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遠方銀河クエーサーから強烈に噴き出す分子ガスを発見=北大など

2024年02月17日 07時30分更新

文● MIT Technology Review Japan

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北海道大学、筑波大学、早稲田大学、国立天文台の共同研究チームは、「アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)」の観測により、129億光年かなたの銀河で明るく輝くクエーサー「J2054-0005」で、星の原料となる分子ガスの強烈な噴き出し(アウトフロー)があることを発見した。遠方銀河の分子ガスの噴き出しにより星形成が抑制されていることを示す強い証拠になるという。

北海道大学、筑波大学、早稲田大学、国立天文台の共同研究チームは、「アルマ望遠鏡(アタカマ大型ミリ波サブミリ波干渉計)」の観測により、129億光年かなたの銀河で明るく輝くクエーサー「J2054-0005」で、星の原料となる分子ガスの強烈な噴き出し(アウトフロー)があることを発見した。遠方銀河の分子ガスの噴き出しにより星形成が抑制されていることを示す強い証拠になるという。 研究チームは今回、クエーサー「J2054-0005」から噴き出している分子ガスのうち、観測者から見て手前側にある分子ガスが固有の波長の電波を吸収することによって生じる「吸収線」をいわば「影絵」のように観測。ヒドロキシルラジカル(OH)分子の119マイクロメートル(0.119ミリメートル)の吸収線を利用することで、同クエーサーからの分子ガスの噴き出しを初めて検出し、速度を正確に求めることに成功した。 同チームはさらに、噴き出しの速度は典型的に毎秒700キロメール(km)、最大で毎秒1500kmにも達することを明らかにした。この計算に基づくと、流出している分子ガスの量は、年間あたり太陽質量の1500倍ほどに上り、J2054-0005が年間あたりに新しく作る星の質量の2倍に相当する。そのため、今後、およそ1000万年という短い期間で星の材料となる分子ガスが枯渇し、新たな星が作られにくくなることが予想されるという。 現代の宇宙では、星形成が不活発な巨大銀河の存在が知られており、その原因の一つとして、銀河からのガスの噴き出しが考えられている。しかし、これまで宇宙初期のクエーサーにおいて分子ガスの噴き出しが観測された例は2天体しかなく、その噴き出しは星形成の進行を左右し銀河の成長に影響を及ぼすほど強いものではなかった。 研究論文は、アストロフィジカル・ジャーナル(Astrophysical Journal)に2024年2月1日付けで公開された

(中條)

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