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羽田空港があるのに“素通り”される大田区、インバウンド観光客に立ち寄ってほしい

「都内最多の銭湯」を観光資源に! 大田区でデジタルSENTOツアー体験

2023年12月03日 08時00分更新

文● 大塚昭彦/TECH.ASCII.jp

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足湯につかりながらプロジェクションマッピングを鑑賞する

 そうこうしているうちに、ツアーは改正湯に到着しました。

 改正湯は昭和4年創業の、まさに地元に根付いた銭湯です。天然温泉の黒湯(モール泉)のほか、オリジナルの黒湯炭酸泉、白湯(シルク風呂)などもあり、湯船の向こうにある水槽でたくさんの金魚や鯉が泳いでいるのが名物です。

ツアーは改正湯に到着。「縁日」というのは「インバウンド観光客と“日”本の“縁”を結ぶ」という、今回のプロジェクションマッピングのテーマ

 今回の銭湯体験ツアーでは、貸切の浴室内で足湯につかりながらプロジェクションマッピングを鑑賞します。

 プロジェクションマッピングのコンテンツは、蒲田にある東京工科大学 デザイン学部の学生さんたちが制作したもの。広い浴室の壁全体を使い、日本の四季や風景、昔話、祭事など、多様な日本文化のモチーフを盛り込んだコンテンツが展開されます。ふだんから銭湯に通い慣れている筆者から見ても、銭湯のイメージが変わるような面白い体験でしたし、足湯のおかげで身体も汗ばむほど温まりました。

自慢の天然温泉、黒湯の足湯につかりながらプロジェクションマッピングの鑑賞です

タイル画の富士山も生かしながら、浴室の壁全体を使ったプロジェクションマッピングを展開

 大田浴場連合会 事務局長を務める改正湯オーナーの小林さんに話をうかがったところ、近年では周辺にゲストハウスなどの宿泊施設が増え、インバウンド観光客が大田区の銭湯を訪れることも少しずつ増えているものの、全体から考えれば大田区に「立ち寄る」ケースはまだまだ少ないとのこと。今回の体験ツアーもひとつのきっかけとして、さらにインバウンド観光客を呼び込む取り組みを続けたいと話されていました。

改正浴場(改正湯) 代表取締役の小林千加史さん。大田浴場連合会でも、インバウンド観光客向けに銭湯の紹介パンフレットを作成しています

小林さんは、プロジェクションマッピングを制作した学生さんたちの熱意にとても感心していました。地元での産学連携はいいですね

 ツアーはこの後、バスで羽田空港エアポートガーデンにある寿司店「築地 すし好」に移動して、もうひとつの日本文化体験(お寿司の食事)をして解散となります。全体でおよそ4時間のツアーで、ツアーサイトでは5000円で販売されています。

 ツアーのプランニングを担当された日本旅行の久下さんによると、近年、特に欧米からの観光客では「日本の文化を知りたい、体験したい」という欲求が強まっており、そうしたツーリストにアピールしたいとのこと。大田区内で完結する短時間のツアーということもあり、羽田空港に到着した観光客だけでなく、トランジット(乗り換え便)を待つ観光客にも適しているのでは、と考えているそうです。

* * *

 個人的な話になりますが、筆者は海外便など長いフライトの後には、銭湯やサウナに立ち寄ってから帰宅することにしています。実はこの取材の前月にも、羽田空港から大田区内の銭湯に直行して旅の疲れを癒やしていました。そういう視点で見ても、「銭湯を新たな観光資源にする」という発想は、決して突飛なものではないと思います。

 その一方で、「銭湯体験」と言うからには、やはり足湯だけじゃなくてふつうに入浴したい人もいるんじゃないでしょうか。率直にそうコメントしたところ、別途、最初のVR体験と大田区内の銭湯入湯券(各自で好きな銭湯に行く)をセットにした「ライトプラン」も用意されるとのこと。なるほど。公衆浴場に慣れている観光客の方ならば、そちらもいいでしょう。

 今回のツアーはまだ始まったばかりの取り組みで、実験的な部分も大きいと思いますが、改良を重ねながら継続されるといいなと思いました。「ONSEN」と並んで「SENTO」が日本の観光名所に――なんていうのも楽しげな未来ではないでしょうか。

 それでは、一仕事終えたので……筆者は銭湯に行ってきます!

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