このページの本文へ

ピロリ菌除菌後、新型胃酸分泌抑制薬の長期服用に胃がんリスク

2024年02月17日 07時36分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

東京大学と朝日生命成人病研究所の研究グループは、ピロリ菌除菌後にカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB:Potassium-Competitive Acid Blocker)を長期内服すると胃がん発症リスクが高まると報告した。

東京大学と朝日生命成人病研究所の研究グループは、ピロリ菌除菌後にカリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB:Potassium-Competitive Acid Blocker)を長期内服すると胃がん発症リスクが高まると報告した。 P-CABは世界に先駆けて2015年に日本で発売された胃酸分泌抑制薬で、それまでの主流だったプロトンポンプ阻害剤(PPI:Proton Pump Inhibitor)とは異なる機序でより強く胃酸分泌を抑制する効果を持つ。逆流性食道炎やその他上部消化管症状に対して日常的によく処方されている。 今回の研究では、1100万人規模の大規模レセプトデータ(診療報酬明細書)から、ピロリ菌除菌後患者5万4055名分のデータを抽出し、P-CAB内服群に対して、PPI内服群、そしてさらに古い世代の胃酸分泌抑制薬であるヒスタミンH2受容体拮抗薬(H2RA:Histamine H2-Receptor Antagonist)を内服していた群をプロペンシティスコアを利用してマッチングし、ピロリ菌除菌後の胃がん発生リスクを比較した。この際、対照群を胃がんリスクとは関係しないとされているH2RA内服群とした。 5年経過後の胃がん累積発症率は、P-CAB服用群で2.36%、H2RA服用群で1.22%となり、生存時間を分析したところ、P-CAB服用群はH2RA服用群に比較して、除菌後胃がん発症リスクが有意に上昇しており(ハザード比:1.92)、用量、期間依存性も確認できた。一方で、PCAB内服群とPPI内服群を比較すると、除菌後胃がん発症リスクに有意差はなく(ハザード比:0.88)、どちらも同等の胃がん発症リスクを有していると考えられるという。 研究成果は2月12日、クリニカル・ガストロエンテロジー・アンド・ヘパトロジー(Clinical Gastroenterology and Hepatology)誌にオンライン掲載された。近年、P-CABは欧米諸国でも処方が始まっており、研究グループはP-CABの長期処方リスクに関して国際的かつ大規模に検討することが必要だとしている。

(笹田)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ