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素材を含むイノベーションでHAMRによる3TB/プラッタの高記録密度を実現、3月から量産開始

“30TB超え”大容量HDD時代へ突入、Seagateが新技術基盤「Mozaic 3+」を解説

2024年01月26日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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 「この技術はストレージ業界の転換点であり、『ハードディスクドライブ(HDD)はなくならない』という、世界に向けた挑戦的な宣言でもあるのです」(Seagate PRビデオより)

 Seagate Technology(シーゲイト)は2024年1月25日、HDDの記録密度を高め、3.5インチHDD 1台あたり30TBを超える大容量化を実現する、同社の新しいHDDプラットフォーム「Mozaic 3+」の技術説明会を開催した。このMozaic 3+を搭載した30TB超のデータセンター向け汎用HDD「Exos」を今年3月ごろから量産開始する。加えて、記録密度をさらに高める次世代/次々世代プラットフォームもすでに検証中であり、今後数年のうちに登場予定だという。

Seagateが新しいHDDプラットフォーム「Mozaic 3+」を発表。プラッタあたり3TB超の記録密度を実現する(右下に写るのがMozaic 3+を搭載したデモ機)

データ量の爆発に対応するために必要だった「記録密度の向上」

 同説明会ではまず、日本シーゲイト 社長の新妻 太氏が、記録密度の大幅な向上を可能にするMozaicプラットフォームの開発に至った背景を説明した。

日本シーゲイト 代表取締役社長の新妻 太氏

 近年、世界で生成されるデータの容量は爆発的に増え、データスフィア(データ環境)が急拡大を続けている。しかし、こうしたデータの急増に対してストレージ側の技術進化は追いついておらず、生成されたデータの多くは活用されることなく破棄されている。しかしその一方で、“AI時代”の到来によって、データのビジネス価値はかつてないほど高まっている。

 したがって、これからのAI時代に企業が競争優位性を保つためには、「ストレージの総所有コスト(TCO)や環境負荷を抑えながら、ストレージ容量を大幅に増加させる」という、難度の高い課題に取り組まなければならない。そこで期待されるのがHDDのさらなる大容量化であり、そのためには同じ面積のプラッタ(HDDが内蔵する磁気ディスク)により多くの磁気ビットを記録できるようにする「記録密度の向上」が必要となる。

 ただし、そこには物理的なハードルがある。事実、現在主に利用されているPMR(垂直磁気記録)方式は進化の限界に達しつつあると言われており、記録密度が向上するペースもスローダウンしている。

 そこでSeagateでは、長年をかけて新たな磁気記録方式であるHAMR(ハマー、熱アシスト磁気記録)の研究開発と実用化に取り組んできた(HAMRの詳細は下記の関連記事を参照)。新妻氏は、PMRでは記録密度を2倍にするために9年を要したが、HAMRを採用したことでそれを4年で達成できる見込みだと説明する。

HAMRが実現するプラッタあたりの容量の推移。2023年の2.4TBから、今年は3TB超となり、4年後の2027年には5TB超を実現する見込み

 現在のデータセンターで採用されている大容量HDD(PMR方式)は、1台あたり平均16TBの容量を持つという。これを30TBのHDDに置き換えることにより、同じデータセンターフットプリントでおよそ2倍のデータを保存できるだけでなく、消費電力の削減、製造時のカーボン排出量削減も実現するという。

現在標準的な16TB HDDを30TB HDDに置き換えることで、データセンターのスペース効率だけでなく、消費電力やカーボン排出削減にも効果があると説明した

複数のイノベーションにより実現したMozaic 3+

 ただし新妻氏は「Mozaic 3+プラットフォームは、HAMR技術だけでなく、複数の革新的な技術が統合されたプラットフォームだ」とも強調する。発表によると、汎用的な量産製品としてHAMR方式を実現するためには、次のような複数のイノベーションが必要だったという。

●超格子プラチナ合金メディア(プラッタ):プラッタの素材に鉄とプラチナの合金を採用。粒子の磁気保持力を大幅に向上(従来比で10倍以上)させることで、正確なデータ書き込みやビット安定性を実現。
●プラズモニックライター(書き込み装置):HAMR方式ではプラッタ上に極小の熱スポットを生成し、そこに磁気で書き込みを行う。熱源となるナノフォトニックレーザー装置を独自開発し、書き込みヘッドと統合している。
●第7世代スピントロニック・リーダー(読み出し装置):極小範囲の磁気記録を読み取るために、世界最小/最高感度の磁界読み取りセンサーを搭載。
●12nm統合コントローラー:ライター/リーダーの全体を制御するための統合コントローラーも自社開発。従来比で最大3倍の性能を実現しているという。

Mozaic 3+プラットフォームの概要図

 説明会にオンライン出席したSeagateの研究開発部門、Seagate Research 副社長のエド・ゲージ(Ed Gage)氏は、たとえば鉄とプラチナの合金メディアについては「20年前から研究を重ねてきたものだ」と明かす。ただし、Mozaic 3+を実現するためには「メディア、ライター、リーダー、コントローラーの、すべての新しい技術が必要だった」と強調した。

 「(Mozaic 3+の開発における)一番のチャレンジは、必要な技術要素がすべてそろわないと、本当に実現できるのかどうかも判断できなかったことだ。たとえば超格子プラチナ合金メディアが先にできていたとしても、プラズモニックライターが開発されていなければ書き込みはできなかった。すべての開発が同時進行しなければならない、そこが一番の課題だった。どれかひとつ、特定の技術がブレイクスルーになったわけではない」(ゲージ氏)

 なおゲージ氏は、次世代/次々世代版のMozaic 4+/5+はすでにラボでの検証が進んでいると紹介した。Mozaic 3+の技術をそのまま高密度化(微細化)させて、Mozaic 4+ではプラッタあたり4TB超、Mozaic 5+では5TB超を実現できる見込みだという。加えて、研究部門ではプラッタあたり8~10TBの実現にも取り組んでいると述べた。「もちろん、そこで(記録密度向上が)終わりだと考えているわけではない」(ゲージ氏)。

 またゲージ氏によると、Seagateでは今後、すべてのHDD製品ファミリーにおいてMozaicプラットフォームを採用していくという。したがって、新たに投入される製品からMozaic/HAMRを採用したものとなり、容量の拡大も期待できる。

Seagateのロードマップではすでに次世代のMozaic 4+、次々世代のMozaic 5+も公表されている。その登場は数年以内だという

データを記録中の、Mozaic 3+を搭載したExosデモ機(透明カバーを装着)。HAMR(熱アシスト磁気記録)方式を採用しており、書き込み時にはヘッド部分がわずかに光っているのが見えた

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