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東大など、DNA鎖の「よじれ」を細胞が認識・処理する仕組みを解明

2024年02月01日 06時54分更新

文● MIT Technology Review Japan

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東京大学、スウェーデン・カロリンスカ研究所、ドイツ・マックスプランク研究所の共同研究チームは、細胞核内のDNA鎖に生じるよじれを、細胞が認識・処理する仕組みを明らかにした。DNA鎖のよじれをうまく処理できないと細胞にとって致死的な結末をもたらすことが想像されるため、今回の成果は、がんや細胞老化がどのようなメカニズムで起こるかの理解に貢献することが期待される

東京大学、スウェーデン・カロリンスカ研究所、ドイツ・マックスプランク研究所の共同研究チームは、細胞核内のDNA鎖に生じるよじれを、細胞が認識・処理する仕組みを明らかにした。DNA鎖のよじれをうまく処理できないと細胞にとって致死的な結末をもたらすことが想像されるため、今回の成果は、がんや細胞老化がどのようなメカニズムで起こるかの理解に貢献することが期待される 研究チームは今回、分子モーターである「Smc5/6」タンパク質複合体が結合しているゲノム上の部位が、「正の超らせん」が発生している箇所であることを、実験と数理モデリングで明らかにした。正の超らせんとは、DNAの二重らせんの巻きつきの程度が通常よりも高くなってDNA鎖の構造によじれが蓄積している状態のことである。 さらに、精製したSmc5/6複合体が正の超らせんDNAを認識することを、一分子観察で直接可視化することに成功。Smc5/6複合体は正の超らせん状態のDNA部位に選択的に結合すること、結合部位に大きなループ構造を導入すること、その結果DNA鎖上に存在した正の超らせんを一つのループ内にまとめ上げることができることを見出した。 同チームは以前に、精製したSmc5/6複合体が細胞核内のDNAの折りたたみを担う分子モーターであり、DNA鎖に結合するとそこにループ状の折りたたみ構造を導入することを発見している。Smc5/6複合体が機能しない細胞では核内DNAが不安定になり、無用な組み換え反応を起こして欠失や転座などの構造的変異を引き起こしやすくなることが知られている。しかし、Smc5/6複合体の持つループ導入活性がどのようにゲノム維持のために使われているかは不明だった。 研究論文は、モレキュラー・セル(Molecular Cell)誌に2024年1月30日付けで掲載された

(中條)

 

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