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細胞の硬軟をDNAシーケンシングで測る新手法、京大などが開発

2024年05月24日 06時44分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学と理化学研究所らの共同研究チームは、細胞の力学的性質(細胞表面張力)と遺伝子発現情報を関連付けた情報を取得できる新たな測定手法である「エラストミクス(ELASTomics)」を開発。実際に、同手法を用いて細胞表面張力をシーケンシング情報として読み出すことに成功した。

京都大学と理化学研究所らの共同研究チームは、細胞の力学的性質(細胞表面張力)と遺伝子発現情報を関連付けた情報を取得できる新たな測定手法である「エラストミクス(ELASTomics)」を開発。実際に、同手法を用いて細胞表面張力をシーケンシング情報として読み出すことに成功した。 研究チームは今回、短パルスの電場を細胞に照射して細胞膜に10ナノメートル(nm、1nmは10億分の1メートル)前後の穴を一時的に形成(電気穿孔法あるいはエレクトロポレーションと呼ばれる)。その穴から、デオキシリボ核酸(DNA)タグを付加したデキストラン(DTD、多糖類の一種で細胞に対する毒性と分解性が低い)を細胞内に導入した。その後、DTDが導入された細胞を1細胞RNAシーケンシングで分析して1細胞内のDNAタグを数えることで、細胞表面張力の大きさと遺伝子発現情報を同時かつ大規模に測定できるようにした。 同チームはさらに、培養細胞を使った実験から、ELASTomicsは、細胞種ごとの細胞表面張力の違いだけでなく、個々の細胞の細胞表面張力の違いも検出できることを確認。老化研究でも広く用いられている培養細胞「TIG-1」を長期間培養して細胞老化を誘導し、若いTIG-1細胞と細胞表面張力を比較したところ、老化により細胞表面張力が高くなっていることがわかった。 細胞の硬さ・柔らかさ、張り、変形しやすさ、といった細胞の力学的性質は、様々な生命現象や病態につながる重要な因子であり、細胞生物学的な機能の理解に重要であることが近年、明らかになってきた。今回、開発した手法は、老化や細胞分化、がん細胞の浸潤といった細胞の力学的性質が関わるさまざまな生命現象・疾患に関与する遺伝子制御メカニズムの理解に貢献すると期待される。 研究論文は、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2024年5月17日付けでオンライン掲載された

(中條)

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