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「量子超越性」を達成しやすい分野は?東大などが解析

2024年05月24日 06時41分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学、NTTコンピュータ&データサイエンス研究所、および大阪大学の共同研究チームは、量子誤り訂正機能を備えた量子計算機が、古典計算機を凌駕する「量子超越性」を達成するための条件を明らかにした。

東京大学、NTTコンピュータ&データサイエンス研究所、および大阪大学の共同研究チームは、量子誤り訂正機能を備えた量子計算機が、古典計算機を凌駕する「量子超越性」を達成するための条件を明らかにした。 計算量理論による定性的な解析によれば、量子ダイナミクスや暗号解読といった問題において、量子計算機は古典計算機よりも高速に問題を解くことができる。だが、必要とされる計算時間や計算リソースがどの程度かという定量的な観点から、現実的な範囲で達成可能な量子超越性があるのかどうかは不透明な状況にある。 研究チームは今回、物性物理学の量子シミュレーションに必要とされる計算リソースに関する解析・試算を実施。量子計算機が古典計算機(スーパーコンピューター)を凌駕する量子超越性の最小条件を調査した。その結果、物性物理学における代表的な強相関量子多体模型においては、数十万の物理量子ビット(キュービット)で数百の論理量子ビットを構成する量子計算機を用いれば、数時間のスケールで量子超越性が発生することを明らかにした。 同チームによると、この結果は、量子化学や暗号解読といった分野に比べ、物性物理学への応用は計算時間・量子ビット数の観点で1桁以上も少ないリソースで量子超越性を達成できることを示すものであり、今後の量子計算機の研究開発に対し、中長期的な設計目標を示すものと期待されるという。研究論文は、npjクァンタム・インフォメーション(npj Quantum Information)に2024年4月29日付けで掲載された

(中條)

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