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2次元に閉じ込めた「重い電子」を初めて実現=阪大など

2023年12月14日 06時40分更新

文● MIT Technology Review Japan

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大阪大学、量子科学技術研究開発機構などの共同研究チームは、電子間の多体効果である「近藤効果」により伝導電子の有効質量が増大する「重い電子」を、原子1層の厚みしか持たない単原子層物質において実現した。原子1枚の厚みに閉じ込めた重い電子状態を実現したのは世界初だという。

大阪大学、量子科学技術研究開発機構などの共同研究チームは、電子間の多体効果である「近藤効果」により伝導電子の有効質量が増大する「重い電子」を、原子1層の厚みしか持たない単原子層物質において実現した。原子1枚の厚みに閉じ込めた重い電子状態を実現したのは世界初だという。 近藤効果は、金属中に磁性不純物(鉄やニッケルなど)がごく僅かに存在する場合、ある温度以下で電気抵抗が増加する現象である(近藤淳博士が1964年にその物理的機構を解明した)。研究チームは今回、単原子層イッテルビウム・銅(YbCu2)薄膜の作製に成功し、その電子構造をシンクロトロン光を用いた「角度分解光電子分光」によって調べた。その結果、YbCu2原子層内を伝播する2次元的な伝導電子が、低温において重い電子を形成することを明らかにした。 近年のナノテクノロジーの発展に伴い、グラフェンに代表される低次元(2次元、1次元)材料研究が活発になっている。希土類化合物における重い電子はこれまで、3次元固体物質では盛んに研究されてきたが、2次元系の極限である原子1枚の厚みしか持たない単原子層物質で実現するかどうかは明確でなかった。 今回の成果により、新奇超伝導などの物性物理学における量子臨界現象への次元性の役割の解明が進むとともに、近年爆発的に研究が進む原子層物質に、新たな機能性を有する物質が加わることになり、次世代材料開発や新しいエレクトロニクス素子、量子コンピューター設計開発の指針となることが期待される。 研究論文は、英国科学誌ネイチャー・コミュニケーションズ(Nature Communications)に、12月1日付けで掲載された

(中條)

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