テーマは「新たな飛躍に向けてアジャストステージに入ったゲーム産業」
ゲーム産業は復調の気配が――浜村弘一氏の“ゲーム産業の現状と展望 2023年秋季”をレポート
KADOAKWAデジタルエンタテインメント担当シニアアドバイザーである浜村弘一氏は11月1日、ゲーム産業の今と未来を、角川アスキー総合研究所がまとめたデータをもとに分析するセミナー“ゲーム産業の現状と展望 2023年秋季”を実施。ここでは、その内容をダイジェストでお届けしよう。
今回のセミナーのテーマは、「新たな飛躍に向けてアジャストステージに入ったゲーム産業」。2022年、脱コロナやウクライナ進攻による不景気の気配で、世界のゲーム市場は史上初のダウントレンドを経験した。しかし、その後のハイエンド機の普及、そして待望のタイトルが続々と登場したことで、2023年は早くも復調の模様を見せているという。
その様子は、今年開催された「東京ゲームショウ2023」からもうかがえ、来場者は24万2328人と、コロナ前の2019年並みの水準になった。そのなかで浜村氏が注目したのは、「インディーゲームコーナー」と「ゲーミングライフタイルコーナー」。インディーゲームコーナーは大手以外のパブリッシャーも加わり、展示スペースは前年の2倍以上に。
「ゲーミングライフスタイルコーナー」は、“ゲームライフを支える”をテーマとした新しいコンセプトのコーナー。家具メーカーや賃貸マンションを紹介するメーカーも参入していたりと、これまでにない動きを見せていた。
また、ソニー・インタラクティブエンタテインメントやマイクロソフトのアクセシビリティコントローラーについて触れ、各社がプレイヤーの拡大に向けて動いているとも浜村氏は語った。
世界のゲームトレンドとしては、最も市場規模の大きいアメリカで、ゲームコンテンツは前年比からほぼ横ばいだったものの、家庭用ゲームソフトが前年比8%増と復調。ハードは23%増となっており、PS5の売り上げがそれに貢献していたという。ドイツも似たような状況で、「PS5の伸びは世界共通」と言っていいのではないかと浜村氏。
ほかとは事情が異なる中国では、2022年は10%を超えるマイナスとなったものの、現在は回復傾向にあるとのこと。
日本の市場は世界のトレンドとは違い、ハードの売り上げはPS5の伸張もあり上がっているものの、ソフトは下がってしまっている。日本はまだPS5などのハイエンド機の市場規模が小さく、Switchが大半を占めていることを考えると、Swichの状況が反映されているのだろうと浜村氏は推察。とはいえ、トータルでは、市場規模は前年より大きく伸ばしている結果に。
ハード個別で見ると、任天堂はSwitchが累計販売台数が3000万台を突破。日本で一番売れたハードはDSなのだが、それに追いつくほどだという。任天堂は自社IPを楽しませるためにハードを作っている。浜村氏はコントローラーの変化はあるかもしれないが、これからもその路線は変わらないだろうと語った。
次はApple。Appleは、自社のハードウェアでAAA作品を作動させるための取り組みを始めている。今後は、iPhoneで遊べるAAAタイトルは増えていくだろうと浜村氏。
PS5は、普及台数が上がってきた。また、PlayStation Portalリモートプレーヤーを発売。現在、SwitchやSteam Deck、Xbox Game Pass、小型PCなど、どこでもゲームが遊べる選択肢が増えている。新しいデバイスでそれを解決しようとするのは、ハード屋であるソニーらしいと浜村氏は語った。
XboxはActivision Blizzardを買収したことをようやく発表。これらを行なってきたのは、すべてXbox Game Passのためと浜村氏。Xboxはハードの普及より、サービスに力を入れて集客しようとしているのだろうと感想を述べた。
ほかにもNetflixやGoogleの施策も解説。Netflixはハイエンドゲームをクラウドゲームで遊べるように8月にベータテストを実施。映像だけでなく、ゲームでも集客を目指すという。
GoogleはYouTubeの画面上でゲームが遊べる「Playable」という新機能を提供。こちらもクラウドゲームに挑戦し、集客を目指していくだろうと浜村氏は語った。
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