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脱炭素における水素・アンモニア発電の貢献は限定的=京大ら分析

2024年03月15日 06時41分更新

文● MIT Technology Review Japan

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京都大学の研究チームは、世界全域を対象としたエネルギー・シミュレーションモデルを用い、脱炭素化に向けた水素・アンモニア発電の役割について分析。その結果、脱炭素社会における水素・アンモニア発電の貢献は限定的であることを解明した。

京都大学の研究チームは、世界全域を対象としたエネルギー・シミュレーションモデルを用い、脱炭素化に向けた水素・アンモニア発電の役割について分析。その結果、脱炭素社会における水素・アンモニア発電の貢献は限定的であることを解明した。 研究チームは今回、国立環境研究所などと共同開発した、温室効果ガス排出量の予測、対策や影響を評価するための「アジア太平洋統合評価モデル(AIM:Asia-Pacific Integrated Model)」を使用。水素・アンモニアの費用が大きく低下する場合や、炭素回収貯留など他の火力発電からの排出抑制策を制限した場合など、多様な条件のもとで2050年までのシミュレーションを実行した。 同モデルは将来の人口、経済成長、技術の進展(効率・コストなど)を入力条件として、CO2排出量、エネルギー需給、エネルギー技術の導入量および費用を推計するモデルである。今回の研究では、混焼を含む水素・アンモニア発電を新たな技術オプションとして追加した。 その結果、水素・アンモニア発電が世界の発電電力量に占める割合は、最大でも1%程度に留まることがわかった。水素・アンモニアの費用が大きく低下すれば、火力発電設備の約半数が水素混焼付きとなる可能性があるが、年間を通じた稼働時間は太陽光・風力発電の出力が低下するごく限られた時間に留まるという。その一方で、航空・輸送燃料としての水素・アンモニア利用は、比較的進みやすいことが示された。 再生可能エネルギー等から製造された水素・アンモニアを利用して発電することは、石炭・ガスとの混焼も含め、火力発電からの二酸化炭素排出削減に寄与する可能性がある。だが、世界全体の脱炭素化にどの程度貢献し得るかは明らかにされていなかった。 研究論文は、ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に2024年3月4日付けでオンライン掲載された

(中條)

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