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不正の温床とは? テクノロジーで不正は防げるのか?

経費精算の不正を防げ クレディセゾン、UPSIDER、コンカーが取り組みを披露

2023年09月25日 10時30分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真提供●UPSIDER

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 2023年9月20日、クレディセゾン、コンカー、UPSIDERは経費の不適切利用についての勉強会を開催した。勉強会では経費精算不正の概要や現状、対策などの講義を経て、各社がテクノロジーを活用した自社の取り組みを披露した。

経費精算不正の温床とシステムならではの対策とは?

 勉強会の冒頭、「経費精算不正の予防と早期発見」というタイトルで講義を行なったのは、コンサルティングや社外監査役の立場でコンプライアンスや内部監査、ガバナンスに関わってきた公認会計士・公認不正検査士のビズサプリ 代表取締役 辻さちえ氏。

ビズサプリ 代表取締役 辻さちえ氏

 経費精算不正は使い道の偽り、金額の水増し、架空経費、多重精算など多岐に及ぶ。不正が起こる要因として知られる「不正トライアングル」に当てはめると、ちょっとした金銭欲から発する「動機」、これくらいならいいだろうという「姿勢正当化」、甘い申請や承認から得られた「機会」の3つが揃ったとき、経費精算不正は起こるという。

 実態を調べてみると、不正を見聞きしたことがあるかという質問については7割程度が見聞きしており、経費不正の1/3は出張費が締め、ついで接待交通費、物品購入費、近接交通費となるという。1つ1つは細かい不正だが、エスカレートしたり、会社の雰囲気が悪くなったり、まじめにがんばれないという影響が出る。コンプライアンス意識が醸成されず、規律がない組織になるという。

 しかし、経費精算不正を防ぐのは手間がかかる。一般的には担当者が申請書を作成して、それを事業部門の管理者が承認し、行動そのものを確認する。そして経理部門の申請書が流れると、ルール確認と支払いの処理が行なわれるのだが、経費精算は1件1件の取引金額は少ないのに、取引件数が多いという特徴があり、チェックが難しい。領収書などの証憑を一件ずつ見るのは大変だし、そもそもペーパーレスになってしまうと複製されてもなかなか気づけない。チェック自体が形骸化して、不正の機会が増している実態がある。

 多くの経理担当は経費精算に大きな負担を感じているが、実は負担となっているのは支払いの妥当性のチェックよりも、日付や内容などの整合性チェックだという。「形式的なチェックが負担となっており、インボイス精度の導入により形式的なチェックがますます増える可能性もある」と辻氏は指摘する。

経費精算では形式的なチェックが負担となっている

 こうした形式的なチェックはシステム化・データ化により効率化でき、異常を検知したり、データ分析を行なうことで、経理部門が実質的に牽制することが可能になるという。取引自体はシンプルなので、同じ金額での申請や多額の申請、特定の取引先の精算などはデータ分析であぶり出すことができるという。

 経理担当にとっては経営者の経費不正をチェックするのはストレスもかかるが、AIやシステムであれば、データ分析で淡々と確認することも可能になるという。不正発見という社員の行動のあら探しではなく、コストダウンや費用の効率的な使い方につながる可能性もあるので、システムやデータの活用は積極的に行なうべきと辻氏は提言した。

クレディセゾンは掛け払いサービスにおける不正対策を説明

 こうしたサービス不正の対策について説明したのはクレディセゾン セゾンAMEX事業部 法人営業部 栗原 宏輔氏になる。クレディセゾンは総会員数3500万人、取扱高8.3兆円を超えるクレジットカード会社。ビジネスカードの発行も15万を超える。栗原氏はまず市場動向から説明した。

クレディセゾンの法人営業部 栗原 宏輔氏

 2023年10月からのインボイス制度の導入を機に、企業における請求業務の見直し機運が高まっていると指摘。インボイス制度では、課税事業者がインボイスを発行するために「適格請求書発行事業者」に登録する必要があったり、請求書のフォーマットをインボイスに合わせて変更したり、税額の計算方法が一部変わる。そのため、特に一人親方の建設業界や零細企業、個人事業者らは対応に苦慮しているという。

 一方で、企業間での電子商取引は堅調に増加。掛け払い決済サービスのファクタリングも、クラウドファクタリングの登場や手形取引の減少で、2017年を境に復調し、7%程度の成長が見られるという。

 クレディセゾンも企業向けの掛け払い決済サービス「セゾンインボイス」を提供している。サービスの利用企業は顧客・取引のデータを入力すれば、最短翌日には支払いが完了し、取引先への請求業務はクレディセゾンが請け負う。もちろん、請求書はインボイス対応。導入企業の手間もなく、未回収リスクもゼロ。売掛金の回収期間を短縮し、早期に資金化できる。

 しかし、サービスの普及にともない不正リスクも出てきた。一番多いのは、存在しない架空の取引を登録し、不正に代金を受け取る「架空請求」。また、同じ債権を異なるファクタリング事業者に譲渡することで二重に代金を受け取る「二重譲渡」なども増加しているという。

 こうした不正に対して、クレディセゾンは取引先はもちろん、利用企業の審査も徹底しているという。決算書類・登記簿の提出、登記情報の確認のほか、不芳情報サイト、代表者情報、インターネットの口コミ、過去の取引情報までを調べるという。今回のインボイス制度の導入や法整備、2026年の手形の廃止を見据え、ファクタリングはますます使いやすくなるという。AIを使った審査やオンラインでの契約も進み、法的規制が進むことで悪徳業者が排除されると見込みを示した。

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