このページの本文へ

太陽光を全波長域で利用できる材料、北大が開発

2023年08月14日 05時27分更新

文● MIT Technology Review Japan

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

北海道大学の研究チームは、光波長0.8~2.5マイクロメートル(μm、1マイクロメートルは10-6メートル)の赤外領域を含む全太陽光波長域での応答を促進する材料を開発。同材料がかつてない優れた光熱変換特性を示し、太陽光水蒸発や光電気化学の高効率特性が現れることを明らかにした。

北海道大学の研究チームは、光波長0.8~2.5マイクロメートル(μm、1マイクロメートルは10-6メートル)の赤外領域を含む全太陽光波長域での応答を促進する材料を開発。同材料がかつてない優れた光熱変換特性を示し、太陽光水蒸発や光電気化学の高効率特性が現れることを明らかにした。 光応答性ナノ粒子を均一に分散させた材料は、太陽電池、光触媒など太陽光を念頭に置いた持続可能なエネルギー利用やフォトニクス応用に役立っている。しかし、従来の方法で作成した材料は、紫外線域と可視光域は利用できたが、太陽光の約40%以上を占める赤外域の光は利用できなかった。 研究チームは今回、光と水を用いて水中でナノ結晶を合成する技術である「水中結晶光合成(SPsC)」を用いて、銅と酸素の空孔を戦略的に添加ドーピングすることでタングステン酸(WO3・H2O)を用いた光学的臨界相を誘導することに成功。ナノ結晶の合成過程における欠陥を調節し、広い範囲の太陽光スペクトルを利用できるようにした。 同チームはさらに、作製した材料を用いたデバイスにより、優れた光熱変換特性、光アシスト水蒸発特性、光電気化学特性を実証。透過型電子顕微鏡を用いて誘電率、光吸収(係数)を評価し、密度汎関数理論に基づく第一原理計算と吸光度の実測と比較することで酸素空孔の欠陥形成機構を明らかにし、当該現象の光機能発現効果を解明した。 作製した半導体デバイスは、特に近・中赤外光域での優れた光電流、光吸収などの光特性を示すため、今後の全太陽光利用のための光機能半導体・エネルギーデバイス材料開発として、太陽エネルギーの持続可能な利用技術としての進展への寄与が期待される。研究論文はアドバンスト・マテリアルズ(Advanced Materials)に2023年7月29日付けでオンライン掲載された

(中條)

カテゴリートップへ

アスキー・ビジネスセレクション

ASCII.jp ビジネスヘッドライン

ピックアップ