金額の大小というよりも、具体的な数字が出たことに意味
マイクロソフトが発表した内容は、以下の4点になる。
- 2年間で日本のAIおよびクラウド基盤の増強に4400億円を投資
- 3年間で300 万人を対象にしたリスキリング機会の提供
- 東京に研究拠点を新設
- サイバーセキュリティ分野における政府との連携強化
このなかで最も注目を集めているのが、(1)の日本におけるAI/クラウド基盤の増強だ。
マイクロソフトでは、「投資コミットメントを実質的に倍増させるものであり、単独で最大規模となる」と説明。「この投資により、弊社基盤の処理能力を大幅に向上し、 AI ワークロードの高速化に不可欠な最先端のGPUを含む、より高度な計算資源を、日本に提供する」と説明している。
新たにデータセンターを設置するというものではなく、東日本および西日本リージョンのデータセンターへの投資であり、AIに関する能力強化のために、主にGPUの増設を行うことが中心になるとみられる。
だが、マイクロソフトによる日本のデータセンターへの投資は、2014年2月に、東日本および西日本のペアリージョン構成によって、クラウドサービスを稼働させて以降、10年間に渡り、継続的に行われてきた経緯がある。2023年3月にも、西日本リージョンの拡大に向けた国内データセンターへの追加投資を発表している。
また、2023年10月には、オートスラリアにおいて、50億豪ドル(約5000億円)のデータセンターへの投資を発表。2024年2月には、ドイツにおいて32億ユーロ(約5200億円)の投資を発表。グローバルにデータセンター投資を強化している流れのなかで、今回の日本での投資が発表されたものと捉えることもできる。
ちなみに、発表では「投資コミットメントの倍増」「最大規模の投資」という表現を用いているが、実は、マイクロソフトが日本のデータセンターへの投資金額そのものを発表したのは初めてのことだ。
マイクロソフトの発表を前に、AWSが2024年1月に2023年から2027年までの5年間で、149億6000万ドル(約2兆2600億円)の国内データセンター投資を行うことを発表。年平均投資額はマイクロソフトの約2倍となるため、数字が弱く感じられるが、AWSではデータセンターの建設費用などが含まれており、マイクロソフトの投資領域とは異なる点を考慮する必要があるだろう。
マイクロソフトでは、東日本リージョン、西日本リージョンともに、リージョン内で物理的に異なる複数のデータセンターを稼働させており、今回の4400億円の投資はそれぞれのリージョンへの投資になる。
マイクロソフトにとっては、継続的な投資をさらに加速するという姿勢はこれまでと変わらず、むしろ、4400億円という数字が初めて公表されたことが、業界関係者の間では注目されている。
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