。

 コンテンツを評して麻倉氏は「演奏が大変すばらしい。同じ曲で比べると、帝国のマーチであってもウィーンフィルの演奏は柔らかさ・ふくよかさが出ている。対するベルリンフィルーは機動的、機能的、規律的な感じがします。サイトウ・キネンが素晴らしいのはアンサンブルが緻密/精密で、かつマッシブな迫力も兼ね備えている点です。これは世界の超一流の演奏家を集めた木管と金管など、演奏家が圧倒的に素晴らしいこともあり、その実力によるものだと思います」とした。

 こういう演奏の素晴らしさを基礎としながら、音質、アンビエント、映像のすべてが高い水準で収められているのが魅力だという。

SACDに加えて、Blu-ray Discも付属するお得なパッケージ

 録音については「深田録音の持つ素晴らしさ」を指摘。「ディティールの繊細さと全体像となるアンビエント=ホールトーンがすごくいいバランスになっていること。それは特にDolby Atmosで聴くと分かります。2chでも分かるのだけれども、アンビエンスは均一です。それがイマーシブになると、機能が分けられるようになります。つまり前の3つのスピーカーからはオーケストラの直接的な音が来て、サラウンドと天井からはアンビエントが来る。これは現実にサントリーホールの席に座って聴く音の縮小版と言えます。やはり、解像感がものすごく高くなりますね。48kHzのDolby Atmosですが、すごく音が良かったなと感じました」という。

 映像では「カメラワークの良さ」を指摘。「日本で制作するオーケストラ映像ではカメラがあまり動かず静的。一方でヨーロッパのプロダクションが作るものは独創的で過剰な場合もあるのですが、このコンテンツはその真ん中ぐらいのバランスです。静的でもなく過剰でもなく、音楽としていくべきポイントはしっかり押さえている」とコメント。そのうえで「レイダース・マーチにおける弦のアンサンブルは楽しいけれど、そこも映像でしっかり押さえている」と、聴いている演奏の見たい場所が的確に切り取られている点を見どころとして示した。

 上記を踏まえ、麻倉氏は「演奏、音質、アンビエント、映像。これだけ揃ったパッケージメディア、クラシックコンサートライブはそうそうはないだろう。配信の時代にこれだけのクオリティのものを出し、(聞かないときも)飾って置けるのは非常に価値がある」とその完成度を大絶賛した。

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