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高エネ密度でコバルトフリーのニッケル系電池材料=横浜国大など

2024年02月12日 12時11分更新

文● MIT Technology Review Japan

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横浜国立大学、住友金属鉱山らの共同研究チームは、リチウムイオン電池に用いる新しいニッケル系層状材料(Li0.975Ni1.025O2)を開発し、同材料がコバルトフリー構成でありながら、高エネルギー密度・長寿命の電池正極材料となることを発見した。材料の欠陥構造の制御により高性能化を実現しており、従来手法を利用して合成できるため、実用的な電池材料としての利用が期待できる。

横浜国立大学、住友金属鉱山らの共同研究チームは、リチウムイオン電池に用いる新しいニッケル系層状材料(Li0.975Ni1.025O2)を開発し、同材料がコバルトフリー構成でありながら、高エネルギー密度・長寿命の電池正極材料となることを発見した。材料の欠陥構造の制御により高性能化を実現しており、従来手法を利用して合成できるため、実用的な電池材料としての利用が期待できる。 研究チームは、従来のニッケル系層状材料で10~20%程度含まれているコバルトの役割について詳細に検討。コバルト非含有材料では充電状態にニッケルイオンが移動することが劣化の要因であることと、構造欠陥を有する材料では充電状態におけるニッケルイオンの移動を抑制可能であることを明らかにしている。今回は、これらの知見に基づき、実用的な合成法を用いて、構造欠陥を意図的に導入することを目的として、23%の極少量のニッケルイオンを過剰な組成とした材料(Li0.975Ni1.025O2)を合成した。 同チームは、この材料について詳細に結晶構造を解析し、実際に構造欠陥を有しており、充電中のニッケルイオンの移動を抑制できることを確認。さらに、コバルト含有試料以上の高いエネルギー密度とサイクル特性を実現しているだけでなく、優れた急速充電特性と出力特性も有していることを発見した。 電気自動車用途のリチウムイオン電池には現在、コバルトを含むニッケル系層状酸化物が正極材料として広く用いられている。だが、コバルトは資源が偏在しており、主に政情不安定な国で産出されるため、コバルトフリーと高性能を両立する正極材料開発の開発が急務となっている。 研究論文は、エナジー・ストレージ・マテリアルズ(Energy Storage Materials)誌のオンライン版に2024年1月に公開された

(中條)

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