NB-IoTで衛星通信を実現するSkylo CEOがサブライズ登壇
真のIoTはこれだったのか? もう1つの基調講演で安川CTOが問いかける
既設のカメラを「IoTの目」に 転送サービス「SORACOM Relay」
IoTの可能性を追求してきたソラコムだが、世界にはもともとつながっていないモノやコトは数多く存在する。むしろつながっているモノの方が少ない。こうしたモノやコトの状態を映像で把握するのに用いられるのがカメラだ。ソラコムでは、安価なATOM Cam 2などを使って簡単に利用できるソラカメ(SORACOM Cloud Camera Services)の提供を開始しており、すでに多くのユーザーが利用している。「店舗の監視や混雑度のチェックなどで使ったり、建物の入退室管理、工場の設備点検など、いろいろな場面で使ってもらっている」と安川氏は語る。
一方で、世の中にはすでに多くのカメラが設置されているわけで、これらのカメラをそのままIoTにも流用できれば、導入のハードルは一気に下がる。しかし、これらのカメラは、インターネットに接続されず、ローカルのみで利用されることも多い。「むしろインターネットにつないでしまうと悪意のあるユーザーに映像が漏えいしてしまうかもしれない」(安川氏)とのことで、多くのカメラがデフォルトのパスワードで運用され、インターネットに野放図に解放されているという。
こうして「既存のカメラを安心、安全に、クラウドにつなげないか?」という課題に向き合ったメディア転送サービスが「SOARCOM Relay」になる。既存のIPカメラとSORACOM Relayを組み合わせると、監視カメラの動画をクラウド側に転送できる。具体的にはサービスを開始すると、映像を取得するためのワーカーが立ち上がり、カメラへの動画リクエストやクラウドへの転送までを行なう。SOARAOCM Harvest Files、Amazon Kinesis Video Stream、Amazon S3など、いったんクラウド側にデータを持ってきてしまえば、再生も分析も思うがままだ。
安川氏は、「基調講演でやってはいけないと言われるライブデモ(笑)」として、展示会場に設置されたカメラの映像をSORACOM Relayで転送した様子を披露。クラウドにアップロードされた動画では、顔を検知し、プライバシー対策のマスク処理まで行なっている。「これをカメラでやろうとすると、ここに大きな投資が必要になってしまいますけど、SORACOM Relayでクラウドに送ってしまえば、複雑な演算も自由自在に行なえる」と安川氏は指摘。「既存のカメラが『IoTの目になる日は近い」と語る。
NB-IoTで地上網も、衛星網も利用可能 Skylo CEOも登壇
続いて話題はコネクティビティに移る。現在、SORACOMのIoTプラットフォームへの接続には、5G、LTE、LTE-M、Sigfoxなどを用いたSORACOM Airによる通信に加え、インターネット越しにセキュアなリンクを構築できるSORACOM Arcが利用できる。
そして最近サポートされるようになったのが衛星通信だ。ソラコムは「STARLINK BUSINESSキット」の再販を発表しており、通信環境のないところでも、SORACOM Arcの仮想SIMとStarlinkの衛星を介して、SORACOMサービスにアクセスできるようになった。そして、衛星メッセージングサービスのパートナーとして、昨年発表されたAstorcastに加え、今年はSkylo(スカイロ)との提携も発表した。
SkyloではNB-IoT標準的なモジュールで、地上網も、衛星網でも利用できるため、衛星通信用のアンテナやモジュールは不要だ。「通信環境がまったくないテキサスの砂漠にあるガスタンクの残量をモニタリングしたいとか、国立公園の電気設備をチェックできる」と安川氏。普段はNB-IoTを用い、通信環境がない場合は衛星回線に切り替えればよいので、ハードウェアやモジュールの設計が必要ない点が大きいという。
サプライズで登壇した米Skylo Technologiesのパース(Parthsarathi“Parth”Trivedi)CEOは、「衛星通信はつねに重要な技術で、農業や海運、運搬などでのニーズは非常に高いが、いつも問題になるのは衛星通信のモジュールのコストだった」と指摘する。これに対して、Skyloはクアルコム、ソニー、クイックテルなど提携ベンダーの通信モジュール、3GPP Rel.17に対応した同社のファームウェアを組み合わせることで、衛星通信も利用できるとアピールした。
パースCEOは「ソラコムと私たちは共通のビジョンを持っている。私の理解が正しければ、ソラコムのソラは宇宙の意味。宇宙からサービスを提供するSkyloと似ている」と語り、ソラコムとのパートナーシップを歓迎した。
この記事の編集者は以下の記事もオススメしています
-
デジタル
【SORACOM Discovery 2023】9つの新発表と、メディアによるセッション記事 -
デジタル
IoT SIM「plan-KM1」がデータ通信量の通知に対応しました -
デジタル
IoTが産み出すデータを「生成系AI」で活かすテクニックセッションのアップデート【SORACOM Discovery 2023】 -
デジタル
ソフトウェア系スタートアップのCTOが語る「IoTデバイス開発への挑戦」SORACOM Discovery 2023 セッションレポート -
デジタル
在宅勤務でも眼を大事に!通知付き光量測定システムを作ってみた【SORACOM Discovery 2023 展示レポート】 -
デジタル
「あらゆる場所、あらゆるモノ」は現実だ レイ・オジー氏と安川CTOがたどり着いたIoTの形