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MUC6欠損が胃がん発症のカギ、治療薬候補も開発=東大など

2024年04月13日 07時14分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学、産業技術総合研究所、豪アデレード大学、コロンビア大学などの研究グループは、ムチンタンパク質の一種「MUC6」の喪失が胃がんを引き起こすことを世界で初めて突き止めた。研究の結果、MUC6遺伝子の変異は胃がんの約10%で確認されていたが、その発がん経路が判明した。

東京大学、産業技術総合研究所、豪アデレード大学、コロンビア大学などの研究グループは、ムチンタンパク質の一種「MUC6」の喪失が胃がんを引き起こすことを世界で初めて突き止めた。研究の結果、MUC6遺伝子の変異は胃がんの約10%で確認されていたが、その発がん経路が判明した。 研究グループはMUC6を欠損させたマウスを作製し、全個体で胃がんを確認した。さらに解析を重ねた結果、発がん経路として、ゴルジ体ストレスによるGOLPH3遺伝子の発現上昇とMAPK経路の活性化が関与することが分かった。MEK阻害薬の投与で腫瘍が縮小したことからも裏付けられた。 そして、ゴルジ体ストレスに伴い、腫瘍部分では異常糖鎖であるマンノースが高発現していた。この現象は、MUC6遺伝子変異のヒト胃がん患者の細胞や検体でも確認できた。 研究グループはこの知見を活かし、マンノースに特異的に結合するレクチン薬物複合体を新たに開発した。この薬物複合体は、マウスやヒト由来の胃がん細胞に対して優れた腫瘍縮小効果を示した。 研究成果は4月5日、ガストロエンテロロジー(Gastroenterology)誌にオンライン掲載された。MUC6遺伝子変異による胃がんは治療抵抗性の予後不良型とされてきたが、今回の成果によって新たな治療法開発への期待が高まっている。

(笹田)

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