序盤に順位を上げるも
徐々に後退していくMAZDA2
15時少し前にフォーメーションラップが始まり、隊列を成して1周を回ってくると、いよいよ24時間レースのスタートです!
スタートラップのTGR(第1)コーナーからコカ・コーラコーナーまでの間に17号車 DXLアラゴスタNOPRO☆MAZDA2の大谷飛雄選手は、4番手スタートの前車を抜いて開帳に追い上げを見せます。4周目までになんと2番手まで順位を上げると、クラストップの65号車へも迫る勢いを見せていきます。
しかし、その勢いも次第に弱まり1時間経過後には元の順位にまで戻ってしまうことになります。ST-5クラスの場合、タイヤ交換と燃料補給の時間的なバランスでは、燃料補給の方が早く来るというのが定説ですが、17号車の場合は先にタイヤに限界が来てしまったようでした。
時間経過ごとの順位を見てみると3時間後に3位、6時間後に4位、9時間後には2位となりますがトップからは2周遅れとなっています。しかし、この9時間経過後の深夜0時頃から奇跡が起こるのです。
まさに恵みの雨! 弱点が強みに代わった瞬間!
20時頃に花火が上がると、そこから先はミッドナイトセクションとなります。深夜のサーキットは本当に何があるかわかりません。夜行性の小動物の飛び出しもある過酷な状況です。気温もぐっと下がることから雲が発生しやすく、雨も降りやすくなります。
21時頃から風に湿り気を帯びてきた富士スピードウェイは、深夜0時を超えてから霧雨が周囲を覆います。降り始めはスリックタイヤでも気にならない程度ですが、時間が経つにつれて路面は濡れていきます。レインタイヤを履くほどではなく、でもスリックタイヤでは少し滑る。こういう状況でのタイヤ選びの難しさはエンジニアもドライバーも頭を抱えるほど。
この路面状況で17号車は賭けに出ます。フロントはスリックタイヤ、リアにレインタイヤというミックスを選びました。超フロントヘビーなMAZDA2ディーゼルであれば、フロントにスリックタイヤを入れても走ることができる、という判断です。
この賭けは見事に的中します。午前3時には2位に2周差をつけてのトップとなり、この快進撃は夜明けを超えても続きます。朝の6時には3周差、そして4周差をつけた時点で富士24時間レースの特別ルールとなる10分間のメンテナンスタイムのためにピットイン。
この10分間のメンテナンスタイムはクラス関係なく全車に義務付けられており、この10分間を使って交換するべきパーツなどを交換していきます。17号車の場合は、前後のブレーキパッドや油脂類の交換をしていました。この10分間をいつ使うかも、戦略のひとつです。
メンテナンスタイム終了後もトップのままコースに復帰。朝9時の時点で、順位は2位に2周差のトップとなっていました。
朝から昼にかけて周囲が明るくなり気温が上がってくると、そこは最後のアクシデントタイムでもあります。どこか気が緩んでしまい、ピット作業やドライブにミスが出てきやすい時間帯なのです。しかし、今回の富士24時間レースではFCY(フルコースイエロー)は出たものの、クラッシュやアクシデントでセーフティーカーの導入や赤旗中断がなくレースが進んでいき、例年に比べると周回数が伸びていきます。
周回数が伸びれば、ディーゼルの強みである燃費が大いに効いてきます。朝9時頃の段階で17号車は8回、そのほかのチームは概ね12回というピット回数となっており、給油を伴ったピットであればピットインからピットアウトまで150秒(2分半)かかる計算ですから、この時点で5分も得をしているということになります。周回数に換算すると2周ちょっと。ラップタイムが遅くとも、ピットだけでこれを稼げるということが、ディーゼルの真価とも言えます。
快調な17号車のほかに、もう1台エントリーしている37号車 DXLワコーズ☆パワーミネラルNOPROデミオはミッショントラブルでなかなか思うような走りができず、レース後半は長い時間ピット作業に費やされてしまいました。こちらも完走を目指している以上はチェッカーを受けなくてはならず、そこに向けて修復をしていきます。