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富士通、量子シミュレーターの計算を200倍高速化する技術

2024年02月21日 06時21分更新

文● MIT Technology Review Japan

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富士通は、量子シミュレーター上で、量子・古典ハイブリッドアルゴリズムを、従来のシミュレーション所要時間と比較して200倍高速に実行できる技術を開発した。今後、同社のハイブリット量子コンピューティングプラットフォーム「Fujitsu Hybrid Quantum Computing Platform」に搭載し、金融や創薬をはじめとする様々な分野向けに提供する。

富士通は、量子シミュレーター上で、量子・古典ハイブリッドアルゴリズムを、従来のシミュレーション所要時間と比較して200倍高速に実行できる技術を開発した。今後、同社のハイブリット量子コンピューティングプラットフォーム「Fujitsu Hybrid Quantum Computing Platform」に搭載し、金融や創薬をはじめとする様々な分野向けに提供する。 富士通は今回、量子シミュレータの計算ノードを複数のグループに分割し、ネットワークを通して量子回路計算のジョブを投入することで、各グループが異なる量子回路を実行できる分散処理技術を開発。パラメータの異なる複数の量子回路を同時に分散実行して最適化することを実現し、計算時間を70分の1に短縮することを可能にした。 さらに、同社の40量子ビットの量子シミュレーターを用いて、32量子ビットの分子シミュレーションを実行。規模が大きくなるほど項の総数に対する係数の小さい項の割合が多くなり、係数の小さい項が計算の最終結果に与える影響が微小であることを発見した。この特性を利用し、式の項数の削減と計算精度の劣化防止を両立させることを実現し、量子回路計算時間を約80%削減することに成功した。 同社は、これらの技術を組み合わせて、32量子ビットの問題に対して1024の計算ノードを8つのグループに分割した分散処理を実行。その結果、従来は200日と見積もられていた32量子ビットの量子シミュレーションを1日で実行できることを確認した。従来の量子・古典ハイブリッドアルゴリズムを利用した量子回路計算では、問題の規模に応じて量子回路計算の回数が増大し、材料や創薬分野のように多くの量子ビットを必要とする大規模な問題では実行に数百日も要しており、課題となっていた。

(中條)

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